
住宅のバリアフリー化と水回り工事の関係
浴室・トイレ・洗面所などの水回りは、立ち座りやまたぎ動作、濡れた床の上での移動が多い場所です。手すりの取付けや段差の解消、洋式便器への取替えといった水回りの改修は、介護保険の住宅改修や国の住宅の補助事業の対象になり得ます。
水回りのバリアフリーリフォームとしては、段差解消・手すり設置・床の滑り止め加工・浴槽の低床化・洋式トイレへの交換・シャワーキャリー対応の広いスペース確保などが代表的な工事です。工事の内容によっては給排水管の移設・延長を伴うため、配管工事の知識が求められます。
浴室は冬場の急激な温度差によって体に負担がかかりやすい場所でもあり、脱衣所や浴室の寒さ対策と合わせて、床の滑りにくさや手すりの位置を検討することが望ましいとされています。手すりの取り付け位置や高さは利用する方の身体状況によって最適な位置が異なるため、工事前に実際の動作(立ち座り、またぎ動作など)を確認しながら決めていくことが大切です。
介護保険の住宅改修給付

要介護認定(要支援1以上)を受けている場合、介護保険の住宅改修給付が利用できます。
給付の概要
- 支給限度額: 20万円(うち9割・8割または7割が給付、自己負担1〜3割)
- 上限給付額: 18万円(1割負担の場合)・16万円(2割負担)・14万円(3割負担)
- 対象工事: 手すりの取り付け、段差の解消、床の滑り防止、扉の取替え、洋式便器等への取替え、付帯する工事
和式から洋式トイレへの変更工事では、排水管の移設・延長が必要になることがあります。こうした工事が「付帯する工事」として給付の対象になるか、どこまでが対象かは、保険者である市区町村が判断します。給付の対象外の工事を一緒に行う場合は、対象の部分を抜き出したり按分したりして、給付の対象になる費用を算出します(厚生労働省 老企第42号「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」)。
20万円の支給限度額は一人ごとに管理され、20万円に達するまでは複数回に分けて使えます。最初の住宅改修の着工時から「介護の必要の程度」が3段階以上上がった場合(1回限り)や、転居した場合は、改めて20万円まで支給を受けられます(同通知)。詳細な取り扱いは市区町村の窓口で確認してください。
申請の流れ
- 担当ケアマネジャーへ相談: 改修の必要性・方向性を確認
- 事前申請: 工事着工前に市区町村の介護保険担当窓口へ「住宅改修が必要な理由書」等を提出
- 工事の実施: 承認後に着工
- 領収書・工事写真の提出: 完了後に書類を揃えて申請
- 給付金の受領: 審査後に自己負担分を差し引いた額が給付
事前申請を行わずに工事を始めてしまうと給付の対象外となる場合があるため、工事に着手する前に必ず申請の順序を確認することが重要です。工事写真は着工前と完了後の両方を撮影しておくよう求められることが一般的です。
みらいエコ住宅2026事業(住宅省エネ2026キャンペーン)
国の住宅省エネ2026キャンペーンの「みらいエコ住宅2026事業」は、リフォームの補助対象工事の一つに「バリアフリー改修」を含めています(みらいエコ住宅2026事業 リフォーム)。ただし、バリアフリー改修だけでは補助を受けられません。開口部や躯体の断熱改修など、事業が定める組み合わせの工事(要件化工事)を1つの居室で行うことが前提で、そのうえで行うバリアフリー改修や節水型トイレの設置などが補助額の計算に入ります。
- 手すりの設置: 7,200円/戸
- 段差解消: 8,400円/戸
- 廊下幅等の拡張: 33,600円/戸
額は工事の箇所数によらず、工事の種類ごとの定額です(バリアフリー改修の頁)。申請は、事業に登録した「みらいエコ住宅事業者」が工事の発注者に代わって行い、受け取った補助金を発注者に還元します。工事に着手できる期間と予算の上限があるため、事業の頁で確かめてください。
補助制度を利用する際に押さえておきたい共通点
介護保険の住宅改修給付とみらいエコ住宅2026事業は、対象者・目的・申請窓口が異なります。ただし共通して言えるのは、どちらも工事の前に済ませておく手続き(介護保険は市区町村への事前申請、みらいエコ住宅2026事業は登録事業者との工事請負契約)があるという点です。工事を先に進めてしまうと制度の対象外になることがあるため、リフォームを検討し始めた早い段階で、利用したい制度の窓口(地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村の住宅担当課など)に相談しておくことが安全です。
| 制度 | 主な相談窓口 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 介護保険の住宅改修給付 | 担当ケアマネジャー・市区町村介護保険窓口 | 要介護認定を受けている方 |
| みらいエコ住宅2026事業 | 登録事業者(みらいエコ住宅事業者) | 住宅の所有者等(断熱改修との組み合わせが前提) |
水回りバリアフリー工事のポイント
浴室の配管移設を伴う拡張工事
浴槽の低床化・入り口の拡幅・車椅子対応スペースの確保では、給湯配管・換気設備の移設が必要になることがあります。工事前に配管の位置と経路を確認し、解体範囲を最小限に抑える計画が重要です。
トイレの洋式化と排水管工事
和式便器から洋式便器(特にウォシュレット付き)への交換では、排水管の位置変更や給水管の追加を伴うことがあります。既存の排水管が陶器製の場合は劣化状況も合わせてチェックし、交換の要否を判断します。
洗面台の高さ変更と給排水配管調整
車椅子利用者向けのカウンター式洗面台への変更では、排水トラップの形状変更(S字→P字への変更等)や給水管の延長工事が発生することがあります。
工事期間中の生活への配慮
水回りの改修工事では、工事の内容によって一時的に水道や給湯が使用できない時間帯が発生することがあります。工事業者と事前に打ち合わせを行い、断水が発生する時間帯や、その間の代替手段(近隣の入浴施設の利用、簡易トイレの準備など)を確認しておくと安心です。特に高齢の家族が在宅のまま工事を行う場合は、工事の音や振動、資材の搬入経路についても事前に相談しておくとよいでしょう。
まとめ
住宅の水回りバリアフリー改修では、介護保険の住宅改修給付や国の補助事業を使える場合があります。工事前に必ず事前申請が必要な制度が多いため、リフォームを検討した段階でケアマネジャーや自治体窓口、配管工事業者へ早めに相談することが大切です。配管工事は目に見えない部分だからこそ、経路や既存設備の状態を丁寧に確認できる業者に依頼し、工事後の生活動線までを見据えた計画を立てることが、安心して長く住み続けられる住まいづくりにつながります。
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