
住宅のバリアフリー化と水回り工事の関係
日本の住宅では、浴室・トイレ・洗面台などの水回りが高齢者の転倒・転落事故の主要な発生場所となっています。厚生労働省の統計でも、家庭内事故死の原因の多くが浴室や浴槽に関連しています。そのため、住宅バリアフリー改修の中でも水回りの工事は特に重要視されており、複数の補助制度が用意されています。
水回りのバリアフリーリフォームとしては、段差解消・手すり設置・床の滑り止め加工・浴槽の低床化・洋式トイレへの交換・シャワーキャリー対応の広いスペース確保などが代表的な工事です。これらには必ず配管の移設・延長工事が伴うため、配管工事の専門知識が求められます。
浴室は冬場の急激な温度差によって体に負担がかかりやすい場所でもあり、脱衣所や浴室の寒さ対策と合わせて、床の滑りにくさや手すりの位置を検討することが望ましいとされています。手すりの取り付け位置や高さは利用する方の身体状況によって最適な位置が異なるため、工事前に実際の動作(立ち座り、またぎ動作など)を確認しながら決めていくことが大切です。
介護保険の住宅改修給付

要介護認定(要支援1以上)を受けている場合、介護保険の住宅改修給付が利用できます。
給付の概要
- 支給限度額: 20万円(うち9割または8割が給付、自己負担1〜2割)
- 上限給付額: 18万円(1割負担の場合)または16万円(2割負担)
- 対象工事: 手すりの取り付け、段差の解消、床の滑り防止、扉の取替え、洋式便器等への取替え、付帯する工事
「付帯する工事」の範囲に配管の移設も含まれます。例えば、和式から洋式トイレへの変更工事では、排水管の移設・延長が必要になることがあり、この費用も給付対象に含められます。
この支給限度額は原則として1人1回までですが、要介護度が大きく上がった場合や転居した場合には、再度利用できることがあります。詳細な取り扱いは市区町村ごとに窓口で確認する必要があります。
申請の流れ
- 担当ケアマネジャーへ相談: 改修の必要性・方向性を確認
- 事前申請: 工事着工前に市区町村の介護保険担当窓口へ「住宅改修が必要な理由書」等を提出
- 工事の実施: 承認後に着工
- 領収書・工事写真の提出: 完了後に書類を揃えて申請
- 給付金の受領: 審査後に自己負担分を差し引いた額が給付
事前申請を行わずに工事を始めてしまうと給付の対象外となる場合があるため、工事に着手する前に必ず申請の順序を確認することが重要です。工事写真は着工前と完了後の両方を撮影しておくよう求められることが一般的です。
国土交通省「住宅確保要配慮者向けリフォーム助成」
高齢者・障害者等を含む住宅確保要配慮者向けのリフォームに対し、国と地方公共団体が連携して助成する制度です。自治体によって助成内容が異なりますが、バリアフリー改修(浴室拡張・手すり設置等)が対象となる場合があります。
宮城県内では仙台市、石巻市等でこの制度に関連した補助事業を実施していることがあります。最新情報は各市区町村の住宅担当課にお問い合わせください。
子育てエコホーム支援事業(国土交通省)
子育て世帯・若者夫婦世帯向けの補助制度ですが、バリアフリー改修もポイント対象工事として含まれています。
- 浴室等のバリアフリー改修: 手すり・段差解消・滑り防止床材交換等で一定のポイントが付与
- ポイントは商品交換や工事代金の補填に使用可能
補助制度を利用する際に押さえておきたい共通点
介護保険の住宅改修給付、国土交通省の各種助成、子育てエコホーム支援事業は、それぞれ対象者・目的・申請窓口が異なります。ただし共通して言えるのは、いずれも工事着工前の手続きが必要になる場合が多いという点です。工事を先に進めてしまうと制度の対象外になることがあるため、リフォームを検討し始めた早い段階で、利用したい制度の窓口(地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村の住宅担当課など)に相談しておくことが安全です。
| 制度 | 主な相談窓口 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 介護保険の住宅改修給付 | 担当ケアマネジャー・市区町村介護保険窓口 | 要介護認定を受けている方 |
| 住宅確保要配慮者向けリフォーム助成 | 市区町村の住宅担当課 | 高齢者・障害者等を含む世帯 |
| 子育てエコホーム支援事業 | 登録事業者・国土交通省関連窓口 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
水回りバリアフリー工事のポイント
浴室の配管移設を伴う拡張工事
浴槽の低床化・入り口の拡幅・車椅子対応スペースの確保には、給湯配管・換気設備の移設が必要です。工事前に配管の位置と経路を確認し、解体範囲を最小限に抑える計画が重要です。
トイレの洋式化と排水管工事
和式便器から洋式便器(特にウォシュレット付き)への交換では、排水管の位置変更や給水管の追加が伴います。既存の排水管が陶器製の場合は劣化状況も合わせてチェックし、交換の要否を判断します。
洗面台の高さ変更と給排水配管調整
車椅子利用者向けのカウンター式洗面台への変更では、排水トラップの形状変更(S字→P字への変更等)や給水管の延長工事が発生することがあります。
工事期間中の生活への配慮
水回りの改修工事では、工事の内容によって一時的に水道や給湯が使用できない時間帯が発生することがあります。工事業者と事前に打ち合わせを行い、断水が発生する時間帯や、その間の代替手段(近隣の入浴施設の利用、簡易トイレの準備など)を確認しておくと安心です。特に高齢の家族が在宅のまま工事を行う場合は、工事の音や振動、資材の搬入経路についても事前に相談しておくとよいでしょう。
まとめ
住宅の水回りバリアフリー改修は、介護保険給付・自治体補助金・国の支援事業を組み合わせることで自己負担額を大幅に抑えられます。工事前に必ず事前申請が必要な制度が多いため、リフォームを検討した段階でケアマネジャーや自治体窓口、配管工事業者へ早めに相談することが大切です。配管工事は目に見えない部分だからこそ、経路や既存設備の状態を丁寧に確認できる業者に依頼し、工事後の生活動線までを見据えた計画を立てることが、安心して長く住み続けられる住まいづくりにつながります。
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