
受水槽・貯水槽とは

受水槽(貯水槽)は、水道本管から供給された水を一時的に貯めておくタンクで、主に3階建て以上のマンションやビル、商業施設、工場などに設置されています。水道本管の水圧だけでは上階に十分な水量を供給できないため、受水槽に水を貯めてからポンプで各階に給水する仕組みです。
受水槽の容量が10m³を超えるものは「簡易専用水道」として水道法の規制対象となり、設置者には法定の管理義務が課されます。10m³以下のものは「小規模貯水槽水道」として各自治体の条例で管理基準が定められている場合があります。
受水槽の材質はFRP(繊維強化プラスチック)製が主流で、軽量で耐食性に優れています。ステンレス製は高耐久で衛生面に優れますが、コストが高い傾向があります。設置場所は地上・屋上・地下ピットなどさまざまで、建物の構造や給水方式によって決まります。近年はポンプの性能向上により、受水槽を経由せず水道本管から直接ポンプで加圧する「直結増圧給水方式」への切り替えも増えています。
受水槽の衛生管理が重要な理由

受水槽は水道水を一旦貯留するため、管理が不十分だと水質が悪化するリスクがあります。受水槽内に汚れや藻が繁殖すると、飲料水として不適切な水が蛇口から出ることになり、居住者や利用者の健康被害につながりかねません。
過去には受水槽の管理不備が原因で、レジオネラ菌や大腸菌が検出された事例も報告されています。マンホール蓋の施錠が不十分で、鳥や虫が侵入して水質が汚染されたケースもあります。また、受水槽の容量が実際の使用水量に対して大きすぎると水の滞留時間が長くなり、残留塩素が低下して細菌が繁殖しやすくなります。
一般的に、受水槽の容量は1日の使用水量の1/2程度が適切とされています。容量が大きすぎる場合は、仕切りを設けて有効容量を減らす対応をとることもあります。受水槽の水は「貯めた水」であることを常に意識し、新鮮な状態を維持するための管理を怠らないことが重要です。定期的な清掃と点検の記録保持が、衛生管理の基本となります。
法定点検・清掃の内容と頻度
簡易専用水道(受水槽の容量が10m³超)の場合、水道法により年1回以上の清掃と、登録を受けた検査機関による年1回の法定検査が義務づけられています。
清掃では受水槽内の水を抜き、壁面や底部に付着した汚れ・水垢・藻を高圧洗浄や手作業で除去します。清掃後は槽内を消毒し、新しい水を張って水質検査を行います。清掃中は断水が伴うため、居住者や施設利用者への事前通知と断水時間の調整が欠かせません。
法定検査では、外観検査(受水槽の状態・周辺環境・マンホールの施錠状況など)、水質検査(残留塩素・色度・濁度・臭気・味など)、書類検査(管理体制・清掃記録など)が実施されます。10m³以下の小規模貯水槽も自治体の条例に基づく管理が求められるケースが多いため、設置者は自治体の窓口に確認しておきましょう。清掃・検査の記録は5年間の保管が義務づけられており、行政の立ち入り検査時にも確認されます。
受水槽の劣化サインと更新の目安
FRP製の受水槽の耐用年数は一般的に15〜25年程度です。経年劣化が進むと、以下のようなサインが現れます。
- 外壁のチョーキング:表面に白い粉が浮き出る現象で、FRP樹脂の劣化を示します
- 層間剥離・ひび割れ:FRP積層部分が剥がれたり、亀裂が入ったりした状態
- パッキン・ボルトの腐食:マンホール周辺のパッキンが硬化・劣化し、雨水や虫が侵入するリスクが高まります
- 内部ライニングの剥がれ:内側のコーティングが剥離し、水質に影響します
- 水漏れ:接合部や亀裂からの滲み出しは緊急対応が必要です
受水槽に付属するボールタップ(給水を自動制御する浮き球式のバルブ)や電極棒(水位を検知するセンサー)も消耗品であり、定期的な交換が必要です。ボールタップの不具合はオーバーフロー(水の溢れ)や渇水(水が貯まらない)の原因になります。電極棒の腐食は水位の誤検知を引き起こし、ポンプの空運転や過負荷につながります。
受水槽本体の更新時には、同時に給水ポンプや配管の状態も確認し、必要に応じて一括更新することで将来のトラブルを防げます。工事をまとめて行うことで費用の節約にもつながります。
直結増圧給水方式への切り替えも選択肢
受水槽の老朽化が進んだ際、更新工事と合わせて「直結増圧給水方式」への切り替えを検討するオーナーや管理組合も増えています。直結増圧方式は水道本管から直接ポンプで加圧して各階に給水するため、受水槽が不要になります。
主なメリットは以下のとおりです。
- 受水槽の清掃・法定検査コストが不要になる
- 水の滞留がなく、常に新鮮な水道水が供給される
- 受水槽の設置スペースを他の用途に活用できる
一方で、水道局への申請が必要であり、建物の規模や既存配管の状態によっては改修工事の費用が高くなる場合もあります。切り替えが適切かどうかは、建物の規模・階数・築年数・配管状態を総合的に診断したうえで判断することが重要です。
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