
冷媒配管工事とは

業務用エアコン(パッケージエアコン・マルチエアコンなど)は、室内機と室外機を冷媒配管でつなぎ、冷媒ガス(フロン系冷媒)を循環させることで冷暖房を行います。冷媒配管工事は、この室内機・室外機間の冷媒ガスの通り道となる配管(液管・ガス管)を設置する工事です。
冷媒配管は単なる「ガスの通り道」ではありません。配管の長さや高低差、曲げ半径、保温施工の良否がエアコンの冷暖房性能・エネルギー効率に直結するため、専門知識と施工経験を持った業者が担当することが不可欠です。特に近年普及が進んでいるマルチエアコン(1台の室外機に複数の室内機を接続するシステム)では、分岐配管の設計や冷媒チャージ量の計算が複雑であり、メーカー認定を受けた技術者による施工が求められます。
冷媒配管の材料と規格

冷媒配管には耐圧性・耐食性に優れた銅管(リン脱酸銅管)が使用されます。管の外径・肉厚は使用する冷媒の種類と設計圧力に応じて選定します。代表的な冷媒の種類と配管選定の関係は次のとおりです。
R22(旧来の冷媒)は設計圧力が比較的低く従来規格の銅管で対応できましたが、オゾン層破壊物質として段階的に廃止されています。一方でR410AおよびR32は高圧冷媒であり、冷媒用として規格化された肉厚の厚い銅管(冷媒用銅管)を使用しなければなりません。適用する規格や肉厚はメーカー仕様書・関連規格で確認してください。R32はR410Aよりも冷媒圧力が若干高くなるケースもあり、メーカー仕様書での確認が必須です。
施工後の品質確認として、配管内の気密試験(窒素ガスによる加圧試験)と真空引き(真空ポンプによる内部の水分・空気の除去)を必ず実施します。真空引きが不十分だと、配管内に残留した水分が冷媒回路内で氷結・膨張し、膨張弁の詰まりや機器の故障を引き起こす原因となります。真空到達度の確認(マイクロン単位での測定)と、バルブを閉じた後の真空保持確認まで行うことが信頼性の高い施工の基本です。
施工上の重要ポイント
冷媒配管の接続方法には、フレア接続(現場での拡管加工)とろう付け接続(銅管を加熱してろう材で接合)の2種類があり、それぞれ施工品質を確保するための注意点が異なります。
フレア接続では、専用のフレアツールを使って銅管端部を正確なテーパー角度に拡管します。バリや歪みがあると冷媒漏れの原因となるため、切断面のリーマー処理(バリ取り)→フレア加工→トルク管理されたフレアナットの締め付けという手順を省略せず実施します。
ろう付け接続では、銅管と継手を加熱し、毛細管現象を利用してろう材を均一に流し込みます。加熱不足による「ろう材のなじみ不良」や過加熱による「銅管の軟化・酸化」を防ぐため、適切な火力管理と作業経験が求められます。高圧冷媒配管のろう付け作業では、配管内部に窒素ガスをパージしながら行う「窒素パージろう付け」が推奨されており、内部の酸化皮膜形成を防ぐことで冷媒回路の清浄度を維持します。
配管の支持・固定についても、振動対策(室外機からの振動伝達を防ぐ防振支持)、熱膨張への対応(ループや曲げによる逃げの確保)、貫通部の防火区画処理(建築基準法に基づく不燃材充填)など、電気・建築法規との整合を踏まえた総合的な判断が必要です。複数系統の配管が輻輳する大規模施設では、BIM・CIMを活用した配管工事の図面管理のように3Dモデルで他設備との干渉を事前確認しておくと、手戻りの少ない施工計画を立てやすくなります。
保温施工の役割と施工要点
冷媒配管は、液管・ガス管ともに保温施工が義務付けられています。目的は2つあり、1つは熱損失の防止(外気との熱交換を抑えて冷媒温度を適切に保つ)、もう1つは結露防止(冷媒管表面が露点温度以下になることで発生する結露水による建物損傷を防ぐ)です。
保温材には、発泡ポリエチレン系の保温チューブが広く使用されます。屋外露出部では紫外線劣化に強いアルミテープ仕上げやビニルテープ巻きが必要です。施工上よくある不具合として、接続部・貫通部の保温材の切れ目(ブリッジ)による結露発生が挙げられます。特にフレアナット接続部は保温材が分断されやすい箇所であり、補修テープを用いた確実な目止め処理が求められます。
室外機側では、配管勾配の確保とUトラップの設置も重要な施工要素です。冷媒配管内を循環する冷凍機油(コンプレッサー潤滑油)が配管内に滞留しないよう適切な勾配とオイルトラップを設けることで、長期運転時の圧縮機への油戻りを確保し、機器の耐久性を維持します。
フロン排出抑制法への対応と資格要件
2015年に施行されたフロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)により、業務用冷凍空調機器における冷媒の管理が大幅に厳格化されました。2026年現在も法改正が続いており、最新の規制内容を把握したうえでの施工・管理が求められます。
機器管理者(ビルオーナー・テナント)には冷媒漏えい防止のための点検義務が課せられています。すべての業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)には3ヶ月に1回以上の簡易点検が求められ、これに加えて圧縮機の定格出力7.5kW以上の機器には専門業者(第一種フロン類充填回収業者など)による定期点検(7.5kW以上50kW未満は3年に1回以上、50kW以上は1年に1回以上)が義務付けられています。
冷媒の充填・回収作業は、都道府県知事登録を受けた「第一種フロン類充填回収業者」のみが行えます。作業に従事する技術者も、冷凍空調技士(日本冷凍空調学会)や冷媒回収技術者(JRECO)などの資格取得が実質的に必要です。冷媒をみだりに大気放出した場合は、1年以下の拘禁刑(2025年6月施行の刑法改正前は「懲役」)または50万円以下の罰金が科される場合があります。また、機器廃棄時に冷媒の引渡し・回収を怠った場合も、50万円以下の罰金が科される場合があります。
施工業者を選ぶ際は、これらの法的要件を満たした登録業者かどうかを確認することが重要です。
まとめ
業務用エアコンの冷媒配管工事は、材料選定・施工品質・法規制対応の3つが高いレベルで求められる専門工事です。フレア接続やろう付けの精度、真空引きの徹底、保温施工の隙間ない仕上げ、そしてフロン排出抑制法に基づく適切な冷媒管理まで、一連の工程すべてがエアコンの性能・寿命・安全性に影響します。空調配管も給排水配管と同様に、配管の老朽化診断の考え方に沿って定期的な状態確認を行うと、突発的な機器トラブルを未然に防ぎやすくなります。
森工業では、業務用エアコンの冷媒配管設計・施工から冷媒回収・定期点検まで一貫して対応しています。新設・更新・改修工事のご相談はもちろん、既存設備の冷媒漏えい点検や法定点検の代行にも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
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