
硬質塩化ビニル管(塩ビ管)の接着接合に使う接着剤は、有機溶剤を主成分とする引火性の液体です。ピットや機械室、天井内などの通風が悪い場所で塗布すると、溶剤の蒸気がこもりやすくなります。この記事では、接着剤に含まれる溶剤と、有機溶剤中毒予防規則(有機則)で求められる換気・保護具・掲示などの決まりを、法令とメーカーの安全データシート(SDS)をもとに整理します。
接着剤に含まれる溶剤
クボタケミックスが公開している塩ビ管用接着剤「タフダイン赤」のSDSでは、成分はシクロヘキサノン40〜50%、メチルエチルケトン20〜30%、テトラヒドロフラン10〜20%で、引火点はマイナス14.5度、消防法の第四類第一石油類(火気厳禁)にあたるとされています。適用法令の欄には、労働安全衛生法上の第2種有機溶剤等と記載されています。3つの溶剤はいずれも労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げる有機溶剤です。
成分や用途は製品ごとに違います。同社のSDSの一覧でも、一部の製品は水道などの飲料水用の管路には使えないと注記されています。使う前に、その製品のSDSと適用の範囲を確かめてください。
出典: クボタケミックス SDS・成分表のダウンロード/タフダイン赤 安全データシート/労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)
有機則がかかる作業と場所

有機則は、接着のための有機溶剤等の塗布と、塗布した物の接着を「有機溶剤業務」に含めています。有機溶剤等には、有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含む混合物も含まれます。設備や掲示、健康診断などの主な義務は「屋内作業場等」での業務にかかり、屋内作業場のほか、ピット、暗きょやマンホール、ダクト、水管の内部、通風が不十分な場所などがこれにあたります。
使用量が少なく、作業場の広さ(気積)から計算する許容消費量を超えない場合には、設備などの規定の一部が適用されない仕組みもあります(第2条)。ただし算定には厚生労働大臣が定める数値を用いるため、現場ごとに確かめが必要です。
換気の決まり
屋内作業場等で第1種・第2種有機溶剤等を使う業務では、蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設けるのが原則です(第5条)。そのうえで次の特例があります。
- 臨時の作業で、タンク等の内部以外の場所なら第5条の設備は不要。タンク等の内部では全体換気装置を設ければよい(第8条)
- 短時間の作業で、タンク等の内部以外の場所なら全体換気装置で足りる(第9条第1項)
- 短時間の作業で、タンク等の内部なら送気マスクを備えることで換気装置を設けないことができる(第9条第2項)
ここでいう「タンク等の内部」には、通風が不十分な地下室や、ピット、暗きょ・マンホール、ダクトの内部なども含まれます。配管ピットやマンホール内での接着は、この区分で考える必要があります。
保護具・掲示・健康管理
換気の特例を使う場合、保護具の義務がついてきます。タンク等の内部で換気装置を設けずに行う短時間の業務では送気マスクを使わせなければならず(第32条)、全体換気装置で行うタンク等の内部の業務などでは、送気マスク、有機ガス用防毒マスクなどを使わせる必要があります(第33条)。SDSでは、不浸透性の保護手袋、保護眼鏡、JIS T8152に適合した防毒マスクなどが示されています。
ほかにも次の決まりがあります。
- 有機溶剤作業主任者の選任(技能講習の修了者から。第19条)
- 疾病の種類や応急処置などの掲示(第24条)と、区分の色分け表示(第2種は黄。第25条)
- 常時従事する人の健康診断(雇入れ・配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回。第29条)
- 蒸気が出るおそれのある空容器は密閉するか、屋外の一定の場所に集める(第36条)
現場での段取り
接着作業の前に、次の順で確かめておくと抜けが減ります。
- 使う接着剤のSDSで成分、引火点、有機溶剤の区分を確かめる
- 作業場所が屋外か、屋内作業場等か、タンク等の内部(ピット・マンホールなど)かを区分する
- 区分に応じて局所排気・全体換気・送気マスクなどの方法を決める
- 保護手袋・保護眼鏡・呼吸用保護具を人数分そろえる
- 火気を遠ざけ、接着剤の缶はこまめにふたを閉める
切断・面取り・挿し込みといった接着の手順は、塩ビ管(VP管・VU管)の施工実務ガイドで解説しています。森工業では職長・安全衛生責任者などの有資格者が現場の安全衛生を管理し、法人・事業者様の配管工事を承っています。ご相談はお問い合わせフォームよりお寄せください。
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