
ホテルや福祉施設、飲食店、工場の浴場など、一度にたくさんの湯を使う施設では、業務用のガス給湯器を何台も並べて1つのシステムとして動かす方式がよく使われます。メーカーによって「マルチシステム」「連結設置」などと呼び方は違いますが、考え方は共通です。大きなボイラー1台で賄う方式と比べて、必要な量に合わせて台数を組み合わせられる点が特徴です。この記事では、複数台連結の仕組みと、大量給湯の設計で確かめる点、更新のときの注意点を整理します。
複数台連結(マルチ給湯システム)の仕組み
複数台連結は、瞬間式の給湯器を何台も並べ、コントローラで1つのシステムとして運転する方式です。給湯器メーカーの1社であるパーパスは、マルチシステムを「給湯負荷に応じて瞬間式給湯器を連結設置し、台数制御運転やローテーション運転を行う」ものと説明しています。主な働きは次の3つです。
- 台数制御運転: 使う湯量に応じて運転する台数が増減するため、無駄な燃焼が少なくなる(貯湯槽を併用する場合は異なる)
- ローテーション運転: 1台に負荷が偏らないよう、燃焼回数や燃焼の累積時間に応じて運転する機器を入れ替える
- バックアップ: 1台が故障しても他の給湯器が稼働する(最大給湯能力は下がる)
同社の資料では、1システムに32号・50号とも最大20台まで連結でき、50号の機種では50号(87.2kW)から1000号(1,744kW)までの能力を組めるとしています。排気筒を集合して1本にまとめられる機種があることや、ボイラーと比べて小型・軽量なので専用のボイラー室が不要であることも特長として挙げています。
出典: パーパス「マルチシステム」製品情報
メーカーごとに違う連結の決まり

連結できる台数や組み合わせのルールは、メーカーと機種ごとに決まっています。たとえばリンナイの業務用50号の機種では、給湯器を最大30台(5ユニット:1500号)まで連結して1つのリモコンで制御でき、システムコントローラを各ユニットのメイン給湯器に取り付けて「連結するすべての給湯器を同じ品番で連結させます」としています。2台だけの場合は専用の連結ケーブルで、メインのシステムコントローラを使わずに連結できるとも案内しています。
出典: リンナイ 業務用ガス給湯器 RUXC-SE5001シリーズ
ノーリツも、ローテーション運転で使用機器の偏りが少なくなりシステムとしての耐久性が向上すること、1台が故障しても他の給湯器がバックアップすること(故障箇所によってはバックアップ運転できない場合がある)を説明しています。いずれも1社の資料の例で、実際の設計では採用する機種の技術資料と施工説明書の条件に従います。
出典: ノーリツ マルチシステム
大量給湯の設計で確かめること
連結システムの設計は、ピーク時にどれだけの湯を同時に使うかを見積もるところから始まります。号数は給湯器の能力を表す目安なので、ピーク時の湯量と給水温度から必要な能力を求め、それを何台に分けるかを決めます。そのうえで、次のような点を確かめます。
- 台数の余裕: 1台が止まっても最低限の給湯を続けられるか、点検や更新で1台ずつ止められるか
- 給水: 合計の流量に見合う給水管の口径と水圧があるか。受水槽や加圧給水ポンプの能力も含めて確かめる
- 給湯配管: 各機器に偏りなく水が流れるよう、ヘッダーの取り方や配管の長さのバランスをメーカーの施工資料に沿って決める
- 循環: 給湯栓までの距離が長い施設では、循環ポンプで湯を回して待ち時間を減らす方式を組み合わせるか
- ガス: 全台が同時に燃焼したときのガス消費量に見合う配管口径とガスメーターの能力があるか(ガス事業者との協議が必要になります)
- 排気と設置: 屋上・機械室・屋外の設置場所で排気の向きや離隔が取れるか、架台と転倒防止の固定方法
水道に直結して給水する場合について、リンナイの資料は水道事業者の確認・承認が必要としています。受水槽を経由するか直結にするかで、給水側の設計が変わる点にも注意が必要です。
更新のときの注意点
連結システムの利点の1つは、台数があるぶん、工事の段取りを工夫すれば給湯を完全に止めずに更新を進めやすいことです。一方で、連結の制御はメーカーと機種の組み合わせで決まっているため、故障した1台だけを新しい機種に替えられるとは限りません。更新を考え始めたら、次の順に確かめると判断しやすくなります。
- 既存の機種と同じシリーズの後継機がシステムに組み込めるか、コントローラやリモコンも替える必要があるか
- 全台を一度に替えるか、系統ごとに分けて替えるか(給湯を止められる時間帯と施設の運営に合わせる)
- 使い方が変わっている場合に、台数や能力を見直せるか(過大な設備は燃焼の無駄につながる)
- 従来型から潜熱回収型に替える場合は、各機器のドレン排水の行き先を確保できるか
業務用給湯器の税務上の耐用年数と資産区分は業務用給湯器・ボイラーの法定耐用年数と減価償却で解説しています。更新の時期を決めるときは、税務上の年数とは別に、故障の頻度や部品の供給状況を見て判断します。
森工業へのご相談
森工業は、法人・事業者様の施設を対象に、給湯設備を含む衛生設備工事と、給水・給湯・ガスの配管工事を承っています。複数台連結の給湯システムの新設や更新に伴う配管工事については、お問い合わせフォームよりご相談ください。
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