
工場やプラントの配管は、稼働を止めて内部を目視確認することが難しい設備です。生産ラインを長時間停止すれば機会損失が発生しますし、保温材やライニングで覆われた配管では外観だけで腐食や減肉の進行度を判断することもできません。そこで活用されているのが、配管を切断・分解せずに内部の状態を評価できる非破壊検査です。ここでは代表的な手法である超音波肉厚測定を中心に、検査が必要になる場面、実施の流れ、記録の残し方について整理します。
非破壊検査が必要になる場面
配管は使用年数の経過とともに、内面の腐食や薬液・スチームによる減肉が進みます。破損してから対応すると漏洩事故や生産停止につながるため、次のような状況では非破壊検査による事前把握が重要になります。
- エルボやティーなど、流体の乱れで局所的に減肉しやすい形状部がある配管
- 高圧ガス保安法や労働安全衛生法の対象設備で、定期自主検査の記録が求められる配管
- 保温材やライニングに覆われ、外観目視だけでは劣化状況を確認できない配管
- 薬液・蒸気・圧縮空気など、漏洩時の影響が大きい流体を扱うライン
- 建設から相当年数が経過し、更新か延命かの判断材料が必要な配管系統
このような配管は、目視点検だけに頼らず、定量的なデータに基づいて劣化の進み方を把握しておくことで、計画的な修繕や更新のタイミングを判断しやすくなります。老朽化した配管全般の点検の考え方は配管の老朽化診断とは?点検方法と更新時期の見極め方でも解説しています。
超音波肉厚測定の仕組みと特徴

超音波肉厚測定は、配管の外面にセンサー(探触子)を当て、超音波が管内面で反射して戻ってくるまでの時間から板厚を算出する方法です。切断や穴あけを行わずに測定できるため、稼働中の設備でも比較的短時間で実施できる点が特徴です。
主なメリット
- 配管を分解・切断せずに測定できるため、生産ラインの停止時間を最小限に抑えられる
- 数値データとして記録できるため、前回測定値との比較で減肉の進行速度を評価できる
- 保温材の一部をめくって局所測定するだけで済む箇所が多く、大掛かりな養生が不要
- 複数箇所を短時間で測定でき、配管系統全体の傾向を把握しやすい
確認しておきたい注意点
- 保温材やライニングの上から直接測定はできないため、測定点では被覆材を一部撤去する養生が必要
- 表面の錆や塗膜の状態によっては、事前にケレン(下地処理)を行わないと精度が落ちる場合がある
- 局所的な孔食(ピンホール状の腐食)は、測定点の取り方次第で見逃す可能性があるため、疑わしい箇所は測定点を密にする
- 測定結果はあくまで「その時点の板厚」であり、進行速度の評価には過去データとの継続比較が欠かせない
検査の進め方と記録の残し方
非破壊検査を計画的に活用するには、単発の測定で終わらせず、継続的な記録として蓄積していくことが重要です。一般的な進め方は次のとおりです。
- 配管系統図をもとに、腐食・減肉のリスクが高い箇所(エルボ、レジューサー、溶接部周辺、支持金物の接触部など)を洗い出す
- 保温材の撤去範囲や測定日程を、生産計画に影響が出ないタイミングで調整する
- 各測定点にマーキングを行い、次回以降も同一箇所で測定できるようにする
- 測定値・測定日・測定機器・担当者を記録として管理し、経年変化を追跡できる形で保管する
- 基準値を下回った箇所、または減肉速度が速い箇所については、補修・部分更新・系統ごとの更新計画へと反映する
こうした記録は、設備の延命判断だけでなく、更新工事を発注する際の優先順位付けにも役立ちます。生産ラインを止めずに配管を更新する工程計画については工場の生産ラインを止めずに行う配管更新工事|短工期化の工程計画で詳しく紹介しています。
まとめ
配管の非破壊検査、特に超音波肉厚測定は、稼働を止めずに配管内部の劣化状況を数値で把握できる手段です。単発の点検で終わらせず、測定点を固定して継続的にデータを蓄積することで、突発的な漏洩事故を防ぎながら、補修や更新の計画を立てやすくなります。工場・プラントの配管診断サービス全体の流れについては工場・プラントの配管診断サービス|劣化状態の見える化と計画的修繕の進め方もあわせてご参照ください。自社の配管設備における非破壊検査の実施やデータ管理についてご相談がある場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
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