
なぜ店舗・飲食店の配管トラブルは繰り返すのか
「修理しても数ヶ月でまた同じトラブルが起きる」「テナントから急に水漏れの連絡が来て、休業を余儀なくされた」——店舗・飲食店を営むオーナーから、こうした相談を受けることは少なくありません。
住宅と違い、飲食店や商業施設の配管は1日の使用量が格段に多く、油脂・食材くず・洗剤・高温排水などが大量に流れ込みます。その結果、トラブルが「一時的な詰まり」で収まらず、配管の劣化を加速させて繰り返し不具合を招く構造的な問題へと発展しやすいのです。
この記事では、私たちが実際の施工・修理対応で遭遇した店舗・飲食店の配管トラブルを事例ごとに紹介し、オーナーが事前に被害を防ぐための具体的な対策を整理します。
事例1:厨房排水の繰り返し詰まり(飲食店・築15年テナントビル)

状況: 営業中に厨房の床排水口から汚水が逆流。業者を呼んで高圧洗浄で解消したものの、半年後に再発しました。3回目の再発でようやく、根本原因の調査依頼が入りました。
原因: 調査の結果、排水管(VP75mm)の内壁に油脂が厚く固着し、管の実効径が大幅に狭くなっていました。グリストラップは設置されていたものの、第2槽(油脂分離槽)の清掃が3年以上未実施で機能を失っており、油分をほぼ素通りのまま下流の配管へ流し続けていたのです。
高圧洗浄はあくまで「その時点の詰まりを除去する」だけで、管内壁に固着した油脂層を完全に取り除けるわけではありません。グリストラップが機能しない限り、清掃後も同じペースで油脂が再堆積します。
対策:
- グリストラップを分解清掃し、油脂分離機能を回復
- 固着油脂の除去に特化した薬剤投入(定期清掃プログラムとして月1回)
- 排水管の内視鏡調査で腐食状況を確認し、劣化部位を交換
教訓: グリストラップの清掃を怠ることが繰り返し詰まりの最大の原因。高圧洗浄は「対症療法」であり、「予防」にはならない。
事例2:2階テナントからの漏水被害(複合テナントビル)
状況: 2階飲食店の床排水口まわりから漏れた水が、1階テナント(アパレル)の天井に達しました。1階側で商品損害が発生し、ビルオーナーを巻き込んだ損害賠償請求にまで発展しています。
原因: 2階飲食店の厨房床面に設置された排水口(ドレン)のパッキン劣化と、床コンクリートのひび割れが重なった複合漏水でした。飲食店では業務用食洗機や炊飯器などから高温・高湿の排水が断続的に流れるため、床面の防水層が早期に劣化しやすい環境にあります。
漏水が発覚したのは「1階の天井から水が滴り始めた時点」でした。それ以前から少量の漏水が続いていたと考えられ、早期発見の仕組みがなかったことが損害拡大を招いた直接の要因です。
対策:
- 床排水口まわりの防水補修(ウレタン塗膜防水)
- 排水ドレンのパッキンを定期交換(3〜5年ごと)
- 1階天井に水分センサーを設置し、漏水の早期検知体制を構築
教訓: 上階飲食店の床防水は「目に見えない劣化」が進みやすく、5年を超えたら点検が必要。1階への損害が発生した後では修復コストが跳ね上がる。
事例3:グリストラップ臭気クレーム(繁華街の飲食テナント)
状況: 夜間、テナントの裏口付近から異臭がするという近隣クレームが複数届きました。保健所の立ち入り確認を受け、グリストラップの管理状態が問題視される事態に発展しています。
原因: グリストラップ第1槽のバスケット(食物残渣を受けるかご)が清掃されておらず、腐敗した残渣が堆積。嫌気性細菌が大量に繁殖して硫化水素などの臭気ガスを発生させており、夏場の気温上昇がさらに臭気を増幅させていました。
対策:
- グリストラップの緊急清掃(専門業者による3槽全清掃)
- バスケットは毎日または1日2回の清掃を店舗運営ルールに組み込む
- 消臭・殺菌効果のある専用清掃剤を定期的に投入
教訓: グリストラップの清掃は「廃業にもつながるリスク管理」の問題。保健所指導・営業停止を受ける前に定期清掃体制を整えることが必須。
事例4:給湯器の急故障による営業中断(美容室)
状況: 朝の開店準備中に電気温水器が故障し、お湯が出なくなりました。シャンプーができず午前中の予約を全件キャンセル。翌日の部品入荷・交換まで、一部の営業中断を余儀なくされています。
原因: 電気温水器の電熱ヒーターが断線していました。機器の設置から17年が経過しており、平均的な寿命を超えていたのです。オーナーは「特に壊れていないから使い続けていた」とのことで、耐用年数そのものを把握していませんでした。
対策:
教訓: 給湯設備は「壊れるまで使う」ではなく、耐用年数(電気温水器は15〜20年が目安)を把握して計画的に更新することが、営業中断リスクを防ぐ最善策。
事例5:排水管の経年腐食による漏水(居酒屋・築30年ビル)
状況: 地下厨房の床下から微量の水が滲み出し、床が濡れた状態が続いていました。「排水が流れにくい」との訴えを受けて内視鏡調査を実施したところ、VP管の接続部が完全に腐食・崩壊していることが判明しました。
原因: 築30年以上の建物に設置されたビニール管(VP管)が、長年の油脂・酸性排水・高温排水によって老化・軟化し、継手との接続部が脱落していました。直径100mmの排水管が接続部から外れていたため、排水の一部が配管の外へ漏れ出して床下に浸透していたのです。
対策:
- 部分補修ではなく厨房エリアの排水管全体を塩ビライニング鋼管または排水専用VP管に更新
- 工事は営業時間外(深夜〜早朝)に集中施工し、3日間の工程で完了
- 施工後に管内カメラで全区間の施工品質を確認
教訓: 「排水が流れにくい」という軽微な症状が、実は配管崩壊の前兆であることがある。早期に内視鏡調査を実施すれば、小規模な部分補修で済んだ可能性がある。
店舗オーナーが今すぐできる予防策リスト
上記の事例から、以下の予防策が有効です。
定期清掃・点検(日常管理):
- グリストラップ第1槽バスケット:毎日清掃
- グリストラップ全槽清掃:月1〜2回(専門業者委託推奨)
- 床排水口・ストレーナー:週1〜2回の清掃
定期点検(年次・定期管理):
- 排水管内視鏡調査:5年ごと(築10年以上は3年ごと推奨)
- 給湯設備の状態確認:年1回のメーカー点検または専門業者点検
- 床防水状態の目視確認:半年ごと
設備更新の目安:
- 電気温水器:15〜20年(症状が出る前の計画交換を推奨)
- 排水用VP管:20〜30年(使用環境により早期劣化あり)
- グリストラップ本体:20〜25年
店舗出店前の物件チェックも重要
店舗の配管トラブルは、物件選定の段階で既存設備の状態を確認しておくことで大きく減らせます。テナント物件を探す際は、senkyaku(テナント・店舗物件)での物件情報確認とあわせて、内覧時に「排水管の口径」「グリストラップの有無と年式」「給湯設備の種類と設置年」を必ずチェックしておきましょう。設備が古い物件を居抜きで借りる場合は、工事費用を見越した初期費用の見積もりが欠かせません。
森工業の店舗・飲食店配管工事
森工業では、飲食店・商業施設の給排水配管工事から修繕・定期メンテナンスまで幅広く対応しています。「配管の現状を調べたい」「グリストラップ周りの設備を整備したい」「築年数が古い物件の配管を全体的に見てほしい」といったご相談も、お気軽にお寄せください。地域に根ざした配管工事のプロとして、店舗運営を支える設備管理をサポートします。
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