
給湯器を更新する時の選択肢には、ガス給湯器(従来型とエコジョーズ)、エコキュート、ハイブリッド給湯機、エネファームがあります。この記事では、4つの方式の仕組みの違いと、賃貸住宅を所有する法人や福祉施設などで給湯器を選ぶ時に確かめておきたい点を、国の補助事業・業界団体・法令の資料で確かめられる範囲で解説します。機器と工事の費用、光熱費、元が取れるまでの年数は、使う湯の量や料金の契約、設置の条件で大きく変わるため、目安の金額は載せていません。
4つの方式の仕組みの違い
| 方式 | お湯のつくり方 | 使うエネルギー | 貯湯タンク |
|---|---|---|---|
| ガス給湯器(従来型) | ガスを燃やした熱で水を温める | 都市ガス・LPガス | 使わない(使う時にその場で温める) |
| エコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯器) | 従来型が捨てていた排気の熱も回収して、水をあらかじめ温める | 都市ガス・LPガス | 使わない(使う時にその場で温める) |
| エコキュート(ヒートポンプ給湯機) | 電気でヒートポンプを動かし、外の空気の熱をくみ上げてお湯をつくる | 電気 | 使う |
| ハイブリッド給湯機 | 電気式ヒートポンプとガスの補助熱源機を併用する | 電気・ガス | 使う |
| エネファーム(家庭用燃料電池) | ガスから水素を作って発電し、発電の排熱でお湯をつくる | 都市ガス・LPガス | 使う |
表は、日本ガス石油機器工業会のガス給湯器の選び方とエコジョーズ、日本冷凍空調工業会のヒートポンプ給湯機とは、給湯省エネ2026事業の対象要件の詳細とハイブリッド給湯機、燃料電池普及促進協会の機器登録リストの説明をもとにまとめています。
ガス給湯器(従来型)とエコジョーズ
ガス給湯器の能力は「号数」で表します。号数は「水温+25℃」のお湯を1分間に何リットル出せるかを示すもので、24号なら水温+25℃のお湯を1分間に24リットル出せる能力です。ただし、使う水栓の種類や数、配管の条件、水圧によって、実際に使える水量は制限を受けます(日本ガス石油機器工業会「ガス給湯器・小型湯沸器・ふろがま」)。
エコジョーズは、従来は使わずに捨てられていた排気熱を利用して水をあらかじめ温めるため、少ないガスでお湯を沸かせる給湯器です。日本ガス石油機器工業会は、ガス料金の削減額の試算で、従来型ガス給湯器のモード熱効率を78.2%、エコジョーズを92.5%とする条件(建築研究所の技術情報による値)を使っています(日本ガス石油機器工業会「ガス高効率給湯器エコジョーズ」)。
エコジョーズは燃焼排ガス中の水蒸気の熱まで回収するため、ドレン(凝縮水)が出ます。ドレンは下水道法では汚水として扱われ、分流式の公共下水道では汚水系統に流すのが原則ですが、平成24年の国土交通省のガイドラインにより、自治体の判断で雨水と同様に扱うこともできるとされています(日本ガス石油機器工業会「地方公共団体によるドレン排水の取扱い情報マップ」)。従来型からエコジョーズに替える時は、設置場所の自治体の取扱いと、ドレン排水の配管の行き先を確かめます。灯油を使う給湯器にも、潜熱回収型の石油給湯機(エコフィール)があります。
エコキュート(ヒートポンプ給湯機)
エコキュートは、エアコンの暖房と同じ原理で外の空気の熱をくみ上げてお湯を沸かし、タンクに貯める給湯機です。電気は熱を運ぶための動力として使い、お湯を沸かす熱は、外気からくみ上げた熱と使った電気の熱の合計になります。外観は、エアコンの室外機のような「ヒートポンプユニット」と、タンクの「貯湯ユニット」の組み合わせです(日本冷凍空調工業会「ヒートポンプ給湯機とは」)。省エネ性能の指標と、寒冷地向けの区分の読み方は住宅用給湯器の省エネ性能の見方で解説しています。
ハイブリッド給湯機
給湯省エネ2026事業は、電気式ヒートポンプとガス補助熱源機を併用するシステムで、貯湯タンクを持つ機器をハイブリッド給湯機の性能要件としています。補助の対象になるのは、日本ガス石油機器工業会の規格(JGKAS A705)の年間給湯効率が108%以上の機種などです(給湯省エネ2026事業 ハイブリッド給湯機)。電気とガスの両方を使うため、ガスの配管と契約は残ります。
エネファーム(家庭用燃料電池)
エネファームは、都市ガスやLPガス等から水素を作り、その水素と空気中の酸素の化学反応で発電し、発電の際に出る排熱を回収してお湯をつくる機器です(給湯省エネ2026事業 対象要件の詳細)。LPガスの地域で使えない機器ではありません。給湯省エネ2026事業が性能要件で参照している燃料電池普及促進協会(FCA)の機器登録リストには、燃料が都市ガスの機種とLPガスの機種があり、寒冷地仕様・集合住宅用仕様・停電時の自立運転機能の有無も機種ごとに示されています(燃料電池普及促進協会「機器登録リスト」)。使うガスの種類に合った機種を選びます。
国の補助と、賃貸住宅を所有する法人が確かめること

給湯器の更新に使える国の補助は、方式と建物によって事業が分かれています。
| 項目 | 給湯省エネ2026事業 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 |
|---|---|---|
| 対象の機器 | エコキュート・ハイブリッド給湯機・エネファーム | エコジョーズ・エコフィール(従来型給湯器からの交換に限る) |
| 基本額 | エコキュート7万円/台・ハイブリッド給湯機10万円/台・エネファーム17万円/台 | 追い焚き機能なし5万円/台・あり7万円/台 |
| 賃貸住宅のオーナー | 住宅を所有して賃貸に供する個人・法人も対象 | 賃貸集合住宅のオーナー(個人・法人)と、管理委託を受けている管理法人等 |
| 対象にならない例 | 倉庫・店舗など住宅以外の用途の建物に設置する機器 | 戸建住宅・新築住宅、事業用に貸し出す住戸、老人ホームなどの施設 |
| 申請する人 | 登録した給湯省エネ事業者 | 登録した賃貸集合給湯省エネ事業者(施工業者・リース事業者) |
出典は給湯省エネ2026事業 対象要件の詳細と賃貸集合給湯省エネ2026事業 対象要件の詳細です。どちらの事業も、申請の手続きは登録した事業者が行い、登録のない事業者との契約は補助の対象になりません(給湯省エネ2026事業・賃貸集合給湯省エネ2026事業)。対象になる着工日は2025年11月28日から予算上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)で、予算の上限に達すると交付申請の受付を終えます。エコキュートの性能加算・撤去加算などの詳しい要件はエコキュートの補助金と設置工事で解説しています。
賃貸集合住宅で従来型のガス給湯器を交換する時は、賃貸集合給湯省エネ2026事業の要件のうち、次の点を工事の計画の段階で確かめます(賃貸集合給湯省エネ2026事業 対象要件の詳細)。
- 対象の建物:1棟に2戸以上の賃貸住戸があり、建築から1年以上が経過しているか、いずれかの住戸に居住の実績がある建物が対象です。補助は1住戸1台までです。
- 号数と機能を下げない:交換前の給湯器より能力(号数)が小さい機器や、交換前の給湯器が持つ給湯・追い焚き・暖房・オート/フルオートの機能をすべて備えていない機器は対象になりません。
- ドレン排水の工事:追い焚き機能のない機器で共用廊下を横断してドレン排水ガイドを敷設する工事と、追い焚き機能のある機器で浴室へドレン水を排水する工事(三方弁工事、三本管工事)は、1台あたり3万円の加算の対象です。ドレン排水の取扱いは自治体ごとに違うため、その取扱いに沿った工事が求められます。
- 補助を受けた後の制限:補助を受けた機器は、補助金の振込みから6年間、国または事務局の承認なく補助の目的に反して使用・譲渡・交換・破棄などをすることができません。
福祉施設・宿泊施設などで確かめること
国の2つの事業は住宅の給湯器が対象です。給湯省エネ2026事業は倉庫・店舗など住宅以外の用途の建物に設置する機器を(対象要件の詳細)、賃貸集合給湯省エネ2026事業は特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設、民泊施設、旅館業法の許可で運営する施設を(対象要件の詳細)、それぞれ対象外としています。施設の給湯設備では、方式を選ぶ前に次の点を整理します。
- レジオネラ症の予防:厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」は、貯湯式の給湯設備や循環式の中央式給湯設備を設ける場合、貯湯槽内の湯温が60℃以上、末端の給湯栓でも55℃以上となるような加熱装置を備えること、滞留水を排水できる排水弁を設けることが必要とし、貯湯槽等の清掃を1年に1回以上行うこととしています(厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」)
- 使う湯の量と時間帯:その場で温める方式は号数(1分間に出せる量)で、貯湯式はタンクの容量と沸き上げの能力で、使用のピークに足りるかを確かめます
- 設置場所の荷重と固定:家庭用ヒートポンプ給湯機の貯湯タンクは満水時に約400kg〜600kgの重さになり、しっかりした基礎が必要です(日本冷凍空調工業会「既設のガス給湯器から家庭用ヒートポンプ給湯機へ交換する際の注意点」)。給湯設備の設置は、平成24年国土交通省告示第1447号で改正された転倒防止の告示に従います(日本冷凍空調工業会「家庭用ヒートポンプ給湯機の転倒防止対策について」)
- 運転音:ヒートポンプユニットは、運転音が周囲に影響しない場所を選びます(据付けガイドブックについて)
業務用の機器については業務用ヒートポンプ給湯機の導入ガイドで解説しています。
方式を変える時の配管・設備工事
給湯器の方式を変えると、機器だけでなく基礎・配管・電気の工事が変わります。日本冷凍空調工業会は、ガス給湯器からエコキュートへ交換する時の注意点として、次のような点を挙げています(既設のガス給湯器から家庭用ヒートポンプ給湯機へ交換する際の注意点)。
- ヒートポンプユニットと貯湯タンクを据える十分なスペースと、強度のある基礎を用意する
- 給水管・給湯管・排水管の接続では、凍結や結露を防ぐ保温を行う
- 必要に応じて分電盤の容量の変更や配線工事、リモコンの配線を行う
- 既設のガス給湯器を撤去する時はガス栓を確実に閉め、ガスの使用をやめる場合はガスメーターの撤去や契約の解除の手続きを行う
ガスふろがまやガス湯沸器(暖房兼用のものを含む)など政令で定める機器の設置・変更の工事は、屋外に設置する機器の工事(屋内に位置を変えるものを除く)などの省令で定める軽微な工事を除いて「特定工事」にあたり、ガス消費機器設置工事監督者の資格を持つ人が実地に監督するか、自ら工事を行う必要があります(特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律第2条・第3条、同法施行令第1条、同法施行規則第2条)。LPガスの設備工事のうち経済産業省令で定める作業は、液化石油ガス設備士でなければ従事できません(液化石油ガス法第38条の7)。
エコジョーズに替える時はドレン排水の配管が、ガス給湯器や灯油給湯器から電気の方式に替える時は使わなくなるガス配管・送油管の処理が、それぞれ工事に加わります。給湯器から蛇口までの給湯配管が長い、保温が傷んでいるといった場合は、機器の更新に合わせて配管の更新も検討します。
交換の時期を考える目安
給湯器の交換の時期は、使用年数と点検の結果で考えます。業界団体は次のように案内しています。
- ガス給湯機器:メーカーは「設計上の標準使用期間」を表示していて、標準的な使用条件で安全に使える期間として10年と設定されている場合が多く、その前後1年(製造後9年〜11年未満)を点検期間としている場合が多くあります(日本ガス石油機器工業会「点検でわかる経年劣化事故防止」)
- 家庭用ヒートポンプ給湯機:修理に必要な補修部品の保有はおおむね10年で、設置後10年を超えて故障した時は交換部品が無い場合があるとして、計画的な買い替えが勧められています(日本冷凍空調工業会「家庭用ヒートポンプ給湯機の買い替え時期と廃棄について」)
賃貸住宅の各住戸や施設の複数の系統で、同じ時期に設置した給湯器は、交換の時期も重なります。設置年と点検の結果を一覧にしておくと、故障が続いてから慌てて交換するのではなく、建物ごとに更新の計画を立てやすくなります。
森工業へのご相談
森工業は法人・事業者様専門で、賃貸住宅を所有する法人の給湯設備工事や、工場・施設の給湯配管工事に対応しています(個人宅の工事は対象外です)。給湯器の方式の変更に伴う配管の延長・保温、ドレン排水の配管、使わなくなる配管の処理を含めて、給湯設備の更新工事のご相談はお問い合わせフォームよりお寄せください。補助の要件は、各事業の公式サイトで確かめてください。
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