
昭和30年代から平成初期にかけて建てられた工場・ビル・集合住宅では、配管の保温材や継手まわりの施工材にアスベスト(石綿)が使われている可能性があります。改修工事や配管更新工事を計画する際、事前調査を省略して着手すると法令違反となるだけでなく、作業員や周辺住民への深刻な健康被害リスクを生じさせます。本記事では、施設管理者・元請会社が押さえておくべき事前調査の手順と、除去後の配管更新について解説します。
配管保温材にアスベストが使われてきた理由
石綿は天然の鉱物繊維で、断熱性・耐熱性・耐火性に優れ、かつ比較的安価に入手できたことから、高度経済成長期を中心に建築・設備分野で広く使われてきました。配管への適用としては、蒸気配管やボイラー給排水管の保温筒(けい酸カルシウム保温筒など)、フランジ部・バルブ周りのパッキンやガスケット、タンク・ボイラー本体の断熱材などが代表的です。
現在は石綿含有製品の製造・使用が原則として禁止されていますが、それ以前に施工された建物には今なお残存しているケースが多くあります。目視では通常の保温筒と区別がつかないため、図面や竣工年だけで有無を判断することは困難です。古い工場や機械室では、長年の振動・熱変化によって保温材が劣化・脱落しはじめ、繊維が飛散している状態になっていることもあります。こうした状況を見落としたまま工事に着手することは、作業員の健康リスクという観点からも見逃せない問題です。
法令に基づく事前調査の義務

改修・解体工事を行う前には、法令に基づく事前調査が義務づけられています。関係する主な法令は、労働安全衛生法(石綿障害予防規則)と大気汚染防止法の2本柱です。対象となる工事規模・請負金額の要件や届出先の詳細については、環境省の石綿(アスベスト)対策ページおよび所管の都道府県・自治体で最新情報をご確認ください。
調査義務に関する主なポイントは以下のとおりです。
- 一定の規模・請負金額以上の解体・改修工事では、石綿の事前調査結果を労働基準監督署および自治体(都道府県・指定都市等)へ報告することが義務づけられています。
- 事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が実施しなければなりません。資格のない作業員が判断することは認められていません。
- 調査結果は書面で記録・保存し、工事着手前に発注者・元請会社へ提出することが求められます。
- 調査・分析・届出の手続きには相応の期間がかかるため、工事計画の段階から調査期間を見込んでおかないと、工期全体に影響します。
調査義務を怠った場合や、調査を実施したにもかかわらず報告を省略した場合は、是正命令・罰則の対象になり得ます。元請会社だけでなく発注者側も責任を問われる可能性があるため、施設管理者としても他人事ではありません。
配管保温材の調査で確認すべき範囲
配管系統の調査は、保温筒の表面だけを確認しても十分ではありません。以下の箇所を網羅的に確認することが重要です。
- 保温筒本体 — 蒸気管・給湯管・冷温水管など高温・低温配管に多用されてきた保温筒は、けい酸カルシウム製のものを中心に石綿含有の可能性があります。
- フランジ部のガスケット・パッキン — バルブやポンプとの接続部に用いられるガスケット・パッキン類にも石綿含有製品が広く使われていました。
- 吹付材・目地材 — ボイラー室や機械室の壁面・天井に吹き付けられた断熱材や目地の充填材にも注意が必要です。
- 保温材の外装材 — 石綿含有率が低い部材であっても、外装仕上げに石綿系の製品が使われている場合があります。
目視だけで判断がつかない場合は、代表的な箇所からサンプルを採取し、公的に認定された分析機関で石綿含有の有無を確認します。石綿含有が確認された場合は、除去・封じ込め・囲い込みのいずれかの工法を選定し、必要に応じて作業計画届などの届出を行うことになります。
石綿除去後の配管更新で確認すべきこと
石綿含有保温材の除去・封じ込め工事そのものは、石綿作業主任者の選任や所定の安全衛生措置を満たした専門業者が担う作業です。一方で、除去が完了した後に配管をどのように更新・補修し、新しい保温材でどう仕上げるかは、配管工事業者が担う領域になります。
保温材を取り除いた段階で初めて、管表面の腐食・減肉・継手のさびが確認できるケースは少なくありません。石綿対応の工事スケジュールに合わせて腐食診断や更新範囲の検討を並行して進めることで、数年後に再び大がかりな工事が必要になるリスクを減らすことができます。
新しい保温材の施工にあたっては、石綿を含まない代替断熱材への切り替えが標準となっています。代表的な素材は次のとおりです。
- ロックウール保温材 — 耐熱性が高く、蒸気配管など高温部位に適しています。
- グラスウール保温材 — 比較的低コストで、給排水管や空調配管に広く使われています。
- ポリエチレンフォーム・発泡ゴム系 — 低温・冷水配管の結露防止用途に向いた素材です。
配管の口径・設置環境(屋外露出か天井隠蔽かなど)・管内流体の温度によって、適切な断熱厚みや仕上げ材の仕様が異なります。更新工事の際には、断熱性能・耐久性・施工コストのバランスを考慮した選定が重要です。
工事前に進めておきたい準備の流れ
仙台市や宮城県内では、高度経済成長期に建設された工場・倉庫・中規模ビルが多く残っており、配管設備の老朽化対応とあわせてアスベスト対応を検討される施設管理者が増えています。スムーズに工事を進めるために、以下の順序で準備を進めることをお勧めします。
- 竣工年・改修履歴・設計図書の確認(石綿使用可能性のスクリーニング)
- 有資格者による建材の目視調査
- 必要に応じたサンプリング・分析機関での含有分析
- 調査結果の書面化と発注者・元請への報告
- 石綿含有が確認された場合の除去工法・届出の決定
- 除去完了後の配管更新・保温材再施工の設計・発注
工事の規模によっては、石綿除去工事の専門業者と配管工事業者が連携して進める必要があります。特に配管更新を機に設備全体の見直しを検討している場合は、除去工事の着手前から配管工事業者にも相談し、除去後の更新仕様についての見解を得ておくことがスムーズな段取りにつながります。着工直前になってから調査・設計を始めると、工期全体を圧迫する原因になりますので、計画段階での早めの確認が大切です。
まとめ
昭和・平成初期に建設された工場・ビルの配管保温材には、石綿が含まれている可能性があります。改修・解体工事を計画する際は、有資格者による事前調査の実施と調査結果の報告が法令上の義務です。調査を省略したまま着工することは、法令違反のリスクだけでなく、作業員・周辺への健康被害リスクにもつながります。
石綿の除去工事は専門業者の領域ですが、その後の配管更新・保温材の再施工には配管工事の専門知識が必要です。森工業では、蒸気配管・給排水設備の更新から保温材の再施工まで、除去完了後の配管工事を一貫してご対応いたします。石綿対応に伴う配管更新をご検討の際は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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