
集合住宅で増圧ポンプが必要な理由
水道本管の水圧だけでは、中・高層の集合住宅の上層階や末端住戸まで安定した給水圧力を届けることが難しい場合があります。このような場合に活躍するのが増圧ポンプ(ブースターポンプ)です。
増圧ポンプとは、水道引込管の途中に設置して水圧を一定値まで高め、各住戸に安定した流量・圧力で給水する設備です。近年、老朽化した受水槽・高架水槽方式から直結増圧給水方式への切替が進んでいますが、その中心設備が増圧ポンプユニットです。
増圧ポンプの種類と選定基準

増圧ポンプの基本構成
集合住宅向けの増圧ポンプユニットは、一般的に以下の要素で構成されます。
- ポンプ本体: 1台または2台(交互運転・並列運転用)
- 制御盤: 圧力センサーからの信号を受けてポンプを自動制御
- 圧力計・流量計: 運転状態の確認
- 逆流防止装置: 水道水の逆流を防ぐ安全装置
- 防振架台: ポンプ稼働時の振動・騒音を低減
機種選定の主なポイント
機種選定では以下の要素を確認します。
最大同時使用流量: 建物の住戸数・フロア数から推計した最大同時使用水量を基に、必要な揚水量(L/min)を算出します。設計基準(SHASE-S206など)に基づく計算が一般的です。
必要揚程(揚水圧力): 最上階の最遠端住戸で必要な残圧(一般的に0.07〜0.1MPa)を確保するために必要な全揚程を計算します。配管の長さ・口径・高さ(位置水頭)を考慮した設計が必要です。
ポンプ台数と運転方式: 2台構成(交互運転)にすることで、片方のポンプが故障・点検中でも給水を継続できます。24時間給水が求められるマンションでは2台構成が推奨されます。
省エネ性能(インバーター制御): インバーター付きの増圧ポンプは使用水量に応じてポンプ回転数を変化させ、電力消費を最適化します。従来の定速ポンプと比べて消費電力を大幅に削減できます。
水道局検定品の使用
直結増圧給水方式を採用する場合、増圧ポンプは水道局が認定・検定した製品を使用することが条件になります。仙台市など多くの自治体では、認定製品のリストを公開しています。工事計画の段階で管轄水道局に確認し、対応機種を選定します。
設置工事の流れ
設置スペースの確保
増圧ポンプユニットは機械室・パイプシャフト内・屋外ポンプ室などに設置します。ポンプ本体のサイズに加え、メンテナンス用の点検スペース(前面1m以上が目安)を確保することが重要です。
屋外設置の場合は防水・防さびに対応した屋外仕様機種を選ぶとともに、周辺の排水処理(ポンプ室内のピット排水)を計画します。
防振・防音対策
増圧ポンプは稼働時に振動と騒音を発生します。共同住宅では住戸への音の伝播を防ぐため、以下の対策を施します。
- 防振架台(スプリング防振または防振ゴム)へのポンプ設置
- フレキシブル継手(可とう管継手)を給水配管の接続部に使用して振動の配管伝達を遮断
- 機械室の壁・床への吸音材設置(状況に応じて)
水道引込管・給水立て管との接続
増圧ポンプの一次側(入口側)は水道引込管に接続し、二次側(出口側)は給水立て管に接続します。既存の受水槽給水系統と切り替える場合は、既存配管の接続変更工事が伴います。
接続部には必ずバルブを設け、ポンプの単独切り離しができるようにします。ポンプ停止時(故障・メンテナンス時)にバイパス弁を開いて直圧給水を継続できるバイパス配管を設けることも有効です(直圧でも一定の水圧が確保できる低層棟向き)。
試運転と水圧確認
設置後の試運転では、以下の項目を確認します。
- ポンプの起動・停止が圧力センサーにより正常に動作するか
- 最上階・最遠端住戸での水圧が基準値(0.07MPa以上)を満たしているか
- 騒音・振動が許容範囲内か
- インバーター制御の場合、流量変化に対して圧力が安定して維持されるか
維持管理の要点
増圧ポンプは給水の根幹設備であるため、適切な維持管理が不可欠です。
定期点検: 年1〜2回の定期点検で、モーター絶縁抵抗・軸受の摩耗・流量計・圧力計の正常動作を確認します。
消耗品交換: 軸封部(メカニカルシール)・各種Oリング・圧力センサーなどは経年劣化する消耗品です。製品ごとの推奨交換サイクルに従って交換します。
更新時期の判断: 増圧ポンプの耐用年数は一般的に15〜20年が目安です。この時期になると部品の入手が困難になることがあるため、早めの更新計画を立てることをお勧めします。
まとめ
増圧ポンプはマンション・集合住宅の安定給水を支える重要設備です。機種選定・設置工事・日常点検のいずれも、配管工事と設備管理の専門知識が求められます。老朽化したポンプの更新や、受水槽方式からの直結増圧方式への切替を検討している管理組合・オーナーは、専門業者に早期相談することで計画がスムーズに進みます。
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