
高架水槽とは何か
高架水槽(こうかすいそう)とは、建物の屋上などの高所に設置された貯水タンクのことです。受水槽からポンプで水を汲み上げ、高架水槽に貯留したうえで重力を利用して各戸・各階に給水する方式は、かつてのマンション・ビルで標準的に採用されていました。
しかし近年、高架水槽方式には以下のような課題が顕在化しています。
- タンク自体の老朽化: 設置から20〜30年を経過した高架水槽は、内部の腐食・亀裂・シーリング劣化が進み、衛生面のリスクが高まります
- 維持管理コスト: 法定清掃(年1回以上)や点検費用、修繕費が継続的にかかります
- 揚水ポンプの電力コスト: 受水槽から高架水槽へ揚水するポンプの電力が常時必要です
- 地震時のリスク: 高所の重量物であるため、耐震性が不十分な場合は落下・倒壊リスクがあります
こうした背景から、老朽化した高架水槽を廃止し、直結給水方式(直結増圧給水方式を含む)へ切り替える工事が全国のマンション・ビルで進んでいます。
直結給水方式の種類

高架水槽から切り替える先の直結給水方式には主に2種類あります。
直結直圧方式
水道本管の水圧をそのまま利用して各住戸に給水する方式です。ポンプ・水槽が不要でランニングコストが最小限になります。ただし対応できる建物の高さには上限があり、3〜4階程度までが一般的な適用範囲です。
直結増圧方式
水道本管から引き込んだ水を増圧ポンプ(ブースターポンプ)で加圧して各階に供給する方式です。受水槽・高架水槽がなくなるため衛生面が向上し、揚水ポンプの廃止でランニングコストも削減できます。中・高層マンション(概ね6〜20階程度)で広く採用されています。
増圧ポンプは給水圧力を自動制御するため、使用量が少ない深夜も必要以上に加圧することがなく、省エネ性にも優れます。
高架水槽廃止工事の全体像
高架水槽から直結給水への切替工事は、大きく以下の工程で進みます。
1. 水道局への事前相談・申請
直結増圧給水への切替には、管轄の水道局(仙台市の場合は仙台市水道局)への申請と承認が必要です。申請に先立ち、水道局への事前相談で建物規模・給水戸数・使用水量などの情報を提供し、直結切替が技術的に可能かどうかを確認します。
水道局の審査では、水道本管の水圧・管径が直結給水に対応できるかが重要な判断基準になります。本管側の能力が不足している場合は、本管の改修が必要になることもあります。
2. 現地調査と設計
申請と並行して、配管工事業者による現地調査を行います。確認事項は以下のとおりです。
- 既存受水槽・高架水槽の位置・容量・配管経路
- 増圧ポンプユニットの設置スペース(機械室または屋内)
- 屋上からの既存揚水管の撤去方法・コスト
- 各住戸への給水立て管の口径・状態
- 工事中の断水計画(居住者への影響最小化)
3. 既存設備の撤去
高架水槽・揚水ポンプ・揚水管を撤去します。高架水槽の撤去は屋上での高所作業になるため、適切な安全対策が必要です。撤去した高架水槽は産業廃棄物として適正処分します。
受水槽についても廃止する場合は同時に撤去します。ただし防災・非常用の飲料水確保を目的として受水槽を残すケースもあります。管理組合・建物オーナーと協議のうえ決定します。
4. 増圧ポンプユニットの設置
直結増圧給水では、水道引込管の直後に増圧ポンプユニットを設置します。ポンプユニットは水道局検定品(またはそれに準じた性能を持つ製品)を使用することが条件になります。
設置場所は機械室・パイプシャフト・外部ポンプ室などになりますが、防振・防音対策を施すとともに、将来のメンテナンスが容易なスペースを確保することが重要です。
5. 既存給水立て管との接続
増圧ポンプの吐出側を既存の給水立て管に接続します。既存立て管が老朽化している場合は、この工事と合わせて立て管も更新することが多く、工事期間・コストの効率化につながります。
6. 試運転・水質検査
工事完了後、増圧ポンプの動作確認と最上階・最遠端の住戸での水圧確認を行います。また水道法に基づく水質検査を実施し、残留塩素濃度が基準値(0.1mg/L以上)を満たしていることを確認してから引き渡しとなります。
工事の費用と工期の目安
高架水槽廃止・直結切替工事の費用は、建物の規模・既存設備の状態・付帯工事(立て管更新など)の範囲によって大きく変わります。一般的な目安として、中規模マンション(20〜50戸)では数百万円規模の工事になることが多いです。工事期間は2〜4週間程度が一般的ですが、立て管更新を伴う場合はさらに長くなります。
工事費は高架水槽の撤去費・増圧ポンプ本体・配管工事・申請手続き費用・産廃処分費などの合算です。補助金制度については、自治体によって異なりますので、計画段階で水道局や自治体窓口に確認することをお勧めします。
まとめ
高架水槽の廃止と直結給水への切替は、衛生面の向上・ランニングコスト削減・地震リスクの低減という複数のメリットをもたらします。一方で、水道局への申請・現地調査・断水計画など事前準備が多い工事でもあります。老朽化した高架水槽を抱えるマンション・ビルのオーナー・管理組合は、早めに配管工事の専門業者に相談して計画を立てることが大切です。
この記事をシェア