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電食(異種金属腐食)とは何か
配管工事や水道設備のトラブルを調べていると、「電食」または「異種金属腐食」という言葉に出会うことがあります。電食とは、異なる種類の金属が接触した状態で水(電解液)に触れると、金属間でわずかな電位差が生じ、電流が流れることで片方の金属が溶け出していく現象です。正式にはガルバニック腐食(Galvanic Corrosion)と呼ばれます。
家庭の水回りで例えると、銅管(給湯管)と亜鉛めっき鋼管(古い給水管)を直接ねじ継手で接続した場合、水分を媒介として両金属間に電気が流れ、電位の低い金属(この場合は亜鉛めっき側)が優先的に腐食します。この腐食は表面のサビと異なり、内部から進行するため気づきにくく、発見が遅れると漏水や管の破断につながります。
電食が起きやすい配管の組み合わせ

電食のリスクは、接触する金属の種類と「電位差」の大きさによって決まります。電位差が大きいほど腐食は速く進みます。住宅設備でよく見られる危険な組み合わせは以下の通りです。
銅管と亜鉛めっき鋼管の接続 かつては給水管に亜鉛めっき鋼管(白ガス管)が多用されており、給湯管に銅管を使ったシステムと直接接続されるケースがありました。銅と亜鉛の電位差は大きく、亜鉛側の腐食が10〜15年で顕在化する事例が多く報告されています。
ステンレス製器具と銅管の接続 現代の洗面台や浴槽の金属部品にはステンレスが使われています。ステンレスと銅は電位が近似しているため、業界団体の判定ではこの組み合わせは絶縁処理が不要とされています(詳細は後述の早見表)。むしろ注意すべきは黄銅(真鍮)です。水栓金具や継手に広く使われている一方、ステンレスと直接つなぐと脱亜鉛腐食が促進される恐れがあるため絶縁が必要と判定されます。
アルミ製部品と銅管・鉄管の組み合わせ アルミは電位が低い金属で、銅や鉄と接触すると腐食が進みやすい素材です。ソーラー温水器や熱交換器など業務用設備でアルミ部材と銅・鉄を混用する場合は、設計段階から絶縁対策を講じる必要があります。
【早見表】異種金属の組み合わせと絶縁処理の要否
「この金属とこの金属はつないでいいのか」を毎回判断するのは大変です。建築設備配管については業界団体が判定表を公開しており、ステンレス協会 配管システム普及委員会「ステンレス鋼管と異種金属とを接続する場合の絶縁施工について(建築設備配管編)」(平成27年9月) の表-3 が実務の基準になります。同資料ではステンレス鋼管と各材質の関係を次のように整理しています。
ステンレス鋼管と直接つないでよい材質・いけない材質
| 接続する相手の材質 | 絶縁処理 | 判定の理由 |
|---|---|---|
| 銅 | 不要 | 電位が近似しており実用上問題ない |
| 青銅 | 不要 | 同上 |
| 耐脱亜鉛腐食黄銅 ※ | 不要 | 青銅と同じ扱いが可能 |
| 樹脂(硬質ポリ塩化ビニル等) | 不要 | 樹脂は電気の不導体 |
| ステンレス | 不要 | 同材質 |
| 鉄・炭素鋼(亜鉛めっき鋼管を含む) | 必要 | 電位差が大きい |
| 鋳鉄・鋳鋼類 | 必要 | 同上 |
| 黄銅(真鍮) | 必要 | 脱亜鉛腐食が促進される恐れ |
| アルミニウム | 必要 | 電位差が大きい |
※ 耐脱亜鉛腐食黄銅は、日本伸銅協会の技術標準 JBMA T303(JIS H 3250 の附属書Bに相当)に規定する第一種に適合するもので、使用温度60℃以下という条件が付きます。
同資料ではこの判定を給水管・給湯管・冷却水管・冷温水管・消火管のすべてで同じとしています。冷却水・冷温水が密閉式であっても補給水が必須であること、消火管も乾式・湿式いずれも水と酸素の供給機会があることが理由として挙げられています。
表の中でいちばん判断を誤りやすいのが「黄銅(真鍮)」です。 水栓金具や継手の多くは黄銅製なので、「銅が絶縁不要なのだから真鍮も不要だろう」と考えてしまいがちですが、判定は逆になります。既存配管を調べるときは、銅色に見える部品が純銅なのか黄銅なのかまで踏み込んで確認してください。刻印やメーカー資料で判別できない場合は、絶縁が必要な側に倒して施工するのが安全です。
配管以外の部材はどう扱うか
同資料の表-4 では、部材と設置環境によって扱いが変わることも示されています。
- 配管・水栓金具・継手・バルブ:上の材質表どおりに判定する
- 本体がアルミニウムや鋳鉄でも、接水部がゴムで本体が水に触れない構造の継手・バタフライバルブ:絶縁処理は不要
- ポンプ・槽類・支持金具・壁貫通部:絶縁が必要。これは金属同士の電位差対策というより、建築躯体・鉄筋・電気機器を経由した「外部短絡」を作らないための措置です
つまり継手部分だけをきれいに絶縁しても、支持金具や壁貫通部で躯体の鉄筋に触れていれば電気的につながってしまい、絶縁の意味がなくなります。絶縁は「経路全体」で考える必要があります。
絶縁できているかを数値で確認する
絶縁継手を入れたつもりでも効いていないことがあります。同資料は、配管接続後で管内に通水する前に、フランジ前後の絶縁抵抗値が1MΩ以上であることを条件としています(国土交通省監修「機械設備工事監理指針」の絶縁継手の規定に基づく記述)。通水後では正確に測れないため、施工の途中で測るタイミングが決まっている点が重要です。
また絶縁区間の長さについて、計算によらない場合は長さ500mm以上かつ管径の6倍以上とするとされています(国土交通省監修 平成16年版 公共建築設備工事標準図 機械設備工事編 施工3 注2)。エルボが接続されて曲がっている場合は軸長で数えます。
なお埋設部にステンレス鋼管を使う場合は、土壌腐食が加わるため原則としてSUS316を使い、SUS304で施工するときは防食テープやポリエチレンスリーブで土壌との接触を防ぐことが望ましいとされています。電気軌道(電車の線路)が近い場所では漏洩電流による腐食も想定されるため、SUS316でも防食処理が必要です。
電食が発生しやすい環境条件
同じ金属の組み合わせでも、環境によって腐食の速度は大きく変わります。
水質の影響:電解質(イオン)を多く含む水は電気を通しやすく、電食を促進します。宮城県の一部地域で見られる硬度の高い水や、工場廃水が混入した地下水を利用している場合はリスクが上がります。
温度の影響:高温の環境では化学反応が促進されるため、給湯管(60℃前後)の電食リスクは給水管より高くなります。給湯器まわりの配管接続は特に注意が必要です。
流速の影響:水の流れが速い部分では、腐食生成物が流されて金属表面が常に新鮮な状態にさらされるため、腐食が加速します。ポンプ直後や大型建物の幹線配管は注意が必要です。
電食の早期発見サイン
電食は内部から進行するため、外から見ただけでは気づきにくいのが難点です。ただし、以下のサインが現れた場合は電食を疑いましょう。
赤水・茶褐色の水が出る:鉄管系の配管が腐食して酸化鉄が溶け出すと、蛇口から赤っぽい水が出ることがあります。長年使っていなかった水道を使い始めると出やすいですが、しばらく流しても改善しない場合は本格的な腐食が進んでいる可能性があります。
水道料金が急増する:電食で管壁が薄くなると微小な漏水が始まります。使用量を変えていないのに水道料金が上がっている場合は、漏水と合わせて電食も疑います。
継手まわりの変色・膨れ:金属継手の接続部付近に緑青(銅管の場合)や白い粉(亜鉛めっき管の場合)が付着している場合、腐食が進んでいるサインです。
管内カメラ調査での確認:決定的な確認手段は管内カメラ調査です。内面から厚さが不均一に失われている、特定の接続部分だけ腐食が集中しているといった所見が電食を示す根拠になります。
電食防止の基本対策:絶縁継手の使用
電食を防ぐ最も確実な方法は、異種金属を直接接触させないことです。そのために使われるのが「絶縁継手(ダイエレクトリックユニオン)」です。
絶縁継手は、金属と金属の間にゴムや樹脂などの絶縁材を挟み込んだ継手で、電流の流れを遮断します。外見は通常のユニオン継手とほぼ同じですが、内部構造が異なります。使用場所としては、銅管と鉄管の接続部、ガス給湯器の給水・給湯接続口、ソーラー温水器と補助熱源の接続部などが代表的です。
DIYで配管を接続する場合に絶縁継手を省略するケースが見られますが、これは後々の腐食トラブルの原因になります。新設・改修を問わず、異種金属を接続する箇所には必ず使用してください。
樹脂管・架橋ポリエチレン管への切り替えによる根本対策
電食の根本的な解決策として、腐食しない樹脂系配管材への切り替えがあります。架橋ポリエチレン管(XLpe)やポリブデン管は、電気を通さないため電食そのものが発生しません。耐熱性も高く(架橋ポリエチレン管は90〜95℃対応)、給湯管への使用も可能です。
築30年以上の住宅で亜鉛めっき鋼管が残っている場合、電食対策を含めた全面的な配管更新を検討する価値があります。工法によっては壁を壊さずに新管を引き直す「更生工法」や「サヤ管ヘッダー工法」も選べます。詳しくは専門の配管業者に相談してください。
リフォーム・増築時に注意すること
電食トラブルの多くは、リフォームや増築時に既存配管と新設配管を接続する際に発生します。特に以下の点を確認してください。
既存管材の確認として、壁内や床下に隠蔽されている管材を事前に調べます。外観(色・質感)や磁石への反応(鉄管かどうか)、施工年代の確認が手掛かりになります。接続材料の選定として、既存管と新設管の材質が異なる場合は、必ず絶縁継手を用意します。施工業者への明示として、複数の業者が工事する場合、前工程で使用した管材を次の業者に正確に伝えることが重要です。
電食は目に見えないところで進行し、10〜20年かけて深刻なトラブルを引き起こします。新築・リフォームの際に専門業者に相談し、適切な絶縁対策を施しておくことが、長期的な配管寿命を確保する上で非常に重要です。森工業では、宮城県内の配管診断から電食対策・配管更新まで対応しています。お気軽にご相談ください。
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