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配管に熱膨張が起こる理由
配管は温度変化によって必ず膨張・収縮します。これは金属材料の物理的特性(熱膨張係数)に起因するもので、避けることはできません。蒸気配管・温水配管・給湯配管・冷媒配管など、温度変化が大きい系統では、この熱膨張を適切に吸収しないと深刻なトラブルにつながります。
熱膨張量の計算は次の式で表されます。
ΔL = α × L × ΔT
- ΔL:熱膨張量(mm)
- α:線膨張係数(炭素鋼:12×10⁻⁶/℃、ステンレス:17×10⁻⁶/℃、銅:17×10⁻⁶/℃)
- L:配管の長さ(mm)
- ΔT:温度差(℃)
例えば、炭素鋼製の蒸気配管(配管温度200℃、施工時常温20℃、長さ50m)では、12×10⁻⁶ × 50,000mm × 180℃ ≒ 108mmもの膨張が生じます。この膨張が拘束されると配管・支持金物・機器接続部に大きな熱応力が発生し、配管の座屈・フランジ漏れ・機器損傷の原因となります。
熱膨張を吸収する方法

配管の熱膨張対策には主に以下の3つのアプローチがあります。
ルーティングによる自己補償(ループ・オフセット):配管経路にL字・Z字・U字のベンド(曲がり)を設けることで、配管自身の柔軟性を利用して膨張を吸収します。特別な機器が不要でメンテナンスも容易ですが、追加スペースが必要なため、スペースに余裕がある工場配管・屋外配管で採用されます。
支持構造の工夫(アンカーとガイド):配管の固定点(アンカー)と、膨張方向を案内する可動支持(スライドガイド・ローラーサポート)を組み合わせて、膨張を計画的に特定箇所で吸収させます。伸縮継手と組み合わせて使う場合の基本設計です。
伸縮継手(エキスパンションジョイント)の設置:専用の伸縮継手を配管途中に挿入し、その伸縮量で熱膨張を吸収します。スペースを取らず確実に膨張を処理できるため、屋内設備配管・大口径配管・振動対策が必要な配管で広く採用されます。
伸縮継手(エキスパンションジョイント)の種類
ベローズ型(波形伸縮継手):金属またはゴムの波形(ベローズ)が伸縮することで膨張を吸収します。軸方向・横方向・角度変位の吸収に対応できます。ステンレスベローズ型は高温・高圧の蒸気配管・石油化学プラントに使用され、ゴムベローズ型は空調設備の冷温水配管で多用されます。
スライド型(スリーブ型・テレスコープ型):外管の中を内管がスライドして軸方向のみの膨張を吸収します。大きな軸方向変位(数十mm〜数百mm)に対応できるため、長い直管部分に有効です。スライド面のパッキンが摩耗するため定期的な点検・交換が必要です。
ボールジョイント型(回転継手):配管の角度変位を回転運動で吸収します。2個以上を組み合わせることで3次元的な変位に対応できます。プロセス配管や回転機器の接続部分に使われます。
ゴム製可とう継手:柔軟なゴムを使用した継手で、振動吸収・軸ずれ補正・騒音低減を目的に設置されます。ポンプ・コンプレッサーの吸込み・吐出し側に設けることで機器への振動伝達を防ぎます。
伸縮継手の選定基準
伸縮継手を選定する際には以下のパラメーターを確認します。
設計圧力と設計温度:伸縮継手は使用流体の最高圧力・最高温度に対応した圧力クラスのものを選定します。ベローズ型は高圧に強く、ゴム製は低圧・常温域が主な適用範囲です。
吸収量(ストローク):予想される熱膨張量に対して十分な吸収ストロークを持つ製品を選びます。設計温度差から計算した膨張量に安全率(1.2〜1.5倍)を掛けた値が目安です。
変位の方向:軸方向のみか、横方向・角度変位も含むかで継手のタイプが変わります。ベローズ型は多方向の変位に対応できますが、アンカーポイントの設計と組み合わせることが重要です。
腐食環境・流体の性質:蒸気・薬品・海水など腐食性の高い流体ではステンレス(SUS316L)製のベローズや耐薬品性ゴムを使用します。食品・医薬品系ではFDA適合材料の選定が必要です。
施工・設置上の注意点
伸縮継手を設置する際には配管設計全体との整合が重要です。伸縮継手は単独では機能せず、アンカー(固定点)・ガイドサポートとのセットで設計されます。アンカーを設けることで膨張力を特定箇所に集約し、継手のみで吸収させる仕組みです。
継手の両側に中間ガイドを適切な間隔で設置しないと、熱膨張時に配管が座屈(バックル)する危険があります。ガイドの間隔は製品仕様書に従い、通常は継手から4D(管径の4倍)以内を最初のガイド位置とします。
また施工後の水圧試験では、ベローズ型継手にタイロッド(固定治具)を取り付けて過剰変形を防ぐ必要があります。タイロッドを外すのは試験合格・充水確認後です。
まとめ
配管の熱膨張は設計段階で必ず考慮すべき基本事項です。膨張吸収が不十分だと配管破損・漏水・機器損傷に直結します。自己補償ループ・伸縮継手・支持構造の組み合わせにより、長期にわたって安全に運転できる配管系統を設計することが重要です。既設配管でたびたび漏水が発生する、フランジのボルトが緩む、サポートが破損するといった症状は、熱膨張による応力が原因の場合があります。専門の配管工事業者に診断を依頼し、適切な対策を講じることをお勧めします。
よくある質問
Q. 配管の熱膨張量はどのように計算しますか?
A. 熱膨張量は ΔL = α × L × ΔT の式で求めます。αは線膨張係数(炭素鋼で12×10⁻⁶/℃、ステンレス・銅で17×10⁻⁶/℃)、Lは配管長さ、ΔTは温度差です。例えば炭素鋼の蒸気配管で長さ50m・温度差180℃の場合、約108mmもの膨張が生じます。
Q. 伸縮継手(エキスパンションジョイント)にはどんな種類がありますか?
A. 主な種類は、波形が伸縮するベローズ型(軸方向・横方向・角度変位に対応し高温高圧の蒸気配管にも使用)、内管がスライドして軸方向の大きな変位を吸収するスライド型、角度変位を回転で吸収するボールジョイント型、振動吸収・騒音低減を目的とするゴム製可とう継手です。
Q. 伸縮継手の吸収量(ストローク)はどう決めますか?
A. 設計温度差から計算した熱膨張量に安全率1.2〜1.5倍を掛けた値が、必要な吸収ストロークの目安です。伸縮継手は単独では機能せず、アンカー(固定点)とガイドサポートとセットで設計し、最初の中間ガイドは継手から4D(管径の4倍)以内に設置します。
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