
給水ポンプや冷温水ポンプの軸のまわりから水がにじむ、床に水たまりができるといった症状の多くは、軸封と呼ばれる部分に原因があります。軸封には大きく分けてメカニカルシールとグランドパッキンの2種類があり、構造も「正常な漏れ」の考え方も違います。この記事では、ポンプの軸封だけに絞って、2つの方式の仕組みと漏れの見方、メーカーが示す交換の目安、交換するときの注意を整理します。ポンプ全体の選び方や点検は給水ポンプ選定・設置ガイドや汚水ポンプ・排水ポンプのメンテナンスで解説しています。
ポンプの軸封とは
渦巻ポンプでは、モーターの回転を羽根車に伝える主軸がポンプのケーシングを貫いています。この貫通部から液が漏れたり、空気を吸い込んだりしないように密封する部分が軸封です。ポンプメーカーの用語解説では、軸封部を形成してグランドパッキンやメカニカルシールを収める部品をスタフィングボックスと呼んでいます。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)は、揚水用ポンプ(横形)と冷温水ポンプの軸封をパッキンまたはメカニカルシールとし、揚水用ポンプ(立形)の軸封はメカニカルシールとしています。メカニカルシールの摺動部は、超硬合金・セラミック・カーボンを組み合わせたもので、潤滑油が搬送する水に混ざらない構造とするよう定めています。
メカニカルシールの仕組みと漏れの見方

メカニカルシールは、軸と一緒に回る回転環と、ケーシング側に固定された固定環の2つの平らな面を押し付け合って密封する部品です。ポンプメーカーの資料は、運転中はシール面にポンプ内の水が入り込んで薄い水膜をつくり、これが面を潤滑していると説明しています。水膜ができないまま乾いた状態で回ると、シール面が異常に高温になり、周りのゴムの劣化やシールリングの損傷を招いて水漏れの原因になります。空運転を防ぐ保護装置はポンプの空運転防止と保護装置の選び方で解説しています。
同じ資料が示す漏れの見方は次のとおりです。
- 清水の場合、正常なときの微少な漏れは蒸発して目視では確認できず、ほとんど漏れていない状態になる
- 目視できるほど漏水(滴下)している状態は異常で、漏れた水が軸受に入るとグリスの劣化や軸受の錆を経て、異常音や焼損の原因になる
- 新品のシールは運転初期に漏れることがあり、摺動面がなじむまでの時間(通常20〜30時間程度)を過ぎてから正常か異常かを見極める
- 停止中は摺動面に高い押込み圧力がかかると微少な漏れが目に見えることがあり、これも正常な漏れとされている
初期の漏れや停止中の漏れが問題になる場所では、ドレンを設けることが案内されています。
グランドパッキンの仕組みと漏れの見方
グランドパッキンは、断面が角形のひも状のパッキンをスタフィングボックスに詰め込み、パッキン押さえで締めて軸に密着させる方式です。メカニカルシールと違い、軸封部から出る水を排水する前提で据え付けます。公共建築工事標準仕様書は、軸封がグランドパッキンのポンプでは、ポンプの基礎の周囲に排水溝と排水目皿を設け、呼び径25以上の排水管で最寄りの排水系統へ排水するよう定めています。温水ポンプと冷却水ポンプでグランドパッキンを使う場合は、間接排水とします。
漏れが増えたときは、まずパッキン押さえの増し締めで調整します。ポンプメーカーは、増し締めしても著しく水漏れする場合を交換の判断基準としています。
交換の目安
ポンプメーカーは、自動給水装置に使うポンプの部品について、取替の判断基準と周期の目安を次のように示しています。
| 部品 | 取替の判断基準 | 取替周期の目安 |
|---|---|---|
| メカニカルシール | 1秒間に1〜2滴程度の漏れを確認したら取替 | 1〜2年 |
| グランドパッキン類 | 増し締めしても著しく水漏れしたら取替 | 1年 |
| 軸受 | 加熱したり異音が発生したら取替 | 2〜4年 |
これらの周期は水質や使用状況、環境によって異なるとされています。表はリビングアメニティ協会とベターリビングが発行する給水ポンプシステムの保守管理の資料からの引用とされ、空調用ポンプについても、日本産業機械工業会の資料から同じ周期の目安が示されています。交換の時期は、周期の目安だけでなく、点検で確かめた漏れの量や軸受の状態を判断基準に照らして決めます。
出典: 川本製作所 保守・点検サービス
交換するときの注意
メカニカルシールの交換では、摺動面の扱いが仕上がりを左右します。ポンプメーカーの取扱いの注意では、次の点が挙げられています。
- 摺動面は柔らかく清潔な布で拭き、ちりや異物を取り除く
- 固定環は裏表を間違えずに挿入し、傾きや欠けがないか、ゴムのガスケットがめくれていないかを確かめる
- 回転環は、主軸と挿入治具を清潔な布で拭き、油を薄く塗ってから挿入する(飲用水の場合は安全性に適した油を使う)
漏れが軸受まで達していた場合は、軸受の状態もあわせて確かめます。
出典: 川本製作所 FAQ メカニカルシール取り扱い時の注意事項
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