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TIG溶接配管の品質検査が重要な理由
TIG溶接は高い精度と美しいビードが得られる一方、適切な施工・管理がなければ外観は良くても内部欠陥が存在することがあります。配管は圧力容器であり、漏水・破裂の重大事故につながるため、溶接品質の確保は絶対条件です。
JIS Z 3923(ろう接・溶接継手の非破壊検査)やJIS B 8267(小口径配管用ろう付継手)など、配管溶接には業界標準が定められており、これらに基づいた品質検査を実施することが法定要件となっています。施工後の一次・二次検査、さらには定期保守時の外観診断まで、継続的な品質確認が業者に求められています。
目視検査の実施方法と主要チェック項目

ビード外観の確認
TIG溶接の品質をまず判断するのがビード外観検査です。良好なビードは:
- 色合い: ステンレスの場合、金色~虹色(酸化膜が薄い状態)。黒色やグレーは過熱・酸化が進んだサイン
- 表面均一性: ビード波が規則的で、溶融金属の粗さがない
- 成形: コンケーブ(内湾)やコンベックス(外湾)が適度で、肉厚が一定
- スパッタ: 微小な飛び散りがないか、あってもすぐに取り除ける程度
黒色ビードが見られる場合、ガスシールドが不十分だった(雰囲気が混入した)可能性があり、内部酸化が疑われます。このような場合は、磁粉探傷検査(MT)や超音波検査(UT)による確認が必要です。
寸法測定と幾何公差
配管溶接部の寸法測定は、接合部の機械的強度を確保するために重要です:
- 溶接長: 設計で指定された長さが確保されているか
- のど厚さ(喉厚): 隅肉溶接の場合、規格で定めた最小厚さ以上か(一般的には3~5mm以上)
- 肉厚均一性: ビードが細くなる部分(burn-through)がないか
- 余盛り: 溶接部の盛り上がりが過度でないか(余盛り高さが指定値の1.5倍以上は不可)
銅管・ステンレス管・炭素鋼いずれの場合も、ノギスやゲージを用いた測定を施工後に実施します。実測値が設計値からの許容差を外れた場合、該当部位の補修(再溶接)が必要になります。
代表的な溶接欠陥の見分け方
ビード割れ(Cold Crack・Hot Crack)
ホットクラックは溶融金属の凝固中に冷却応力で発生し、コールドクラックは冷却後に現れます。
- 外観: 黒くて細い線状または樹枝状の割れ。X線透視では白い筋として映る
- 発生部位: ビード中央部(コールドクラック)、またはビードと母材の境界(ホットクラック)
- 原因: 電流過大、冷却速度が急速、ステンレス厚板での拘束応力、低温環境での施工
- 対策: 急冷を避けるため、施工後は予熱・徐冷が重要。また、ステンレスの場合は電流を適正に設定し、裏波処理(TIG背面溶接)で圧縮応力を緩和
割れは非破壊検査で必ず検出する必要があります。発見された場合は該当部位の全溶接部を再検査し、割れを完全に除去してから再溶接します。
アンダーカット(Undercut)
溶接部が母材より凹んだ状態で、応力集中が生じます。
- 外観: ビードの両端に沿って細い溝が見える
- 発生原因: TIG溶接では電流が過大、トーチ角度が不適正、移動速度が速すぎた場合に発生
- 機械的強度への影響: アンダーカット深さが0.5mm以上の場合、疲労強度が低下。圧力配管では許容不可
- 検査基準: JIS Z 3923では、最大深さ0.5mm以下、合計長さが溶接長の10%以下なら許容
アンダーカットが許容値を超えた場合、該当部位をグラインダで平滑化し、再度TIG溶接で盛り足しが実施されます。
ポロシティ(気孔・ポア)
溶接金属内に空気が取り込まれた状態です。
- 外観: 表面にピンホール状の小孔が散在。内部欠陥の場合は外見では判断不可
- 発生原因: バッキングガス不足、クリーニング不十分、湿度が高い環境での施工、電流が不安定
- 機械的強度への影響: 単発の小さな気孔なら許容されることもありますが、連続的なポロシティは強度低下につながります
- 検査基準: JIS Z 3923では、直径1mm以上の気孔が3個以上連続して見られる場合は不可
X線透視検査で内部ポロシティを診断します。許容値を超えた場合、その溶接部は完全に除去されて再溶接されます。
オーバーラップ(Overlap)
ビードが母材に重なり、融合していない部分が残った状態です。
- 外観: ビード端が母材を覆っているが、その下が融合していない
- 発生原因: トーチ操作が不正確、移動速度が速すぎた場合に発生
- 機械的強度への影響: 非常に高い。オーバーラップ部は層状に剥離し、破裂のリスクが高い
- 検査: 磁粉探傷検査(MT)で容易に検出できます
オーバーラップが発見された場合、該当部位は完全に除去されて再溶接されます。圧力配管では絶対に許容不可。
スパッタ(Spatter)と金属飛び散り
TIG溶接は元来スパッタが少ないとされていますが、不安定な溶接条件下では発生することがあります。
- 外観: ビード周辺に小粒の溶接金属が付着
- 影響: スパッタ自体の機械的強度への直接影響は小さいですが、付着した異物が応力集中点となったり、清掃漏れで腐食の起点となることがあります
- 対処: 施工直後に除去するのが原則。ワイヤブラシやグラインダを用いて清掃
非破壊検査の種類と判断基準
目視検査で問題がなくても、内部欠陥を確認するには非破壊検査が必須です。
X線透視検査(Radiography, RT)
もっとも一般的な配管溶接検査法です。
- 検査内容: X線を透過させて、内部の気孔・割れ・融合不良を映像化
- 実施基準: JIS Z 3923では、圧力配管の場合、全溶接部または抜き取り検査(通常10~20%)が実施されます
- 判定基準: 気孔・割れは一般的に許容不可。ポロシティは個数・サイズで判定
- 費用: 1溶接部あたり5,000~15,000円(長さ・複雑さに依存)
磁粉探傷検査(MT: Magnetic Particle Inspection)
鉄系金属(炭素鋼)の表面・近表面欠陥を検出。
- 検査内容: 磁力で鋼材を磁化し、表面に磁性粉を散布。欠陥部に磁粉が集中し、欠陥形状が可視化
- 検出対象: 割れ、アンダーカット、オーバーラップ、ラップなど、表面に出ている欠陥
- 利点: 迅速・低コスト(1溶接部あたり2,000~5,000円)
- 限定: ステンレス・銅など非磁性材には適用不可。表面欠陥のみ検出(内部欠陥は検出困難)
超音波検査(UT: Ultrasonic Testing)
あらゆる金属材料の表面下欠陥を検出。
- 検査内容: 超音波パルスを材料に送信。内部欠陥で反射した波を受信・解析
- 検出対象: 内部の気孔、割れ、融合不良、組織欠陥
- 利点: X線と異なり放射線不要。操作者技量により精度が左右される
- 実施基準: 高リスク配管(高圧・高温・腐食環境)での採用が増加中
- 費用: 1溶接部あたり8,000~20,000円
検査記録と品質管理の実務
配管工事の品質保証のため、以下の記録を作成・保管することが法定要件です。
- 施工記録票: 溶接士の資格、使用材料、電流・電圧・ガス流量、施工日時
- 試験成績書: 非破壊検査(X線・MT・UT)の結果、不適合部位と補修内容
- 竣工図面: 溶接部位の図面標記、設計変更箇所の記録
- 材料証明書: 使用した溶接棒・ガス・母材の品質証明(ミルシート等)
これらの記録は工事完了後、管理者に引き継がれ、定期保守時に参照されます。
施工現場での品質管理のポイント
- 施工環境: 風速3m/s以上の環境でのTIG溶接は避ける(シールドガスが吹き飛ぶ)
- 温度管理: 気温が5℃以下の環境での施工は、急冷によるコールドクラックリスクが高まるため要注意
- 湿度管理: 相対湿度85%以上は、ポロシティ増加リスク。施工前に母材表面の水分・油分を完全に除去
- 予熱・徐冷: 厚板・ステンレス・高炭素鋼の場合、予熱(100~300℃)と施工後の徐冷(保温)が必須
- 人的要素: 溶接士の資格確認(WES・JIS規格の合格証)、疲労度チェック。連続8時間以上の施工は避け、定期的に休息を取る
まとめ
TIG溶接配管の品質確保は、施工技術だけでなく、事前検査・施工後検査・定期保守の三段階での確認が不可欠です。外観が良好でも内部欠陥がある可能性が常にあるため、非破壊検査の実施と記録管理を徹底することが、長期的な漏水・破裂事故防止につながります。
森工業では、JIS認定の溶接士による施工と、X線・磁粉探傷検査による品質確認を標準として実施しており、安全で長寿命な配管設備の構築をサポートしています。配管の品質に不安がある場合は、診断・補修のご相談ください。
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