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アルミ溶接でタングステン電極が「消耗品」になる理由
スチールやステンレスのTIG溶接とは異なり、アルミニウムのTIG溶接はAC(交流)電流を使用します。このAC特性が、タングステン電極の状態管理を「アルミ専用スキル」にしている根本的な理由です。
DCEN(直流正極性)で溶接するスチールの場合、電極はマイナス(陰極)に接続されるため、イオン衝撃による加熱は溶接母材側に集中します。電極への熱負荷は比較的軽く、細く尖らせた電極先端が安定を保ちます。
一方、アルミのAC溶接では電流が正と負を繰り返し、電極がプラス(陽極)になる半サイクルにイオン衝撃が電極先端に集中します。この熱によって電極先端が溶融して丸くなり、「玉(ボール)」を形成するのがアルミTIG溶接の正常な状態です。この玉の大きさと形状が、アーク安定性と溶接品質を直接左右します。
つまりアルミ溶接では、電極をいかに適切な玉形状に保つかが技術の核心となります。
電極径と電流値の適正範囲早見表

アルミTIG溶接における純タングステン電極(JIS記号:W、緑バンド)の電流適正範囲を下表に示します。純タングステンはアルミAC溶接のスタンダードで、玉形成が最も安定しています。
| 電極径 | AC電流適正範囲 | 適用板厚目安 | 玉径の目安 |
|---|---|---|---|
| φ1.0mm | 10〜70A | 0.5〜1.5mm | 電極径の1〜1.5倍 |
| φ1.6mm | 40〜120A | 1.5〜3.0mm | 電極径の1〜1.5倍 |
| φ2.4mm | 100〜200A | 3.0〜8.0mm | 電極径の1〜1.5倍 |
| φ3.2mm | 160〜280A | 6.0〜12mm | 電極径の1〜1.5倍 |
| φ4.0mm | 220〜360A | 10mm〜 | 電極径の1〜1.5倍 |
早見表の使い方のポイント:
電流が適正範囲の下限付近では玉が小さく尖り気味になり、アークが不安定になりやすいです。逆に上限を超えると玉が肥大化して電極先端から垂れ落ち(タングステン落下)、溶融池に取り込まれて溶接欠陥の原因になります。正常な玉径を維持することが、安定した溶接品質の第一歩です。
インバーター溶接機の場合、AC周波数を高く設定(80〜200Hz)すると陽極半サイクルの時間が短くなり、電極への熱負荷が軽減されます。同じ電流値でも玉が小さくなり、アークが集中してビード幅を絞れる利点があります。ただし酸化皮膜クリーニング効果もやや低下するため、母材の清潔度が要求されます。
配管溶接の現場では、冷媒配管(肉厚1〜2mm)にはφ1.6mmまたはφ2.4mm電極を80〜150Aで使用するケースが多く、アルミ製工業配管(肉厚3〜6mm)ではφ2.4mmまたはφ3.2mmを150〜250Aで使用するのが一般的です。
電極先端の「正常な玉」と「異常形状」の見分け方
アルミTIG溶接後の電極先端状態を確認することは、次の溶接の品質予測に直結します。
正常な玉(継続使用可):
- 電極軸に対して同心円状に丸まっている
- 表面が滑らかで光沢がある(シルバーグレー)
- 径が電極径の1〜1.5倍以内に収まっている
- 玉の下部(電極との境界)がくびれていない
要再生の異常形状:
*大径玉(電極径の2倍超)*:電流過多または電極径不適合。アークが暴れて溶接ビードが乱れる原因になります。
*偏玉(偏心した球)*:シールドガス不足、風の影響、または電極のチャックへの組み付け角度不良。アークが一方向に流れ、溶け込みが不均一になります。
*黒い玉(酸化した球)*:後シールド不足による冷却時の酸化。電極性能は残っていることも多いですが、ガス遅延停止の時間を長くして再度試みます。
*タングステン欠け・亀裂*:冷却時に水が触れた(水冷トーチの水漏れ)、または突然の電流急増による熱衝撃。この場合は電極を交換する必要があります。
汚染電極の再生テクニック3選
アルミ溶接の現場では、電極が汚染されても捨てずに再生して使うのがプロの習慣です。代表的な再生手法を解説します。
① バーンオフ(アルミ捨て板での焼き直し)
最も基本的な電極再生法です。溶接に使用しないアルミ捨て板(端材)に対してアークを発生させ、汚染物質を焼き飛ばしつつ電極先端を再度整形します。
手順:適正電流の80〜90%で捨て板にアークを数秒〜十数秒あて、電極先端の黒ずみや異物が消えて均一な玉が再形成されたら本溶接へ移行します。溶接機によっては「バーンオフ機能」として自動化されているものもあります。
② グラインダーによる先端除去と再整形
電極が重度に汚染(アルミ付着、酸化皮膜固着)している場合は、グラインダーまたはダイヤモンドホイールで汚染部分ごと電極先端を切除します。切除後の電極先端は鋭利に整形されますが、アルミTIG溶接を開始すると再び玉が形成されます。切除量が多い場合は電極長が短くなるため、トーチへの組み付け長さを再調整してください。
③ 電極の反転利用(両端使い)
φ2.4mm以上の電極は両端が使用可能です。一方の端が劣化したら反転して、もう一方の端から使い始めます。電極コストの削減に有効で、現場では当たり前のように行われています。ただし電極を反転する際は必ずシャーシアースを外してから行い、感電事故を防いでください。
電極管理の現場ルール
アルミ専用電極と鉄・ステンレス用電極を混在させるのは厳禁です。誤ってCe(セリウム入り、灰色バンド)やLa(ランタン入り、金バンド)の電極でアルミのAC溶接を行うと、希土類添加タングステンは純タングステンに比べて融点が高く玉が形成されにくく、先端が分裂してアークが乱れます。電極はケースに「AL用」「Fe/SUS用」と明記して保管し、混用しないよう管理します。
電極径の選択を迷う場合は「母材板厚の1.0〜1.5倍の電極径(mm)を電流の出力Aに置き換えた数値を目安に電流を設定する」という経験則も参考になります。例えば板厚2.0mmのアルミ管の場合、2.0×(50〜80)=100〜160Aが目安の範囲となり、φ2.4mm電極の適正範囲100〜200A内に収まります。
電極管理のまとめと注意事項
アルミTIG溶接では、電極の状態管理が溶接品質の維持に直結します。溶接前・溶接後に電極先端の形状を確認し、異常が見られたら早めに再生するのが現場のルールです。また、アルミ専用電極と鉄・ステンレス用電極を混在させると品質トラブルの原因になるため、保管ケースに「AL用」「Fe/SUS用」と明記して管理することを徹底してください。
電極径に迷う場合は「母材板厚(mm)×50〜80 = 目安電流(A)」という経験則が参考になります。例えば板厚2.0mmのアルミ管であれば100〜160Aが目安となり、φ2.4mm電極の適正範囲内に収まります。
森工業のアルミ・配管溶接工事
森工業では、アルミ配管・スチール配管・ステンレス配管のTIG溶接を含む各種配管工事に対応しています。食品プラント・空調設備・化学薬品配管など特殊材質の溶接工事もお気軽にご相談ください。宮城県・仙台市を中心に幅広い実績があります。
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