
中古の事業用建物・設備を取得したとき、耐用年数はどう決まるのか
賃貸ビル、店舗、工場など、新築ではなく中古の事業用不動産や設備を取得するケースは珍しくありません。中古資産を減価償却する場合、新品の法定耐用年数をそのまま適用するのではなく、その資産がすでにどれだけ使用されてきたかを踏まえた「簡便法」という耐用年数の見積り方法を使えることがあります。
中古物件・中古設備の取得を検討している事業者・不動産オーナーにとって、この簡便法の考え方を理解しておくことは、取得後の減価償却費の見積り、ひいては投資判断そのものに関わる重要なポイントです。本記事では、国税庁が示す簡便法の計算方法と、建物附属設備ごとの考え方を整理します。
簡便法とは何か:中古資産向けの耐用年数の見積り方法

法人税法上、中古資産を取得した場合、原則としては新品と同じ法定耐用年数を使うか、実際の使用可能期間を見積るか(見積法)を選択できますが、見積りが困難な場合には「簡便法」という簡易な計算式で耐用年数を算定することが認められています(国税庁 タックスアンサー No.5404)。実務上は、見積法よりも簡便法が使われることが多いとされています。
簡便法の計算式は、その中古資産が法定耐用年数の全部を経過しているか、一部を経過しているかによって次のように分かれます。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20%
簡便法の計算例
具体的な数字で見てみます。例えば法定耐用年数30年の建物附属設備を、築10年の時点で中古取得した場合(法定耐用年数の一部を経過しているケース)は、次のように計算します。
(30年 − 10年) + 10年 × 20% = 20年 + 2年 = 22年
このように、経過年数がそのまま耐用年数から差し引かれるのではなく、経過年数の20%分を耐用年数に加算し直す仕組みになっている点がポイントです。計算結果に1年未満の端数が生じた場合は切り捨てます。また、計算した年数が2年に満たない場合は、耐用年数は一律で2年とされます。
法定耐用年数の全部を経過している資産(たとえば法定耐用年数15年の給排水設備を築20年で取得した場合)であれば、単純に「15年 × 20% = 3年」が耐用年数になります。
適用時期の制限:取得した事業年度でのみ選択可能
簡便法を使ううえで見落とされがちな重要な制約が、適用のタイミングです。簡便法による耐用年数の算定は、その中古資産を取得した事業年度においてしか選択できません。取得時に法定耐用年数をそのまま適用して減価償却を開始してしまうと、後の事業年度になってから遡って簡便法に切り替えることはできないとされています。
そのため、中古の事業用建物・設備を取得した際には、取得した事業年度の申告のタイミングで、簡便法を使うかどうかを判断しておく必要があります。この判断を誤ると、本来短くできたはずの耐用年数で長期間にわたり減価償却せざるを得なくなる可能性があるため、取得直後の税務処理が非常に重要になります。
建物附属設備ごとに耐用年数を見積る必要がある
中古の事業用不動産を一括りに「中古の建物」として扱ってしまいがちですが、実務上は建物本体とは別に、給排水設備・空調設備・浄化槽・電気設備などの「建物附属設備」ごとに、それぞれの法定耐用年数を基準として簡便法の計算を行う必要があります。建物附属設備の法定耐用年数は用途によって異なり、例えば給排水設備・衛生設備・ガス設備は15年、冷房・暖房・ボイラー設備は出力等により13年または15年とされています。
つまり、中古物件を一つの資産として扱うのではなく、「建物本体」「給排水設備」「空調設備」「浄化槽」などに区分し、それぞれについて経過年数を踏まえた耐用年数を個別に見積る作業が必要になります。この区分・按分の作業は取得価額の配分方法によっても結果が変わるため、専門的な判断が求められる領域です。
中古物件取得時に設備の劣化状態を把握しておく重要性
簡便法はあくまで税務上の耐用年数の計算方法であり、その資産が実際にあと何年使えるかという物理的な実態とは別の話です。中古の賃貸ビルや店舗、工場を取得する際、給排水設備・空調設備・浄化槽などがどの程度老朽化しているかを事前に把握しておくことは、取得後の設備更新計画やランニングコストの見積りにおいて非常に重要です。
税務上の耐用年数計算だけを見て「まだ〇年使える」と判断してしまうと、実際には老朽化が進んでいて早期の更新工事が必要になり、想定外の追加投資が発生することもあります。中古物件の取得を検討する段階で、配管・給排水・空調設備の劣化状態を実地に調査してもらい、実態に即した更新計画・工事見積を把握しておくことをおすすめします。
中古の事業用建物・設備を取得したときの耐用年数は、簡便法により「法定耐用年数 × 20%」(全部経過)または「(法定耐用年数 − 経過年数) + 経過年数 × 20%」(一部経過)で計算でき、端数切り捨て・2年未満は2年という調整が入ります。この簡便法は取得した事業年度でのみ選択可能という制約があり、建物附属設備ごとに個別の見積りが必要になる点にも注意が必要です。具体的な耐用年数の算定・簡便法の適用可否については、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。
宮城県・仙台エリアで、中古の賃貸ビル・店舗・工場などを取得予定の事業者・不動産オーナーの方へ、取得物件の配管・給排水・空調設備の劣化状態の調査、実態に即した更新計画・工事見積のご相談は森工業まで承っております。
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