
介護施設の給湯設備が一般建物より厳しい理由
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、グループホームなどの介護・福祉施設では、給湯設備に対して一般建物よりも厳格な管理基準が求められます。入居者の多くが高齢者・要介護者であることによる特有のリスクが存在するためです。
やけど(熱傷)リスク 加齢に伴う皮膚の菲薄化や感覚鈍化により、高齢者は熱湯によるやけどを起こしやすくなっています。浴室や手洗い場での給湯温度が高すぎると重篤なやけど事故につながるため、給湯温度の上限管理と温度調節機能付き設備の採用が欠かせません。
レジオネラ属菌のリスク 免疫機能の低下した高齢者では、レジオネラ属菌による肺炎(在郷軍人病)を発症した場合に重症化しやすい特性があります。このため介護施設では、浴槽・シャワーヘッド・給湯配管のレジオネラ対策が欠かせません。
24時間給湯の安定供給 入居者が常時生活する施設では、夜間・早朝を問わず安定した給湯が必要です。給湯機の容量不足や配管のトラブルが直接的な生活への支障につながるため、設備の信頼性と予備能力が重要になります。
給湯設備の種類と選択基準

介護施設の規模や運営形態に応じて、適切な給湯システムを選ぶことが重要です。
中央式給湯システム 施設全体の給湯を一台〜複数台の大型給湯機(ガスまたは電気)で賄う方式です。20床以上の中規模から大規模施設で一般的に採用されています。熱源機器を集中管理でき、メンテナンスが効率的である利点がある一方で、主機器の故障時に施設全体の給湯が止まるリスクがあるため、予備機の設置または二系統化が推奨されています。
局所式給湯システム 各浴室・手洗い場の近くに個別の給湯機(電気温水器・瞬間湯沸かし器)を設置する方式です。小規模施設やグループホームに向いています。一台が故障しても他の設備で代替できる柔軟性がある反面、機器台数の増加に伴いメンテナンス頻度も増加します。
ヒートポンプ式給湯(エコキュート) 2026年現在、省エネとCO2削減の観点から中型・大型のヒートポンプ式給湯機を導入する介護施設が増加しています。電気代削減効果が大きく、施設経営における光熱費抑制に有効です。ただし機器の設置スペースや電力容量の確保が必要な点を事前に確認することが求められます。
湯温管理とやけど防止の設備対策
介護施設での給湯設備には、入居者の安全を守るための温度管理機能が不可欠です。
サーモスタット式水栓・混合弁の採用 手洗い場や洗面所には、設定温度以上のお湯が出ないよう制御するサーモスタット式混合水栓の設置が効果的で推奨されます。一般的には35〜40℃程度に設定され、たとえ給湯管の湯温が高くても自動的に混合されて適温で供給されます。
浴室・シャワーの温度上限設定 介護用浴槽(機械浴)や一般浴室・シャワー室には、給湯温度の上限を設定できる機能を持つ給湯機や混合弁を設置します。厚生労働省の施設基準では特定の数値が定められているわけではありませんが、多くの施設では38〜42℃以下に設定しています。
配管の断熱・保温 長い配管経路では湯温が低下しやすく、適切な保温材の施工が必要です。また給湯管内に水が滞留すると菌が繁殖しやすくなるため、配管の循環化・「給湯循環方式」の採用が有効です。
レジオネラ対策の配管設計と管理
介護施設のレジオネラ対策は、設備設計の段階と日常管理の両面で対応が必要です。
設計段階での対策 レジオネラ属菌は水温20〜50℃の環境で増殖しやすい性質を持ちます。給湯配管は60℃以上の高温で維持し、使用する直前に混合弁で適温まで冷却する方法が推奨されます。また給湯系統内に水が滞留する「デッドゾーン(行き止まり配管)」をなくし、常時循環する配管設計にすることが重要です。
シャワーヘッドはエアロゾル(水の微粒子)を発生させるため、特にリスクが高い部位です。シャワーヘッドを取り外せる構造にして定期的な浸け置き消毒(次亜塩素酸ナトリウム水溶液など)を行うことが有効です。
日常的な水質管理 国土交通省・厚生労働省の「レジオネラ症防止指針」では、入浴施設(浴槽)に対して月1回以上の水質検査(レジオネラ属菌の検査)と定期的な清掃を求めています。介護施設では入居者の安全確保の観点からより高い頻度での管理が推奨されます。
老朽化設備の更新と改修工事
建築後20年以上が経過した介護施設では、給湯機本体・配管・浴室設備の老朽化が深刻化しているケースが多く見られます。給湯機の耐用年数は機種にもよりますが一般に10〜15年程度であり、部品供給が停止した機種は早期の更新が必要です。
改修工事を行う際は、入居者の生活への影響を最小化するための工程計画が重要です。全館断水を避けるため、一部系統ずつ工事する「ゾーニング施工」や、一時的な仮設給水の設置を組み合わせた工法が有効です。
また改修のタイミングで、最新のサーモスタット式水栓や節湯機能付き器具への更新を行うことで、水道代・ガス代の削減と安全性向上を同時に実現できます。
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