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配管工事でTIG溶接が選ばれる理由
配管工事の溶接接合にはTIG(ティグ)溶接・MIG溶接・被覆アーク溶接・ガス溶接など複数の工法がありますが、ステンレス管・銅管・薄肉鋼管などの精密配管にはTIG溶接が最も適しています。
TIG溶接の最大の特徴は、タングステン電極から発生するアーク熱で母材を溶かし、別送りの溶加棒を加える「非消耗電極方式」である点です。アーク柱が安定していて入熱量を細かくコントロールできるため、熱影響部(HAZ)が小さく、歪みや酸化スケールを最小限に抑えられます。
給水管・冷媒配管・蒸気配管など流体品質や耐圧性能が求められる用途では、溶接ビードの内面状態が直接品質を左右します。TIG溶接はビード形状が均一になりやすく、スパッタ(飛散物)もほぼゼロのため内面汚染を防止できます。
TIG溶接の基礎:機器構成と各部の役割

機器構成を正しく理解しておくことは、現場でのトラブル対応力に直結します。
溶接機(電源装置) 交流(AC)または直流(DC)を選択できます。配管溶接では一般的に直流正極性(DCEN:電極マイナス)を使用します。電子が母材側に流れるため入熱が多く溶け込みが深くなります。アルミや一部の非鉄金属はクリーニング効果が必要なため交流(AC)を選択します。
タングステン電極棒 純タングステン(緑色帯)・トリア入りタングステン(赤色帯)・ランタナ入りタングステン(金色帯)などがあります。配管溶接ではランタナ入り(WL-15/WL-20)またはトリア入り(WT-20)が電弧安定性・耐消耗性に優れており、現場での使用頻度が高いです。
シールドガス 溶融金属の酸化を防ぐためアルゴン(Ar)ガスをトーチから流します。高純度アルゴン(99.99%以上)を使用するのが基本で、流量は管径や作業位置に応じて4〜15L/min程度に調整します。
溶加棒(フィラーメタル) 母材の材質に合わせて選択します。SUS304配管にはYF-308、SUS316LにはYF-316Lを使用するのが原則です。
配管別の溶接設定と注意点
ステンレス配管(SUS304/316)
ステンレス配管のTIG溶接で最も重要なのがバックシールド(裏波保護)です。管内面が酸化すると「シュガリング(糖化)」と呼ばれる黒いザラザラした酸化層が形成され、流体汚染や耐食性低下につながります。
バックシールドは、溶接箇所の両端をプラグや水溶性テープで仮封し、管内にアルゴンガスを低流量(1〜3L/min)で充填する方法が一般的です。内部の酸素濃度が0.5%以下になってから溶接を開始するのが理想です。
設定の目安(13A管・肉厚1.5mm):
- 電流値: 40〜60A(DCEN)
- アルゴン流量: 8〜10L/min(シールド側)
炭素鋼配管(SGP・STPG)
一般的な水配管・ガス配管に使用されるSGP(配管用炭素鋼鋼管)は、ステンレスに比べて熱伝導率が高いため、TIG溶接では入熱のコントロールが重要です。溶け落ちや開先の溶け崩れを防ぐため、小径管(50A以下)では予熱なしで問題ありませんが、中径管(100A以上)では20〜50℃の予熱が有効です。
銅配管(医療ガス・冷媒配管)
銅管は熱伝導率が非常に高く、TIG溶接では短時間で溶接を完了する技術が求められます。医療ガス配管(純銅管)では内面清浄度が患者安全に直結するため、水溶性バックシールドガスと高純度アルゴンの併用が推奨されます。
溶接欠陥の種類と現場での防止策
配管TIG溶接で発生しやすい欠陥と、その原因・対策をまとめます。
クレータ割れ 溶接終了時にアークを急停止すると、クレータ部分が急冷されて割れが生じます。アーク停止直前に電流を徐々に絞る「クレータ処理」機能を活用するか、手動で電流を落としながら停止する技術が必要です。
ブローホール(気孔) シールドガス不足、母材・溶加棒の油脂・水分汚染、風の影響で発生します。溶接前に母材とフィラーロッドをアセトン等で脱脂すること、野外作業では風防を設けることが基本対策です。
溶け込み不良 電流値が低すぎる・走行速度が速すぎる・開先角度が狭すぎる場合に発生します。突合せ溶接では開先角度を60〜70°(片側30〜35°)に加工し、ルートギャップを1〜1.5mm確保することで溶け込みが安定します。
スラグ巻き込み 多層盛り溶接でパス間の清掃が不十分な場合に発生します。各パスの溶接後にステンレスワイヤーブラシでスラグと酸化スケールを完全除去してから次のパスに移ることが鉄則です。
現場プロへの道:上達のための実践的なポイント
TIG溶接の習得には反復練習が不可欠です。効率的に上達するためのポイントを紹介します。
姿勢の安定が最優先 配管溶接では水平固定・垂直固定・45°固定など多様な姿勢が求められます。まず平板で一定ビードを安定して引ける水準にしてから管溶接に移るのが近道です。手首を固定して体幹で移動する動作を意識しましょう。
送り棒リズムの習得 TIG溶接は片手でトーチを持ちながら、もう一方の手で溶加棒を間欠的に送り込みます。「プッシュ→停止→プッシュ」のリズムが乱れるとビード形状も乱れます。最初はトーチなしで溶加棒の送り動作だけを繰り返し練習するのも効果的です。
溶接資格の取得で現場の信頼を高める JIS Z 3801(手溶接)やJIS Z 3821(ステンレス鋼)の資格は、配管専門業者として高付加価値工事を受注するうえで重要です。資格取得の準備と技術向上を兼ねた練習を積み重ねましょう。
まとめ
TIG溶接は配管工事の中でも特に高品質が求められる工法で、機器設定・材質対応・欠陥防止の知識が現場力の差を生みます。ステンレスのバックシールド管理、銅管の熱コントロール、各種溶接欠陥への対処法を体系的に習得することで、プロレベルの仕上がりを安定して実現できます。
溶接を含む配管工事全般のご相談、施工実績のご確認はお気軽にお問い合わせください。店舗・テナントビルの設備工事については senkyaku(テナント・店舗物件) もご参照ください。
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