
地震や大規模な断水が発生すると、水道の供給が長期間止まることがあります。工場や商業施設、公共性の高い施設にとって、水が使えない状態は生産活動や営業の継続に直結する問題です。事業継続計画(BCP)を検討するうえで、水の確保をどう位置づけるかは重要な論点のひとつです。法人施設の設備担当者向けに、非常用貯水槽と飲料水確保の考え方を整理します。
BCPにおける水の位置づけ
BCPは、災害や事故が発生した際にも事業を継続、あるいは早期に復旧させるための計画です。電力・通信とあわせて、水の確保は多くの業種で優先度の高いテーマになります。工場では製造工程の冷却水や洗浄水、商業施設ではトイレの洗浄水や飲料水、医療・福祉施設では生命維持に直結する用途など、業種によって必要な水の種類や量は異なります。まずは自施設にとって「止まると困る水の用途」を洗い出し、優先順位をつけることが検討の出発点になります。用途ごとに必要な水質・水量・確保できるまでの許容時間を整理しておくと、後の設備検討がスムーズになります。
非常用貯水槽の選択肢

受水槽方式を採用している施設では、既存の受水槽の容量を見直し、非常時に取り出せる水量を把握しておくことが基本になります。受水槽に非常用の取水口を設置し、断水時に手動でポンプやバケツで汲み出せるようにしておく方法もあります。より積極的な対策としては、飲料水兼用型の耐震貯水槽を新設し、日常的に水を循環させながら非常時にはそのまま飲料水として使える設計にする方法があります。既存設備を活かすか、新たに専用設備を設けるかは、施設の規模や予算、設置スペースによって判断が分かれます。屋外にスペースが確保できる施設では地下埋設型の貯水槽、スペースに制約がある施設では既存受水槽の改修という選択肢を組み合わせて検討するのが現実的です。
導入を検討する際のポイント
非常用の水源を検討する際は、次のような観点を確認しておくと計画が立てやすくなります。
- 施設内で最低限確保したい水量と、想定する断水期間
- 受水槽・貯水槽の設置スペースと構造上の制約
- 飲料水として使う場合の水質管理・定期的な水の入れ替え方法
- 停電時にもポンプで汲み上げられるか(非常用電源との連携)
- 従業員・利用者への周知方法と、実際に使う際の手順
これらは設備単体で解決できるものではなく、施設の運用ルールとあわせて検討する必要があります。設備担当者だけでなく、総務・防災担当部門も交えて方針を固めておくと、実際の非常時に混乱が生じにくくなります。
日常管理と訓練の重要性
非常用の設備は、設置して終わりではなく、日常的な管理があってはじめて機能します。飲料水兼用型の貯水槽は水の滞留による水質悪化を防ぐため、一定期間ごとに新しい水と入れ替える運用が必要です。また、実際に断水を想定した取水訓練を行っておくことで、いざという時に迅速に対応できる体制を整えられます。設備は正常でも、使い方を知っている担当者がいなければ機能しないという点は見落とされがちです。訓練は年に一度でも、実施した記録を残しておくことで、担当者が異動した場合の引き継ぎにも役立ちます。
既存設備の点検状況を出発点にする
BCPの観点で新しい設備投資を検討する前に、まずは既存の受水槽・配管の点検状況を確認しておくことをおすすめします。日常点検で不具合が見つかっていないか、点検記録がきちんと残っているかを確認するだけでも、非常時の信頼性は大きく変わります。老朽化した受水槽をそのままにして非常用設備だけを追加しても、根本的な安心にはつながりません。既存設備の状態を把握したうえで、不足している部分から優先的に手を入れていく進め方が現実的です。
まとめ
非常用貯水槽やBCPの水対策は、大がかりな設備投資をイメージされがちですが、まずは自施設の給水設備の現状を把握し、不足している部分を洗い出すところから始められます。既存の受水槽・給排水設備の点検や改修に関するご相談は、当社のお問い合わせフォームより承っております。
平時からの備えとしての設備更新
非常用の水設備は、平時の設備更新のタイミングと切り離して考える必要はありません。受水槽の老朽化更新、給水管の更新、ポンプの入れ替えといった通常の設備投資の機会に、耐震性や非常時の取水性を考慮した仕様を選んでおくことで、追加のコストを抑えながらBCP対応を進められます。工事の予算組みの段階から「非常時にどう使えるか」という視点を加えておくことが、無理のない防災対策につながります。
業種ごとに異なる優先順位
同じ非常用貯水槽でも、飲食店であれば厨房の洗浄水と手洗い用の水、製造業であれば冷却水や洗浄工程に使う水、福祉施設であれば入浴や洗濯に使う水というように、業種によって優先すべき用途は異なります。すべての用途を同時に満たそうとすると設備投資が過大になりがちなため、まずは事業継続に直結する用途に絞って対策を検討し、余力があれば対象を広げていく進め方が現実的です。
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