
老朽化した配管・空調設備を撤去・更新するときの税務上の論点
事業用の建物・施設で使われている配管・給排水・空調・給湯設備は、年数が経過すると老朽化し、更新工事が必要になります。旧設備を撤去して新しい設備に入れ替える際、施工面だけでなく、旧設備の帳簿上の扱い(除却損)、撤去費用の扱い、新設備の資産計上という、いくつかの税務上の論点が発生します。
工場、店舗、事務所ビル、賃貸物件などで設備更新を検討している事業者・不動産オーナーの方に向けて、本記事では固定資産除却損の基本的な考え方と、更新工事における資産計上の整理を解説します。
固定資産除却損とは何か

事業用に使っていた固定資産を廃棄・撤去したとき、その資産の帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を差し引いた未償却残高)から、処分によって得られた金額(スクラップとしての売却額など)を差し引いた金額を、「固定資産除却損」として損金算入できます。
例えば、旧式の給排水設備がまだ帳簿上に残存簿価を持っている状態で撤去した場合、その残存簿価相当額(処分価額があればそれを控除した額)がその事業年度の損失として計上されることになります。また、設備を取り壊す・撤去するために要した費用(解体費用・撤去費用等)も、原則として損金に算入されます。
更新のケース:旧設備の除却損と新設備の資産計上はセットで考える
配管・空調設備等を更新する場合、典型的には次の2つの処理が同時に発生します。
- 旧設備:撤去した旧設備の未償却残高を固定資産除却損として損金算入(処分価額があれば控除)
- 新設備:新たに設置した設備は資本的支出として資産に計上し、法定耐用年数にわたって新たに減価償却を開始する
見落とされがちなのは、更新工事の請求書・見積書が「工事一式」としてひとまとめになっていると、旧設備の除却損に相当する部分と、新設備の資産計上に相当する部分の区別がつきにくくなる点です。除却損として損金算入できる金額と、資産計上して減価償却すべき金額を正しく区分するためには、旧設備の撤去費用・処分価額と、新設備の設置費用が内訳としてわかる書類が重要になります。
有姿除却という考え方
固定資産除却損は、実際に解体・撤去して物理的に処分した場合だけでなく、一定の要件を満たせば、解体・撤去をしていない状態でも計上できる場合があります。これを「有姿除却」と呼びます。
有姿除却が認められるのは、その資産を今後の事業の用に供しないことが明らかであり、かつ解体・撤去しても実質的な価値がない(スクラップとしての価値以上のものが見込めない)といった要件を満たす場合とされています。例えば、老朽化した設備を新設備に切り替えた後も旧設備がそのまま建屋内に残置されているようなケースで、実質的に使用しておらず今後も使用の見込みがないと判断できるのであれば、有姿除却の対象になりうる場合があります。ただし、この要件の該当性判断は個別性が高く、単に「使っていない」というだけでは認められるとは限りません。
修繕費か資本的支出かの区分にも留意する
設備更新の工事内容によっては、そもそも旧設備を全面的に除却して新設備を計上するのか、それとも既存設備の一部を補修・交換する「修繕」として処理するのかという、そもそもの区分の問題も生じます。原状回復や維持のための工事は修繕費(全額その事業年度の損金)として扱われる一方、性能の向上や耐用年数の延長を伴う工事は資本的支出として資産計上されるのが基本的な考え方です。実務上は形式基準(一定金額以下や周期的な修繕は修繕費とできる等)も存在しますが、この区分は工事内容によって個別に判断される部分が大きく、本記事では深掘りしません。設備更新を計画する段階で、修繕なのか全面更新(除却+新設)なのかを整理し、税理士に相談しておくことをおすすめします。
よくある誤解:「壊れていないものを除却できない」わけではない
現場の感覚として、「まだ壊れていない・動いている設備を除却損として計上するのはおかしいのでは」と感じる方もいらっしゃいますが、税務上の除却損は物理的な故障の有無だけで判断されるものではありません。老朽化により更新を決定し、今後事業の用に供さないことが明らかであれば、たとえ稼働自体は可能な状態であっても、除却損の対象となりうる場合があります(有姿除却を含む)。逆に、単に「古くなったから」という理由だけで安易に除却損を計上できるわけでもなく、要件の当てはめは個別の実態次第です。除却損の計上可否、有姿除却の該当性、修繕費か資本的支出かの区分については、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。
老朽化した配管・給排水・空調・給湯設備等を撤去して新設備に更新する際は、旧設備の未償却残高を固定資産除却損として損金算入し、撤去費用も損金算入できる一方、新設備は資本的支出として資産計上し新たに減価償却を開始するのが基本的な整理です。実際に解体しない場合でも要件を満たせば有姿除却が使える場合があり、修繕費との区分も工事内容によって変わります。これらの適用可否は個別判断であり、本記事の内容は一般的な制度の解説にとどまります。
宮城県・仙台エリアで、事業用建物・施設の老朽化した配管・給排水・空調・給湯設備等の撤去・更新工事、および除却対象・新設資産・撤去費用の内訳がわかる工事明細の作成については、森工業にご相談ください。
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