
配管の法定耐用年数15年は税務上の年数
賃貸アパートやマンションを持っていると、「給排水設備の法定耐用年数は15年」と聞いて、15年で配管を替えなければならないのか迷うことがあります。法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表で資産の種類ごとに定められた年数で、減価償却費の計算に使います。建物の給排水の配管は建物附属設備の「給排水又は衛生設備及びガス設備」に当たり、耐用年数は15年です(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一(e-Gov 法令検索))。
国税庁は、減価償却資産の取得に要した金額は取得した時に全額を経費にするのではなく、使用可能期間にわたって分割して必要経費にしていくものと説明しています。平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備の償却方法は定額法です(国税庁 No.2100 減価償却のあらまし)。
つまり15年は、費用を何年に分けて経費にするかを決めるための年数で、配管が15年で使えなくなることを意味しません。15年を過ぎても問題なく使える配管もあれば、水質や使い方によってはそれより前に不具合が出る配管もあります。税務の年数と、現物の傷み具合は分けて考えます。
更新時期の目安として使える公的資料

配管を実際に替える時期の目安として公的資料に示されているのが、国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)にある修繕周期の例です(国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン)。給排水まわりの主な項目は次のとおりです。
| 工事項目 | 修繕周期の例 |
|---|---|
| 給水管 | 更生 19〜23年・取替 30〜40年 |
| 排水管 | 更生 19〜23年・取替 30〜40年 |
| ガス管 | 取替 28〜32年 |
| 給水ポンプ | 補修 5〜8年・取替 14〜18年 |
| 貯水槽 | 補修 12〜16年・取替 26〜30年 |
この表を読むときは、次の点に注意が要ります。
- 分譲マンションの共用部の例: ガイドラインは主に区分所有者が住む中高層のマンションを対象にしています。賃貸を目的としたマンション(投資用マンション等)にも使えるとしていますが、木造アパートなど対象と違う建物にそのまま当てはめるものではありません。
- 材質別の年数ではない: 給水管・排水管という区分の例で、管の材質ごとの寿命を示したものではありません。
- 調査・診断で見直す前提: 修繕周期はマンションの仕様・立地条件等に応じて設定し、見直しの際は劣化状況の調査・診断の結果に基づいて設定する必要があるとされています。
表の「更生」は、管を取り外さずに内面の錆や付着物を取り除き、樹脂系の塗料などで内面を覆って機能の回復と延命を図る工事です。仙台市水道局の施行要領は、給水装置の更生工事の対象を金属管としています(仙台市水道局 給水装置工事施行要領)。
管の種類ごとの劣化の現れ方
物件にどの管が使われているかで、注意すべき劣化の形が変わります。仙台市水道局の給水装置工事施行要領の記述をもとに、給水管の主な例をまとめます(仙台市水道局 給水装置工事施行要領)。
- 亜鉛めっき鋼管: 内部にスケール(赤さび)が付きやすく、年月とともに管の断面が小さくなって水の出が悪くなります。この場合は管の取替えが必要とされています。
- 硬質塩化ビニルライニング鋼管: 内外の防食面が傷つくと腐食しやすく、電食への配慮も要ります。
- 銅管: 耐食性に優れますが、管が薄いのでくぼみを付けない扱いが要ります。
- 硬質ポリ塩化ビニル管: 腐食しにくい一方、熱・紫外線・有機溶剤に弱く、表面の傷で強度が下がります。
- 架橋ポリエチレン管・ポリブテン管: さや管ヘッダー方式の給水管・給湯管に使われます。熱による膨張破裂のおそれがあり、配管に注意が要ります。
入居者からの申告も劣化を知る手がかりです。同要領は、赤褐色の水は鋳鉄管や鋼管のさびが流れ出たもので、常に出る場合は管種の変更などの措置が必要としています。朝の使い始めの水の金気味・渋みは、給水管に鉄・銅・亜鉛などの金属を使っていると出ることがあります。材質ごとの劣化の特徴は配管材料の耐用年数を一律に決められない理由|交換時期の判断と材質別の劣化の現れ方でも解説しています。
点検と更新の進め方
賃貸物件で配管の更新を計画するときは、次の順で進めると判断しやすくなります。
- 竣工図や設備台帳で、管の種類・敷設時期・過去の修繕履歴を確かめる(図面が無ければ、露出部の確認や抜管調査で管の種類を確かめる)
- 入居者からの赤水・水圧低下・漏水・排水不良の申告を、部屋と系統ごとに記録する
- 露出部やパイプスペースを目視し、必要に応じて抜管調査や管内カメラで内面の状態を確かめる
- 症状の出ている系統や、漏水したときの被害が大きい系統から、部分補修・更生・取替えを決める
工事の時期のまとめ方も大切です。国土交通省のガイドラインのコメントは、修繕工事を集約すると仮設の設置費用が軽減できるといった経済的なメリットがある一方、集約し過ぎると修繕積立金が一時的に不足することにもつながると注意しています(国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン)。賃貸物件では断水の時間や室内に入る工事の日程を入居者と調整する必要もあるため、空室の時期や内装の改修と合わせて計画する方法もあります。
更新費用は修繕費か資本的支出か
配管の修理・更新に使った費用は、税務上、その年の経費にできる「修繕費」と、減価償却していく「資本的支出」に分かれます。区別は修繕や改良という名目ではなく、実質で判定します(国税庁 No.1379 修繕費とならないものの判定)。
- 修繕費: 通常の維持管理や修理、原状回復のための支出
- 資本的支出: 資産の使用可能期間を延ばす部分や、価値を高める部分の支出。部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合は、通常の取替えの金額を超える部分がこれに当たる
金額や周期による目安もあります。1つの修理・改良などの金額が20万円未満のとき、またはおおむね3年以内の周期で行われるものであるときは、修繕費とすることができます。資本的支出か修繕費か明らかでない金額は、60万円未満のとき、またはその資産の前年末(法人は前事業年度終了の時)の取得価額のおおむね10%相当額以下のときは、修繕費とすることができます(国税庁 No.1379・法人は国税庁 No.5402)。
20万円以上だからといって自動的に資本的支出になるわけではありません。資本的支出とされた金額は、減価償却の方法で各年の必要経費に算入します。配管の全面的な更新は金額が大きく、区分の判断が分かれることもあるため、見積書で撤去・新設・補修の内訳を分けてもらい、税理士や税務署に確認しておくと安心です。建物附属設備全体の考え方は建物附属設備の耐用年数と減価償却|給排水設備15年・電気設備の実務で整理しています。
修繕計画への組み込み方
国土交通省のガイドラインは、長期修繕計画の計画期間を30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とし、計画は5年程度ごとに見直すとしています(国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン)。分譲マンションの管理組合向けの考え方ですが、賃貸物件のオーナーが自分で修繕の計画を持つときにも参考になります。
- 配管の種類・敷設時期・修繕履歴を一覧にしておく
- 修繕周期の例を当面の目安に置き、点検の結果で時期を前後させる
- 給水管・排水管・ガス管の工事を、外壁や内装の工事と合わせられるか検討する
- 費用は実際に見積りを取って計画に反映し、定期的に見直す
森工業へのご相談
森工業は、賃貸物件の共用部をはじめ、法人・事業者様の建物の給排水管・ガス管などの改修・更新工事を承っています。現場調査からお見積り、施工、完了検査まで一貫して対応し、現場調査・お見積りは無料です。「どの配管から更新すべきか」「修繕計画に配管の更新を組み込みたい」といった検討段階のご相談も、お問い合わせフォームよりお寄せください。対応エリアは宮城県全域です。
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