
食品施設の配管材料に求められる条件
食品工場・食品加工施設・飲食店の厨房では、配管が直接または間接的に食品・飲料水と接触する可能性があります。そのため、一般の建築用配管材料とは異なる「衛生的安全性」の基準が求められます。
具体的には以下の条件が配管材料に求められます。
- 溶出安全性:管材から有害物質(重金属・可塑剤・添加剤など)が食品・水に溶出しないこと
- 耐薬品性:洗浄・消毒に用いる薬品(次亜塩素酸ナトリウム・アルカリ洗剤・酸性洗剤など)に耐えること
- 耐熱性:熱水洗浄・蒸気殺菌(SIP:定置蒸気殺菌)に耐える温度性能
- 清掃性:内面が平滑で汚れ・細菌が付着・繁殖しにくいこと
- 耐久性:頻繁な洗浄・温度変化・物理的衝撃に長期間耐えること
主な衛生配管材料の種類と特徴

ステンレス鋼管(SUS316・SUS304)
食品工場の生産ラインや医薬品・化粧品製造施設で最も広く使われる衛生配管材料です。
SUS304(18Cr-8Ni)
一般的なステンレス鋼管。耐食性・耐熱性に優れ、食品用途に適しています。ただし塩分濃度の高い環境や海水・塩素系薬品では孔食(ピッティング)が発生することがあります。
SUS316(18Cr-12Ni-2Mo)
モリブデンを添加した耐食性の高いステンレス。海水・塩素系薬品環境、醸造設備(醤油・味噌・酒類)、乳製品ライン、医薬品製造施設など、より厳しい衛生環境に使用します。SUS304より価格は高くなります。ステンレス配管の材質選定に迷う場合は、配管材料の耐用年数と寿命の比較も参考に、初期費用とライフサイクルコストの両面から判断すると失敗が少なくなります。
衛生管の継手方式
食品工場では継手部の清掃性が重要です。一般配管で使用するねじ込み継手(スクリュー継手)は汚れが溜まりやすいため、衛生管では以下の継手が採用されます。
- クランプ継手(I-line継手):工具不要で分解清掃が可能。CIP(定置洗浄)ラインに最適
- 溶接継手:内面が連続した溶接ビードになるため、平滑仕上げ(内面研磨)が必要
- ビクトリック継手(グルーブ継手):分解可能でメンテナンス性が高い
食品用ポリエチレン管(PE管)
水道用ポリエチレン管(JWWA K 144 等)や食品用途に適合した樹脂管は、給水管・工業用水の配管に使用できます。
特徴
- 軽量で施工性が高い
- 内面が滑らかで汚れが付着しにくい
- 低温(−40℃程度まで)でも柔軟性を維持(凍結対策に有利)
- 接着剤不要の融着接合(電気融着・バット融着)で継手部の衛生性が高い
高温(60℃以上)の連続使用には適しておらず、蒸気ラインや高温洗浄ラインには使用できません。食品用途では「食品衛生法に基づく食品用器具・容器包装の規格基準」に適合した製品を選ぶことが必要です。
塩ビ管(PVC管)と食品用塩ビ
一般の硬質塩ビ管(JIS K 6741)は排水管として広く使用されます。給水用途には「水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(WSP 032)」や「水道用硬質ポリ塩化ビニル管(JIS K 6742)」が使われます。
食品工場の排水管(油脂・洗浄排水)には一般用塩ビ管が使用できますが、高温排水(80℃以上)には塩ビは不適で、耐熱塩ビ管(HT管)またはステンレス管を選択する必要があります。
可塑剤の問題
軟質塩ビ管には可塑剤(フタル酸エステル類など)が含まれており、食品と接触する給水側の管材としては適していません。食品直接接触ラインでは可塑剤フリーの材料を選ぶ必要があります。
その他の衛生管材
フッ素樹脂管(PTFE・PFA)
耐薬品性が極めて高く、酸・アルカリに強い。半導体・化学・製薬施設で使用。食品施設では特殊な薬品ラインや高純度用途に限られます。高価なため一般的な食品施設では一部用途にのみ採用されます。
シリコン管
医療・製薬分野で多用される柔軟性の高い管材。食品工場では少量・柔軟な接続部品として使用されます。高温蒸気に対応した食品グレードのシリコン管も存在します。
使い分けの基本方針
| 用途 | 推奨材料 |
|---|---|
| 食品・飲料が直接接触するライン | SUS316(衛生管)、食品用PTFE |
| 飲料水(給水)配管 | SUS304衛生管、食品用PE管 |
| 高温・蒸気ラインのドレン | SUS304・316鋼管 |
| 一般排水(常温) | 塩ビ管、耐薬品塩ビ |
| 高温排水(80℃超) | 耐熱塩ビ(HT管)、ステンレス |
| 油脂・薬品含む排水 | 耐薬品ポリプロピレン管、ステンレス |
衛生基準・法令への対応
食品衛生法
食品用器具・容器包装(配管も含まれる)の材質基準が定められており、材料から有害物質が溶出しないことが求められます。食品に直接接触する配管では、材料の規格適合証明(試験成績書)を保管することが重要です。
HACCPと配管管理
2021年6月より日本でHACCP(食品安全管理システム)が食品事業者に義務化されています。HACCPの衛生管理計画では、給水・排水設備の管理(配管材料の適切性・交差汚染防止・清掃頻度)を明記することが求められます。
配管のデッドレッグ(流れが停滞する区間)は細菌が繁殖するリスクが高いため、設計段階から排除するか、定期的なフラッシングを清掃計画に組み込む必要があります。蒸気殺菌ラインを導入している施設では、オートクレーブ・蒸気滅菌装置の配管工事で解説している蒸気供給ラインの設計基準もあわせて確認しておくと安心です。
まとめ
食品施設の配管材料選定は、衛生性・耐薬品性・耐熱性・清掃性を軸に、用途と設置環境に応じて選ぶことが基本です。特に食品・飲料水と直接接触するラインではSUS316衛生管を採用し、クランプ継手などで分解清掃できる設計とすることが業界標準です。
法令(食品衛生法・HACCP)への適合と、長期にわたる衛生管理のしやすさを両立させるために、施工段階から専門業者に相談することをお勧めします。新規開業や厨房リニューアルの給排水計画は、飲食店の給排水工事ガイドもあわせてご覧いただくと全体像がつかみやすくなります。
森工業株式会社では、食品工場・飲食店の衛生配管工事に対応しています。材料選定・設計提案から施工・竣工検査まで一貫してサポートします。宮城県内の事業者様はお気軽にご相談ください。
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