
事務所ビルや店舗、学校などの空調で、室外機の中でエンジンが回っている方式があります。GHP(ガスヒートポンプエアコン)です。見た目は電気式のビル用マルチエアコンとよく似ていますが、動力源がガスのため、電気・ガス・エンジンの保守という3つの面から計画を立てる必要があります。この記事では、GHPの仕組みと電気式(EHP)との違い、メーカーが定める定期点検の考え方、更新を検討するときに確かめておきたい点を整理します。
GHPの仕組み
エアコンは、冷媒を圧縮機で圧縮・循環させ、冷媒が液体から気体に変わるときに熱を奪い、気体から液体に戻るときに熱を出す性質を使って冷暖房を行います。この圧縮機を電気モーターで動かすのが電気式のEHP、ガスエンジンで動かすのがGHPです。日本ガス協会は、空調エリアごとに室外機を置いて個別に制御できる「個別分散方式」の代表としてGHPを紹介しており、バッテリーと発電機を搭載して停電時でも空調や一部の電力供給ができる停電対応型GHPがあることも説明しています。
出典: 日本ガス協会 ガス空調
室内機・冷媒配管・リモコンの構成はビル用マルチエアコンと共通する部分が多く、違いは主に室外機にあります。室外機の中にはガスエンジン、エンジンを冷やす冷却水の回路、排気の出口があり、建物側からはガス配管と、制御・補機用の電源を室外機まで引き込みます。
EHPとの違いと向いている建物

空調メーカーの1社であるダイキン工業は、GHPとEHPの違いを「圧縮機を電気モーターで動かすかガスエンジンで動かすか」と説明したうえで、GHPの特長として次の点を挙げています。
- ガスで空調するため消費電力量が大幅に少なくなり、契約電力を抑えやすい
- ガスエンジンの排熱を利用するため、暖房の立ち上がりが速く、除霜運転が極めて少ない
- 受変電設備が不要なため、設備費と設置スペースを抑えられる
出典: ダイキン工業 GHPとは?
一方で、GHPにはガス配管工事が必要で、エンジンを持つぶん定期的な部品交換が欠かせません。電力の契約容量に余裕がない建物、冬の暖房負荷が大きい建物、停電時にも空調を止めたくない建物ではGHPが候補になり、ガスの引き込みが難しい建物や保守の手間を減らしたい建物ではEHPが選ばれることが多い、というのが一般的な考え方です。オフィスビルの空調方式全体の整理はオフィスビル空調工事の完全ガイドの「オフィスビルの空調システムの種類」で解説しています。
メーカーが定める定期点検
GHPの室外機はエンジンを積んでいるため、自動車と同じようにオイルや点火プラグなどの消耗部品があります。点検の周期と内容は機種ごとにメーカーが定めています。1社の資料の例として、ダイキン工業の点検保守の案内では、小型シリーズなどは設置後5年目と10年目、または積算運転時間10,000時間と20,000時間のうち早く到達した方で点検を行うとしています(GHPエグゼアⅢは設置後6年目と12年目)。同じ案内に挙がっている主な項目は次のとおりです。
- 交換: オイルフィルター、点火プラグ、ドレンオイルフィルター
- 補充: エンジンオイル、ドレンフィルター充填石、冷却水強化材、冷却水
- 点検: 圧縮機ベルト、エンジンオイル漏れ、冷却水漏れ、排気ガス漏れ、燃料ガス漏れ、燃料ホース、冷媒漏れ、運転異常音など
項目は機種によって異なるとされているため、実際の周期と内容は設置している機種の取扱説明書や保守契約で確かめます。運転時間の長い施設では、年数より先に積算運転時間の節目が来ることがある点にも注意が必要です。
フロン排出抑制法の点検
GHPも業務用の冷凍空調機器として、フロン排出抑制法の対象になります。環境省は、全ての管理者が日常的な温度点検や外観検査などの簡易定期点検を行い、一定規模以上の業務用機器については専門家による冷媒漏えい検査(定期点検)を行う必要があると説明しています。漏えいが見つかった場合は速やかに漏えい箇所を特定し、修理を行うまでは原則として冷媒の充塡が禁止されています。エンジンの定期点検とは別の制度なので、点検記録は分けて管理しておくと更新時の判断材料にもなります。
更新を検討するときに確かめること
GHPを入れ替えるときは、同じGHPで更新するか、EHPに切り替えるかを最初に検討します。判断の材料になるのは次のような点です。
- 既設の冷媒配管を再利用できるか(管径・肉厚・劣化の状態と、新しい機種の施工説明書の条件)
- 能力を増やす場合に、ガス配管の口径やガスメーターの能力が足りるか(ガス事業者との協議が必要になります)
- EHPに切り替える場合に、受変電設備や幹線の容量を増やす必要があるか
- 停電時に空調を動かしたいか(停電対応型を選ぶかどうか)
- これまでの点検記録で、エンジンや冷媒の不具合がどの程度出ていたか
室外機の重量や排気の向きが変わると、屋上の架台や周囲との離隔も見直しが必要になります。更新は機器の入れ替えだけでなく、冷媒配管・ドレン配管・ガス配管・電源をまとめて点検する機会と考えると、後からの手戻りを減らせます。
森工業へのご相談
森工業は、法人・事業者様の建物を対象に、エアコン設置や空調配管などの空気調和設備工事と、ガス配管を含む配管工事を承っています。エンジン部分の定期点検はメーカーや保守契約先の領分になりますが、更新に伴う冷媒配管・ドレン配管・ガス配管の工事についてはお問い合わせフォームよりご相談ください。
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