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地下階のある建物では、トイレや厨房の排水を自然勾配のまま下水道へ流せないため、いったん排水槽にためてポンプでくみ上げます。この槽は「ビルピット」とも呼ばれ、構造や運転が合っていないと汚水が槽内で腐敗し、悪臭の苦情につながります。この記事では、排水槽に設ける通気管(通気装置)の考え方を中心に、告示が定める構造の基準と、臭気を出さない運転、清掃と点検の周期を整理します。ポンプアップ設備の全体像は排水のポンプアップとはで解説しています。
排水槽の通気管とは
排水槽の通気管は、槽の中の空気を建物の外へ逃がすための管です。排水が流れ込めば槽内の空気が押し出され、ポンプでくみ上げれば同じ量の空気を取り込む必要があります。通気がとれていないと、流入する排水の流れが悪くなったり、マンホールのすき間など思わぬ所から臭気が漏れたりします。
建築基準法施行令に基づく昭和50年建設省告示第1597号は、排水槽について「通気のための装置を設け、かつ、当該装置は、直接外気に衛生上有効に開放すること」と定め、あわせて「通気のための装置以外の部分から臭気が洩れない構造とすること」を求めています。槽の空気は通気管から屋外へ逃がし、マンホールのふたや配管の貫通部など、それ以外の場所からは漏らさないという考え方です。
同じ告示は、排水管に設ける通気管の基準を別の号で定めています。こちらは排水トラップが破封しないように設けるためのもので、「配管内の空気が屋内に漏れることを防止する装置が設けられている場合」は外気に開放しなくてよいという但し書きがあります。一方、排水槽の通気装置の号にはこの但し書きがありません。排水立て管の伸頂通気やループ通気の種類は通気管(ベント管)とはで解説しています。
出典: 国土交通省 建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件(昭和50年建設省告示第1597号)
告示が定める排水槽の構造

告示第1597号は、排水槽(排水を一時的に滞留させるための槽)について、通気のほかに次の構造を定めています。
- 内部の保守点検を容易かつ安全に行える位置に、直径60センチメートル以上の円が内接できるマンホールを設ける(外部から容易かつ安全に保守点検できる小規模な排水槽を除く)
- 排水槽の底に吸い込みピットを設けるなど、保守点検がしやすい構造とする
- 排水槽の底の勾配は、吸い込みピットに向かって15分の1以上10分の1以下とするなど、内部の保守点検を容易かつ安全に行える構造とする
底に勾配を付けて吸い込みピットへ残水と汚泥を集めると、ポンプが槽内の水を引ききりやすくなり、汚泥が槽底に広く残るのを防げます。既存の建物で槽の底が平らなまま、吸い込みピットが浅いままという場合は、清掃のたびに汚泥の残り方を確かめておくと改修の判断材料になります。
また、下水道法施行令第8条第11号は、排水設備の技術上の基準として「汚水を一時的に貯留する排水設備には、臭気の発散により生活環境の保全上支障が生じないようにするための措置が講ぜられていること」と定めています。具体的な措置は下水道管理者である自治体が示しており、施工地の下水道の担当窓口で基準を確かめてから計画します。
臭気を出さないための運転
排水槽の臭気は、汚水が槽内に長くとどまって腐敗することで強くなります。自治体の指導基準では、ためる時間を短くする工夫が具体的に示されています。札幌市の指導方針と東京都のビルピット対策指導要綱に共通する考え方は次のとおりです。
- 汚水と雑排水は、原則として別々の槽に分けてためる
- 槽の大きさを流入量に見合ったものにし、ポンプの始動水位を低めに設定する
- 水位による制御にタイマーによる制御を組み合わせ、一定時間ごとに排水する
- 長くためざるを得ない槽には、ばっ気・撹拌の装置を設ける
- 厨房の排水は、油脂を分離する阻集器を経由させる
東京都の要綱は、排水の槽内貯留時間をおおむね2時間以内に設定するよう求めています。札幌市の指導方針も、2時間程度を理想としています。
出典: 札幌市 確認申請時における排水槽の臭気対策指導方針/東京都 建築物における排水槽等の構造、維持管理等に関する指導要綱
清掃と点検の周期
建築物衛生法の特定建築物については、施行規則第4条の3が「特定建築物維持管理権原者は、排水に関する設備の掃除を、六月以内ごとに一回、定期に、行わなければならない」と定めています。特定建築物に当たるかどうかと法の全体像は、建築物衛生法における給排水設備の点検・清掃義務で解説しています。
自治体によっては、これより短い周期を指導しています。東京都の指導要綱は、排水槽を少なくとも4月ごとに1回清掃し、排水槽等を少なくとも1月ごとに1回点検するよう定め、点検項目として次のようなものを挙げています。
- 槽内の浮遊物・沈殿物の状況、壁面の損傷やさび、マンホールの密閉状況、悪臭の有無
- 満減水警報装置や電極式制御装置の作動状況と、電極棒の汚れ・取付け状況
- タイマーの作動状況と排水ポンプの揚水量
- 排水管・通気管の損傷、さび、詰まり、漏れと、防虫網の詰まり
出典: e-Gov法令検索 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則/東京都 ビルピット対策指導要綱
排水槽の中は酸素欠乏や有毒ガスの危険がある場所です。清掃や点検で槽内に入るときの備えは工場ピット・マンホール作業の酸欠対策ガイドをご覧ください。
改修で見直したい点
臭気の苦情が続く排水槽では、ポンプや制御の設定だけでなく、配管の側にも原因があることがあります。改修の前に、次の点を現地で確かめます。
- 通気管が直接外気に開放されているか、末端の防虫網が詰まっていないか
- 通気管の末端が、窓や給気口など人の出入りや空気の取り込みがある場所の近くで開いていないか
- マンホールのふたが密閉できる防臭型になっているか、配管の貫通部にすき間がないか
- 槽の底の勾配と吸い込みピットが、汚泥を集められる形になっているか
森工業は、工場・商業施設・公共施設など法人・事業者様の給排水設備工事を承っており、排水設備工事責任技術者が在籍しています。排水槽まわりの配管の改修や更新のご相談は、お問い合わせフォームよりお寄せください。
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