
延床面積が一定規模を超えるオフィスビルや商業施設、ホテル、店舗などは、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(通称:建築物衛生法・ビル管理法)に基づき、給排水設備を含む建物全体の維持管理基準を守る義務を負います。賃貸ビルの共用部などを管理するオーナー様・管理会社様・元請会社様にとって、この法律に基づく点検・清掃を計画的に実施できているかは、テナントや利用者の安全を守るだけでなく、行政指導や損害賠償リスクを避けるうえでも重要なポイントです。
建築物衛生法(ビル管理法)とは
建築物衛生法は、多数の人が使用・利用する一定規模以上の建築物について、空気環境・給水・排水・清掃・ねずみや昆虫等の防除といった項目ごとに管理基準(建築物環境衛生管理基準)を定めた法律です。対象となる建築物は「特定建築物」と呼ばれ、都道府県知事等への届出と、基準に沿った維持管理が義務づけられています。給排水設備工事業者としては、このうち給水設備・排水設備・貯水槽まわりの基準に直接関わることになります。
特定建築物に該当する施設の目安

特定建築物は、事務所・店舗・百貨店・ホテル・興行場・集会場・図書館・博物館・遊技場などの用途に供される部分の延床面積が3,000平方メートル以上の建築物、および学校教育法第1条に規定する学校では延べ面積8,000平方メートル以上の建築物が対象とされています。基準に満たない建物であっても、テナントの安全管理や資産価値の維持を目的として、同水準の点検・清掃を自主的に取り入れる管理会社様やオーナー様も増えています。
給排水設備に関する管理基準の主なポイント
建築物環境衛生管理基準のうち、給排水設備工事に関わる代表的な項目は次のとおりです。
| 管理項目 | 基準の概要 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 飲料水の水質検査 | 給水栓における色・濁り・臭気・味・pH値・残留塩素などを確認 | 項目ごとに定められた周期で実施 |
| 雑用水の管理 | 散水・修景・清掃用水などに使う雑用水の水質基準を確認 | 項目ごとに定められた周期で実施 |
| 貯水槽の清掃 | 受水槽・高置水槽の内部清掃 | 1年以内ごとに1回 |
| 排水設備の清掃 | 排水管・排水槽・グリース阻集器などの清掃 | 6か月以内ごとに1回 |
これらはあくまで基準の骨格であり、実際の対象範囲や検査項目は建物の用途・規模・設備構成によって異なります。詳細は所轄の保健所や自治体の窓口で確認したうえで、自社ビルの管理計画に落とし込むことが重要です。
水道法上の「簡易専用水道」との違い
受水槽の管理というと、水道法に基づく「簡易専用水道」(有効容量10立方メートルを超える受水槽に、年1回の検査・清掃を義務づける制度)を思い浮かべる方も多いかもしれません。簡易専用水道は水道法、特定建築物の管理基準は建築物衛生法と、根拠となる法律自体が異なります。延床面積が要件を満たす特定建築物では、水道法上の簡易専用水道の検査・清掃に加えて、建築物衛生法に基づく飲料水・雑用水・排水設備の管理基準も並行して満たす必要があるため、どちらか一方だけを実施していると管理漏れが生じやすい点に注意が必要です。管理会社様・オーナー様は、自社ビルがどちらの制度の対象になっているかをまず整理し、点検・清掃の年間スケジュールを一本化しておくことをおすすめします。
点検・清掃を怠った場合に生じるリスク
給排水設備の点検・清掃が滞ると、次のようなリスクが顕在化します。
- 排水管内の詰まりや悪臭が発生し、テナント・利用者からのクレームにつながる
- グリース阻集器の清掃不足により、油脂分が排水本管に流出し行政指導の対象となる
- 貯水槽の汚れが進行し、水質検査で不適合となった場合は使用制限や改善指導を受ける
- 老朽化した排水管からの漏水が下階への損害に発展し、原状回復費用や損害賠償が発生する
- 立入検査時に帳簿書類(管理記録)の不備が指摘され、指導や罰則(建築物衛生法第16条)の対象となる
特に複数のテナントが入居する賃貸ビルや商業施設では、共用部の給排水設備は建物所有者・管理会社が一括して管理責任を負うケースが多く、専有部の設備よりも計画的な点検体制が求められます。
点検・清掃を配管工事業者に依頼する際のポイント
特定建築物の給排水設備管理を外部の配管工事業者に依頼する場合、以下の観点で確認しておくと安心です。
- 排水管・グリース阻集器・貯水槽など、設備ごとの点検周期を年間計画として提示できるか
- 点検・清掃結果を記録として残し、行政への報告や立入検査の際に提示できる形式で管理しているか
- 排水管の詰まりや漏水など、緊急時の一次対応まで一貫して依頼できる体制があるか
- 工場・プラント配管や店舗・商業施設の設備配管など、対象施設の用途に応じた施工実績があるか
給排水設備は日常的に目視しづらい部分が多く、不具合が表面化した時点ですでに老朽化が進行しているケースも少なくありません。特定建築物の維持管理基準を満たすことを起点に、年間を通じた点検・清掃計画を立てておくことが、テナントの安全確保と施設の資産価値維持の両面で有効です。給排水設備の点検・清掃体制の見直しをご検討の場合は、お問い合わせフォームよりご相談ください。
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