
工場や事業場の排水を河川・水路などへ流す場合、水質汚濁防止法の「特定施設」の届出と排水基準が関わってきます。設備の増設や排水配管の改修を計画するときは、届出のタイミングと配管の構造の基準を先に確かめておくと手戻りを防げます。この記事では、制度の対象、届出の種類と期限、排水基準、測定・点検、配管で確かめたい点を、法令と宮城県の手引きをもとに整理します。
対象になる事業場
水質汚濁防止法は、工場・事業場から「公共用水域」に排出される水を規制する法律です。公共用水域とは河川、湖沼、港湾、沿岸海域や、それにつながる水路などで、終末処理場を設置している公共下水道・流域下水道は含まれません。規制の対象は「特定施設」を設置する工場・事業場(特定事業場)で、特定施設は有害物質を含む汚水や、生活環境に被害を生じるおそれがある程度の汚水を排出する施設として政令で定められています。宮城県の手引きは、政令別表第1の番号1から74の101施設、有害物質は28項目と説明しています。
排水を全量公共下水道へ流す場合は下水道法の側の届出や除害施設の制度が中心になり、こちらは除害施設とは(下水道法の特定施設と届出)で解説しています。
届出の種類と期限

主な届出は次のとおりです。
- 設置の届出(第5条第1項): 公共用水域に水を排出する者が特定施設を設置しようとするとき
- 有害物質を扱う施設の届出(第5条第3項): 公共用水域に排出しない場合でも、有害物質使用特定施設や有害物質貯蔵指定施設を設置しようとするとき
- 構造等の変更の届出(第7条): 特定施設の構造・使用の方法・汚水等の処理の方法などを変えようとするとき
- 氏名の変更や使用の廃止の届出(第10条): その日から30日以内
設置や変更の届出は、受理された日から60日を経過した後でなければ工事に着手できません(第9条。内容が相当と認められれば短縮されることがあります)。届出をしなかったり虚偽の届出をしたりした場合の罰則も定められています(第32条)。
宮城県の手引きによると、届出先は仙台市内なら仙台市環境局の環境対策課、それ以外は施設の所在地を所管する保健所です。同じ手引きでは「排出水」に生活雑排水や雨水も含まれるとされ、地下浸透のおそれがない場合で、排出水が全くないときなどに限って届出が不要と説明されています。法とは別に、宮城県公害防止条例にも汚水等に係る特定施設の届出があるため、あわせて窓口で確かめてください。
排水基準のしくみ
排水基準は環境省令(排水基準を定める省令)で、有害物質は種類ごとに、それ以外は生活環境項目ごとに許容限度が定められています。生活環境項目の例は次のとおりです。
| 項目 | 許容限度 |
|---|---|
| 水素イオン濃度(海域以外) | 5.8以上8.6以下 |
| 生物化学的酸素要求量(海域・湖沼以外) | 1リットルにつき160ミリグラム(日間平均120) |
| 浮遊物質量 | 1リットルにつき200ミリグラム(日間平均150) |
| ノルマルヘキサン抽出物質(鉱油類) | 1リットルにつき5ミリグラム |
| ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂類) | 1リットルにつき30ミリグラム |
生活環境項目の基準は、1日あたりの平均的な排出水の量が50立方メートル以上の工場・事業場に適用されます。有害物質の基準には、この量による区切りがありません。また都道府県は条例でより厳しい基準を定めることができ、宮城県にも上乗せ条例があります。排水口で基準に適合しない排出水を流すと、改善命令を待たずに罰則の対象になります(第12条、第31条)。
出典: 排水基準を定める省令(e-Gov法令検索)/水質汚濁防止法(e-Gov法令検索)/宮城県 水質汚濁防止法届出の手引き
測定・点検と記録
排出水を排出する者は、届け出た項目について年1回以上(条例でそれより多い回数が定められていればその回数)汚染状態を測定し、記録を3年間保存します。試料は汚染状態が最も悪いと推定される時期・時刻に採ることとされています。有害物質使用特定施設などを設置している場合は、構造や設備を定期に点検し、点検の結果も3年間保存します。
排水配管で確かめたいこと
施行規則は、有害物質使用特定施設などに接続する配管・継手・バルブ・ポンプについて、地上に置く場合は漏えい防止に必要な強度と劣化しにくい材質、外面の腐食防止をとるか、漏れが目で見て分かるよう床面から離して設けることを求めています。地下に置く場合は、不浸透性の材料でつくったトレンチの中に設けるなどの措置が必要です。排水溝や排水ますにも、地下への浸透を防ぐ構造が求められます。改修の前には次の点を確かめておきます。
- 工程排水・生活雑排水・雨水がそれぞれどこへ流れているかを系統図で確かめる
- 採水や点検ができる位置に排水口・点検口があるか
- 地下に埋まった配管・排水溝がないか、ある場合はトレンチ化などの要否
- 配管の更新や経路の変更が届出事項の変更にあたるかを、計画の段階で所管の窓口に相談する
工場排水の配管の点検や材料の選び方は、工場・産業施設の排水処理配管メンテナンスと工場・プラント給排水配管の腐食対策と材料選定で解説しています。工場の排水配管の改修については、お問い合わせフォームよりご相談ください。
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