
物流施設や倉庫は、オフィスビルや小規模な店舗と比べて、給排水設備の使われ方が大きく異なります。多くの作業員が交代制で勤務するため、トイレや洗面設備は使用頻度と混雑時間帯を踏まえた計画が必要です。また、荷捌き場やコンテナヤードでは清掃用水や雨天時の泥・水の処理も欠かせません。倉庫は延床面積が大きい一方で人が滞在するエリアは限られているため、給排水設備を「面積の割に少ない」規模で計画してしまい、後から使い勝手の悪さが表面化するケースも見られます。本記事では、倉庫・物流センターの給排水設備工事で押さえておきたいポイントを整理します。
倉庫・物流センターに求められる給排水設備の特徴
倉庫・物流センターは、次のような特徴を持つ施設です。
- 大人数の作業員が交代制勤務するため、朝礼前後・休憩時間に水回りの利用が集中する
- 事務所エリアと庫内作業エリアで求められる設備水準が異なる
- 荷捌き場やトラックヤードは屋外に近い環境で、床の洗浄や排水処理が必要になる
- フォークリフトのバッテリー充電エリアなど、防爆・防湿を考慮すべき区画がある
- 繁忙期・閑散期で常駐人数の変動が大きく、ピーク時を基準に設備を組むと平常時は過大投資になりやすい
こうした使われ方の違いを踏まえずに一般的なオフィスビルと同じ発想で設計してしまうと、朝礼前のトイレ渋滞や、庫内の水はけ不良といった運用上の不満につながります。設計段階では、実際にその倉庫で働く人数構成やシフトの組み方まで確認したうえで、設備規模を決めることが大切です。
作業員用トイレ・洗面設備の設計で押さえるべきポイント

倉庫では常駐人数に対してトイレの数が不足しがちです。設計段階で確認しておきたいのは次のような点です。
- ピーク時間帯(始業前・昼休憩明け)に必要な便房数を、常駐人数と交代制のシフト構成から逆算する
- 男女比や身体障がいのある従業員の有無に応じて、多目的トイレの設置位置を検討する
- 手洗い・洗面設備は、作業エリアからの動線を考慮して複数箇所に分散配置する
- 増員・レイアウト変更に備え、給排水管に将来の増設余地を持たせておく
これらは新築時だけでなく、既存の賃貸物件を倉庫として使う際の原状回復・増改築工事でも確認しておくべき項目です。特に賃貸物件を転用する場合は、もともとの用途で想定されていた人数と、実際に倉庫として使う人数が大きく異なることが多く、既存設備の能力を過信せずに確認する必要があります。
床排水・洗浄用配管と防塵対策
庫内の床は、荷物の積み下ろしや台車の往来で汚れやすく、定期的な水洗いが必要になる区画があります。洗浄用の散水栓や側溝排水を計画する際は、以下を意識します。
- 洗浄後の排水が滞留しないよう、床に適切な勾配をつけて排水溝・集水桝に導く
- 油分を含む排水が想定される区画は、一般排水と分けて計画する
- 屋外の荷捌き場は雨水と洗浄排水の系統を整理し、豪雨時に庫内へ逆流しない高さで桝を設置する
- 粉じんが多い作業区画では、排水口に目詰まりしにくいストレーナーを選定し、清掃の頻度も踏まえた維持管理計画を立てる
食品や医薬品を扱う物流センターでは、床の洗浄頻度がより高くなる傾向があるため、洗浄用水栓の設置間隔や水量も一般的な倉庫より余裕を持たせて計画する必要があります。
屋根排水・雨水処理の計画
倉庫・物流センターは屋根面積が大きく、屋根に降った雨水を短時間に大量に排水しなければならない施設でもあります。
- 屋根の集水勾配とルーフドレンの数・口径を、屋根面積に見合った容量で計画する
- 竪樋から敷地内の雨水桝・排水路までのルートを整理し、豪雨時に敷地境界からあふれ出さないようにする
- 雨水を一時的にためる調整池・浸透施設が必要な地域では、自治体の指導基準を事前に確認する
- 増築でルーフドレンの位置が変わる場合は、既存の雨水系統とのつながりを含めて見直す
近年は局地的な豪雨が増えており、既存倉庫の増築や用途変更のタイミングで、既存の雨水排水能力が現状の降雨傾向に見合っているかを見直す事業者も増えています。
増築・ゾーニング変更に伴う配管計画の注意点
物流施設は事業の成長に合わせて増築やゾーニング変更が発生しやすい施設です。将来の変更を見込んだ配管計画としては、次のような考え方が有効です。
- 主配管を将来の増築方向に延長しやすいルートで敷設しておく
- メーターやバルブの位置を、区画変更時に系統を分離しやすい場所にまとめる
- 天井裏や床下の配管スペースに余裕を持たせ、後工事での配管追加を容易にする
稼働中の物流センターで配管工事を行う場合は、出荷業務への影響を最小限に抑えるための工程調整も重要な検討事項になります。夜間や休業日に作業範囲を区切って進める、断水を伴う作業は事前に運用部門と時間帯を調整するなど、稼働を止めない施工計画そのものが設計の一部だと考えておくとよいでしょう。
お問い合わせについて
倉庫・物流施設の給排水設備の新設・増設・改修をご検討の場合は、まずお問い合わせフォームより施設の概要(延床面積、想定人数、稼働時間帯など)をお知らせください。現地の状況を確認したうえで、施工計画についてご相談いたします。
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