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防火区画とは何か
建築物を火災から守るため、建築基準法では一定規模以上の建物に「防火区画」の設置を義務付けています。防火区画とは、火災発生時に炎・煙の拡散を一定範囲に封じ込めるために設けられた、耐火構造の壁・床・シャッターなどで仕切られた区域のことです。
根拠法令は建築基準法第36条および同法施行令第112条です。区画の種類は大きく三つに分かれます。「面積区画」は延べ面積1,500㎡以内ごとに1時間準耐火構造以上の床・壁で仕切る区画です。「高層区画」は11階以上の部分について設ける区画で、区画する床面積の上限は内装・下地の仕上げ材料に応じて段階的に定められています(具体の㎡数は建築基準法施行令第112条および所管の建築主事・確認検査機関でご確認ください)。「竪穴区画」は、吹き抜け・階段室・エレベーターシャフトなど上下階をつなぐ部分を他の部分から区画するものです。
換気・暖房・冷房設備の風道(ダクト)が防火区画を貫通する場合に防火ダンパーを設ける根拠は、建築基準法施行令第112条(令和元年公布・令和2年4月施行の改正後は第21項)です。厨房排気ダクト等については消防法令や各自治体の火災予防条例による上乗せ規制を受ける場合もあり、建築基準法と消防法の両方が絡む点が防火区画貫通処理の複雑さの一因です。施工前に建築確認担当部署・消防署の双方へ確認を取ることが実務上の鉄則です。
配管貫通時の法的要件

配管・ダクト類が防火区画の壁や床を貫通する場合、貫通部の措置を適切に行わなければ防火区画としての機能が失われます。建築基準法施行令第129条の2の5および第112条第20項・21項に基づき、貫通部には以下の措置が必要です。
耐火充填:配管と壁・床の隙間を不燃材料または耐火充填材で完全に塞ぎます。隙間があれば炎・煙の通路となるため、確実な充填が求められます。
防火措置材の適合認定:使用する耐火充填材は国土交通大臣の認定品(いわゆる「大臣認定工法」)でなければなりません。認定番号を施工記録に残す義務があります。
管材の制限:可燃性の樹脂管(塩ビ管など)を防火区画に貫通させる場合は、壁・床面から両側1m以内を不燃材料の管に替えるか、大臣認定を受けた防火措置を施す必要があります。
スリーブ径の管理:スリーブ(鞘管)が大きすぎると充填が困難になります。配管径に対して適切な余裕(通常10〜20mm程度)に収めることが施工品質の基本です。
耐火充填工法の種類と選定
耐火充填工法にはいくつかの種類があり、配管の種類・スリーブ径・施工環境によって使い分けます。
モルタル充填工法は最も歴史が長い工法です。スリーブ内に金属管が通っている場合、隙間にモルタルを詰めます。コストが低い反面、施工後の変更・追加配管が難しく、硬化後の収縮による長期的なひび割れリスクもあります。大規模改修では採用されにくくなっています。
耐火パテ(ファイヤーパテ)工法は粘土状の不燃材料を手で詰める工法です。施工が容易で追加配管にも対応しやすく、塩ビ管・鋼管・フレキ管など管種を問わず使えます。代表的な製品にヒルティのCP606やCFS-Fシリーズがあります。大臣認定を取得した製品の使用が必須です。充填量が不足すると火災時に炎が通過するため、メーカー指定の施工厚さを厳守することが重要です。
バックアップ材+シーリング工法は、ロックウールやセラミックファイバーなどの耐火バックアップ材を奥まで詰め、表面を耐火シーリング材で仕上げる工法です。外観を整えやすく、振動が多い箇所や複数本の配管がまとまって通る箇所に適しています。
耐火被覆テープ工法は、樹脂管の外周に膨張型の耐火テープを巻いて貫通部を塞ぐ工法です。火災時に熱でテープが膨張し、溶融した樹脂管の空洞を塞ぎます。塩ビ管・架橋ポリエチレン管などの可燃性管に特に有効です。
防火ダンパーの種類と選定
空調・換気ダクトが防火区画を貫通する場合は、防火ダンパー(FD)の設置が必要です。配管工事においても排気管やダクト類の貫通処理で関与するため、基本知識を押さえておく必要があります。
温度ヒューズ式防火ダンパー(FD)は最も一般的なタイプで、72℃または120℃の温度ヒューズが溶断するとダンパーが閉じる仕組みです。電源が不要で信頼性が高くコストも低い点が長所ですが、煙に対する感知機能はありません。
煙感知器連動型防火ダンパー(SFD/HFD)は煙感知器と連動してダンパーを閉鎖します。煙の拡散防止に有効で、高層ビルや特定用途建物での採用が増えています。
選定のポイントは設置場所の用途と建物の規模です。一般的な事務所・共同住宅ではFDが主流ですが、病院や大規模商業施設では煙連動型が求められるケースが増えています。ダクト径・風量・設置方向(水平・垂直)によって型番が変わるため、必ずメーカー仕様書を確認してから発注します。
施工上の注意点
防火区画貫通処理は、法令適合だけでなく施工精度が求められる作業です。現場で多く見られる失敗例とその対策を解説します。
充填不足:耐火パテやモルタルを見た目だけで詰めると、スリーブ奥に隙間が残ることがあります。充填後は細長い棒などで突き固め、スリーブ全長にわたって充填されているか確認します。
認定外製品の使用:ホームセンターで入手できる一般的なシーリング材や充填材は大臣認定を取得していないことがほとんどです。「防火」と表示があっても認定品でなければ法令不適合となります。購入前に必ず認定番号を確認します。
可燃管の不燃化範囲の見落とし:塩ビ管・架橋ポリエチレン管を防火区画に通す場合、壁・床面から両側1m以内を金属管に切り替えるか、耐火テープ工法で代替する必要があります。この範囲を短くしてしまうミスが現場では散見されます。
スリーブ後付け施工:コンクリート打設後にスリーブ位置を変更するとはつり作業が発生し、構造への影響も生じます。施工前の図面確認と事前調整が不可欠です。
複数業者間の連携不足:防火区画貫通処理は配管業者だけでなく、ダクト業者・電気業者・建築業者が関わります。誰がどの貫通部を施工・検査するかを事前に明確にしないと処理漏れが発生します。元請け業者が貫通リストを作成し、各業者がチェックを入れる管理体制が理想的です。
検査・書類管理
防火区画貫通処理は竣工検査の対象であり、適切な記録を残すことが義務付けられています。
施工記録写真:充填前・充填中・充填後の三段階で写真を撮影します。特に充填前(スリーブと配管の位置関係が確認できる写真)と充填後(仕上がり状態)は必須です。
認定番号の記録:使用した耐火充填材・防火ダンパーの大臣認定番号を施工記録に明記します。製品カタログや納品書も保管しておくと検査時にスムーズです。
貫通リスト:貫通箇所ごとに位置・管種・管径・使用工法・施工者・施工日を一覧化した貫通リストを作成します。将来の改修時にも役立つ重要な維持管理資料となります。
消防検査への対応:防火ダンパーが設置された建物では消防検査が行われます。ダンパーの作動確認・温度ヒューズの適合確認が実施されるため、施工後すぐにアクセスパネルを閉じず、検査完了まで開放しておくことが一般的です。
森工業株式会社では、防火区画貫通処理を含む配管工事全般に対応しております。法令適合の確認から施工・書類管理まで一貫してサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 防火区画を塩ビ管などの樹脂管で貫通する場合の注意点は?
A. 可燃性の樹脂管を防火区画に貫通させる場合は、壁・床面から両側1m以内を不燃材料の管に替えるか、大臣認定を受けた防火措置(耐火テープ工法など)を施す必要があります。この不燃化範囲を短くしてしまうミスが現場では多く見られます。
Q. 防火区画貫通部の耐火充填材は市販のシーリング材で代用できますか?
A. できません。使用する耐火充填材や防火措置材は国土交通大臣の認定品(大臣認定工法)でなければならず、認定番号を施工記録に残す義務があります。「防火」と表示があっても認定品でなければ法令不適合となるため、購入前に必ず認定番号を確認します。
Q. 温度ヒューズ式防火ダンパー(FD)はどんな仕組みですか?
A. 温度ヒューズ式防火ダンパーは、72℃または120℃の温度ヒューズが溶断するとダンパーが自動的に閉じる仕組みです。電源が不要で信頼性が高くコストも低い反面、煙に対する感知機能はないため、煙の拡散防止が必要な場合は煙感知器連動型(SFD/HFD)を選びます。
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