
PFASとは?水道配管との関係
PFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、熱・化学薬品・油に強い性質を持つ有機フッ素化合物の総称です。かつて撥水加工材・消火剤・半導体製造工程などで幅広く使われてきましたが、自然環境ではほとんど分解されず「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼ばれます。
日本では特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の2物質が問題視されており、工場跡地・米軍基地周辺・農地などから地下水や河川へ流出した事例が複数報告されています。水道原水(河川水・地下水)が汚染されると、浄水処理を経ても完全には除去しきれない場合があります。
配管工事業者にとって直接的な影響はないように見えますが、建物オーナーや施設管理者からの相談が増えているため、基礎知識と設備対策の概要を押さえておくことが重要です。
2026年の水道法水質基準改正のポイント(2026年4月時点)

2026年4月1日から、PFOS・PFOAの合算値50ng/L(ナノグラム/リットル)以下が水道法の正式な「水質基準」として施行されました。それ以前は「水質管理目標設定項目」として暫定目標値50ng/L(管理目標)扱いでしたが、法的拘束力を持つ基準項目へ格上げされた形です。
主な変更点
- PFOS・PFOAの合算で50ng/L以下を超えた場合、水道事業者には速やかな施設改善義務が生じる
- 水道事業者(自治体水道局等)は原則として3か月に1回以上の水質検査が義務付けられた
- 過去の検査結果など一定の条件を満たす場合は検査頻度を減らせる場合があるが、具体的な頻度や要件は環境省・所管の水道事業者へご確認ください
この改正は水道事業者に向けた規制であり、個人住宅や建物の給排水設備を直接規制するものではありません。ただし、建物の受水槽設備・自家用井戸水・小規模専用水道を保有する施設では、管理者が自主的に水質確認を行う重要性が高まっています。
受水槽保有施設への実務的な影響
マンション・ビル・工場など受水槽(貯水槽水道)を持つ施設では、水道事業者からの供給水を一時貯留するため、水道本管のPFAS濃度が高い地域では受水槽経由の水質にも影響が及ぶことがあります。
施設管理者が確認すべき事項
浄水設備による対策の基礎知識
PFAS汚染が懸念される地域では、建物内に浄水設備を設置して対策を取る事業者・施設管理者もいます。配管工事業者としての関連知識を整理します。
活性炭フィルター(活性炭吸着)
粒状活性炭(GAC)または繊維状活性炭フィルターは、PFAS除去に一定の効果があることが確認されています。浄水器・活性炭処理設備として受水槽の前後や点前に設置することで、PFAS濃度を下げる効果が期待できます。ただし、吸着能力は経時劣化するため定期的なフィルター交換が必要です。
逆浸透膜(RO膜)
逆浸透膜フィルターはPFASを含む多くの微量化学物質を効率よく除去できます。医療・食品施設向けの純水製造設備や高品質の飲料水確保が必要な施設で採用されています。透析施設や食品工場では既にRO膜処理が標準となっているケースが多いです。
配管工事業者として関わる場面
- 浄水設備の給排水配管工事(設備の入口・出口配管)
- フィルター交換時の水抜き・配管バイパス工事
- 受水槽との配管接続・改修工事
- 配管材料の選定(浄水設備の前後で適切な材料を選ぶ)
建物の給水配管材料とPFASリスクの関係
PFAS問題は主に水源・浄水処理段階の問題であり、建物内の給水配管材料(塩ビ管・ステンレス管・銅管など)自体がPFASを溶出するわけではありません。ただし、古い配管の腐食・劣化により管内の水質が悪化しているケースは別問題として存在します。
水質悪化と配管の関係(PFAS以外も含む)
- 鉛製給水管(古い建物に残存している場合がある):鉛の溶出リスク
- 亜鉛メッキ鋼管(昭和40〜50年代設置):赤水・濁水の原因となるサビ
- 銅管の腐食:微量の銅溶出(水質・pH条件による)
PFASの問題を契機に水質全般への関心が高まっているため、古い配管を保有する建物オーナーからは「配管更新で水質が改善するか」という相談が増えています。配管材料由来の水質問題と、水源由来のPFAS汚染は原因が異なりますが、配管更新による水質改善効果を正確に説明できると、顧客の信頼につながります。
配管工事業者としての顧客対応のポイント
PFAS問題に関する顧客からの問い合わせには、冷静かつ正確な情報提供が重要です。
伝えるべき正確な情報
- 建物内の給排水配管材料はPFASを溶出しない(材質による水質汚染ではない)
- PFAS問題の根本原因は水源・浄水処理段階にあり、建物の配管工事だけで解決するものではない
- ただし、配管の老朽化による別の水質問題(赤水・鉛溶出等)は配管更新で改善できる
- 飲料水の水質が心配な場合は、水道事業者の公表する水質検査結果の確認、または独自の水質検査を勧める
業者として対応可能な工事
- 受水槽の清掃・点検・内面更新(FRPライニング等)
- 浄水設備の給排水配管工事
- 古い配管の更新工事(鉛管・亜鉛メッキ鋼管からの交換)
- 水質問題の原因調査(管内カメラ調査・水質検査への立ち会い)
PFAS問題は配管設備単体では解決できない課題ですが、水質全般に関する幅広い知識を持つ配管のプロとして、建物オーナー・施設管理者の不安に応える存在であることが大切です。水質に関する正確な情報を提供しながら、改善できる設備工事を提案することで、長期的な信頼関係の構築につながります。
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