
透析施設の配管工事が一般施設と大きく異なる理由
人工透析(血液透析)は、腎臓機能を代替する医療行為であり、患者の血液を体外に取り出して浄化した後、体内に戻す治療です。この治療に使用される「透析液」は大量の水を使って調製されますが、その水は通常の水道水をそのまま使うことができません。
水道水に含まれる塩素・細菌・エンドトキシン(細菌の死骸由来の毒素)・金属イオン・有機物などの不純物が透析患者の体内に入ると、重篤な副作用を引き起こす危険があります。そのため透析施設では、水道水から不純物を除去して「透析用水(純水)」を製造する専用の水処理システムが必須であり、その設備に接続される配管工事も特別な仕様と管理が求められます。
透析用水の水質基準

日本透析医学会が定める「透析液清浄化ガイドライン」では、透析に使用する水の水質基準が厳格に規定されています。
主な水質基準(超純水透析の場合)
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 細菌数 | 0.1 CFU/mL未満 |
| エンドトキシン | 0.001 EU/mL未満 |
| 塩素(遊離残留塩素) | 0.1 mg/L未満 |
| 電気伝導率 | 1.3 μS/cm以下(超純水) |
この基準を維持するためには、適切な水処理装置の選定・設置と、配管系統の衛生管理が不可欠です。
透析用水製造設備の構成と配管工事
水処理システムの一般的な構成
透析施設の水処理システムは通常、以下の機器を組み合わせて構成されます。
- 前処理フィルター(砂ろ過・マルチメディアフィルター):大きな粒子・濁りを除去
- 活性炭フィルター:塩素・有機物を除去
- 軟水器:カルシウム・マグネシウム(硬度成分)を除去
- 逆浸透膜(RO膜)装置:溶解成分・細菌・エンドトキシンを大幅除去
- エンドトキシン補足フィルター(ETRFフィルター):超純水製造時に使用
- 純水貯留タンク:製造した純水を一時貯留
配管の材料選定
透析用水配管の材料選定は、一般給水配管とは全く異なります。金属イオンの溶出・細菌の繁殖・エンドトキシンの蓄積を防ぐため、以下の材料が用いられます。
ステンレス鋼管(SUS316L)
最も一般的に採用される材料です。SUS304より高いニッケル含有量とモリブデン添加により、耐腐食性・耐塩素性に優れます。内面電解研磨(EP処理)を施すことで、細菌の付着・繁殖を大幅に抑制できます。
フッ素樹脂管(PVDF:ポリフッ化ビニリデン)
ステンレスに次いでよく使われる材料です。金属イオンの溶出がなく、透明性があるため内部の汚れ状態を視認できる利点があります。耐熱性も高く、熱水・蒸気による消毒にも対応します。
避けるべき材料
銅管・鉄管・塩化ビニル管(PVC)は金属イオン溶出・可塑剤溶出・細菌繁殖のリスクがあり、透析用水配管には使用しません。
配管設計の重要ポイント
デッドレグ(行き止まり配管)の排除
配管に「デッドレグ」と呼ばれる行き止まり区間があると、水の流れが止まって細菌が繁殖しやすくなります。透析用水配管ではすべての配管に水が循環するよう「ループ配管」を採用し、デッドレグを極力なくす設計が基本です。
傾斜と排液設計
系統全体を完全に空にできるよう、適切な傾斜(一般的に1/100以上)と排液バルブを設けます。定期的な消毒・洗浄時に残液を完全に排出できることが必要です。
継手・バルブの選定
接液部(水に触れる部分)の継手・バルブはすべてサニタリー仕様(衛生配管用)を使用します。一般的な配管継手はネジ・フランジ継手を使いますが、衛生配管ではバイオクランプ継手(三片式クランプ)を用いて、分解清掃・交換が容易な設計にします。
配管工事の施工・溶接管理
透析用水配管の溶接は、TIG溶接(ティグ溶接)が標準です。溶接部の裏波(パイプ内面の溶接ビード)が平滑で、酸化物(ブラックスケール)の付着がないことが求められます。
裏ガスパージ(バックシールディング)の実施
ステンレス配管のTIG溶接では、溶接中に管内にアルゴンガスを充填して酸化を防ぐ「裏ガスパージ」が必要です。裏ガスパージを省略すると内面に酸化スケールが発生し、水質汚染の原因になります。
溶接後の内面処理
溶接完了後は内面の酸化物を除去するため、酸洗い(ピクリング)または電解研磨を実施します。これにより不動態皮膜が再形成され、耐腐食性が回復します。
施工記録と品質管理
医療施設の配管工事では施工記録の保存が重要です。使用材料のロット番号・溶接作業者・検査結果(内視鏡検査・圧力試験)などを記録し、施設側に引き渡します。
定期メンテナンスと水質管理
透析用水の水質は日々変化し得るため、以下の定期的な検査・メンテナンスが必要です。
日常管理
- 透析液の電気伝導率・pH・残留塩素の確認
- RO膜装置の運転圧力・流量の確認
- 貯留タンクの液面確認
定期点検(月次・年次)
- 細菌培養検査(月1回以上)
- エンドトキシン検査(月1回以上)
- RO膜の洗浄・性能評価(定期)
- 熱水消毒または化学消毒(週1回程度)
配管の定期検査
5年ごとを目安に配管の内視鏡検査を実施し、錆・スケール・ビオフィルムの蓄積を確認します。問題が見つかれば化学洗浄または区間ごとの更新を行います。
透析施設の配管工事を依頼する際のポイント
透析施設の配管工事は高度な専門性が求められる分野です。依頼する際は以下のポイントを確認しましょう。
- 医療用・衛生配管の施工実績があるか:一般配管業者ではなく、医療施設・食品工場向け衛生配管の専門技術を持つ業者が適切です。
- TIG溶接・裏ガスパージの対応が可能か:配管溶接の技術と品質管理の体制を確認します。
- 施工記録・品質証明書を発行できるか:医療施設では書類管理が必須です。
- 純水製造メーカーとの連携実績があるか:機器メーカーとの連携経験があれば、設備全体の最適化ができます。
森工業株式会社では、医療施設・透析クリニックの配管工事についてもご相談を承っております。ステンレス衛生配管から純水設備の配管接続まで、専門的な技術と厳格な品質管理でご対応します。まずはお気軽にお問い合わせください。
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