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TIG溶接がステンレス配管に適している理由
TIG溶接(タングステン不活性ガスアーク溶接:GTAW)はステンレス鋼配管の溶接に最も適した溶接方法です。その理由は以下の通りです。
- 美しい溶接ビード:溶接後の見た目が美しく、内面の突起が少ないため流体の乱れを最小化できる
- 高い品質管理性:熱入力・溶接速度の精密な制御が可能
- スパッター(飛散物)なし:配管内面を汚染しない
- 薄肉管への対応:厚さ1mm以下の薄肉管にも対応可能
食品・医薬品・半導体プラントのステンレス配管ではTIG溶接が標準的に採用されています。
電流設定の基本

電流設定はステンレス管のTIG溶接において最も重要なパラメーターの一つです。
基本的な電流目安(直流・DC-EN)
ステンレス鋼管の場合の目安(管肉厚別):
- 肉厚 1.5mm:電流 40〜70A
- 肉厚 2.0mm:電流 60〜90A
- 肉厚 3.0mm:電流 80〜120A
- 肉厚 4.0mm:電流 100〜150A
- 肉厚 6.0mm:電流 140〜180A
電流が高すぎる場合の問題
- 溶け落ち・ピンホールの発生
- 熱影響部が広くなり、鋭敏化(炭化物析出)が起きやすくなる
- 溶接後の変形が大きくなる
電流が低すぎる場合の問題
- 溶込み不足・未融合
- アーク起動が安定しない
- タングステン電極の消耗
タングステン電極の選択と管理
ステンレス鋼管に適した電極
ステンレス鋼のTIG溶接(直流)には以下の電極が一般的に使用されます。
- トリア入りタングステン(2%ThO₂:WT20):最も一般的。アーク起動性・耐消耗性が良好
- ランタナ入りタングステン(2%La₂O₃:WL20):放射線問題のないトリア代替。性能は同等以上
- セリア入りタングステン(2%CeO₂:WC20):低電流域での性能が良い
電極径の選択
- 70A以下:1.6mm径
- 70〜150A:2.4mm径
- 150〜250A:3.2mm径
電極先端の形状管理
直流TIG溶接では電極先端を鋭角に研磨します(テーパー長さ:径の2〜3倍)。先端が丸くなったり欠けた場合は必ず再研磨してください。
トーチ角度と溶接操作
トーチ角度
- トーチ進行方向の傾き:溶接進行方向に対して75〜80°(前進法が基本)
- 横方向の傾き:管に対して垂直(90°)
溶加棒(フィラーメタル)の操作
溶加棒はトーチとほぼ対称の角度(前方から約15〜20°)から供給します。溶融プールに直接触れないように注意が必要です(タングステン汚染の原因となります)。
溶接速度
推奨溶接速度は肉厚・電流によって変わりますが、ステンレス配管では一般的に60〜150mm/minです。速すぎると溶込み不足、遅すぎると過熱・変形の原因になります。
裏ガス(バックシールド)管理
ステンレス配管のTIG溶接で最も重要な品質管理事項が「裏ガス」の管理です。
裏ガスが必要な理由
溶接時に管内側(裏面)をアルゴンガスで置換しないと、裏ビード(管内面)が大気中の酸素・窒素と反応して酸化(スケール)が発生します。この酸化層は耐食性を著しく低下させます。
裏ガスの設定方法
- 溶接前に管両端を溶接用水溶性テープ(または治具)で塞ぐ
- アルゴンガスを一方の端から供給し(流量:5〜15L/min)、もう一方から排出する
- 管内のアルゴン濃度が十分(O₂濃度 100ppm以下)になってから溶接を開始する
- 溶接中は裏ガスを継続して供給する
裏ガスの適切性確認
酸素濃度計で確認するのが最も確実な方法です。簡易的には溶接後の裏ビードの色で判断します(金色・薄黄色は適正、紫・青・黒は酸化過多)。
よくある欠陥と対策
ポロシティ(気孔)
- 原因:母材・溶加棒の汚染(油・水分)、シールドガス不足
- 対策:溶接前の清掃(アセトン等)、ガス流量の増加・ノズルの確認
アンダーカット(溝状の凹み)
- 原因:電流が高すぎる・溶接速度が速い・トーチ角度の不適
- 対策:電流を下げる、速度を遅くする、トーチ角度を修正する
クレーター割れ
- 原因:溶接終了時の急激な電流遮断
- 対策:溶接終了時にスロープダウン機能を使ってゆっくりと電流を下げる
裏ビードの酸化
- 原因:裏ガス不足・パージ不十分
- 対策:パージ時間を延長する、O₂濃度を確認してから溶接を開始する
森工業株式会社へのご相談
森工業株式会社はJIS Z 3821認定の溶接士が在籍し、ステンレス配管のTIG溶接施工に対応しています。食品プラント・医薬品施設・工業配管のステンレス配管工事はお気軽にご相談ください。溶接記録・品質管理書類の整備にも対応しています。
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