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アルミニウムTIG溶接の特徴
アルミニウム(Al)のTIG溶接は炭素鋼・ステンレスと異なる特性を持ちます。アルミの溶接が「難しい」と言われるのは、主に次の物理的特性によるものです。
- 酸化皮膜(Al₂O₃)の存在:アルミ表面には融点2,050℃の酸化皮膜があり、そのままでは溶接できない
- 熱伝導率が高い:鉄の約3倍の熱伝導率で熱が素早く逃げる
- 熱膨張率が大きい:溶接後に変形が起きやすい
- 融点が低い(660℃):溶接時に見た目では溶けかたが判断しにくい
交流(AC)TIG溶接が基本

アルミニウムのTIG溶接には「交流(AC)」電源を使うのが基本です。直流では酸化皮膜を除去できないためです。
交流TIG溶接でのクリーニング作用
交流では電流が半サイクルごとに正負を切り替えます。電極がプラス(EP)になる半サイクルでは、電子が被加工物から放出され、酸化皮膜のクリーニング(除去)が起こります。このクリーニング作用によって、アルミ表面の酸化皮膜を溶接と同時に除去できる仕組みです。
インバーター交流TIG溶接機の設定パラメーター
現在主流のインバーター交流TIG溶接機では、以下のパラメーターを細かく調整できます。
溶接電流(A)
アルミTIG溶接の電流目安(交流・シールドガス:アルゴン)は次のとおりです。
- 板厚 1.0mm:電流 40〜70A
- 板厚 1.5mm:電流 60〜90A
- 板厚 2.0mm:電流 80〜120A
- 板厚 3.0mm:電流 120〜160A
- 板厚 4.0mm:電流 160〜200A
- 板厚 6.0mm:電流 200〜260A
あくまで目安であり、実際には使用するガス・電極径・溶接速度・継手形状によって細かな調整が必要です。電極選定の考え方はアルミTIG溶接の電極径と電流値の選び方でも詳しく解説しています。
周波数(Hz)設定の影響
インバーター交流TIG溶接機では、交流の周波数を60〜200Hz程度の範囲で調整できます。
周波数が低い場合(60Hz)
- アーク幅が広くなり、溶融プールも広がる
- 溶込みが浅く、ビード幅は広くなる
- 肉盛りやビード幅を優先したい場合に適する
- 薄板では溶け落ちのリスクがある
周波数が高い場合(120〜200Hz)
- アーク幅が狭くなり、溶融プールが集中する
- 溶込みが深く、ビード幅は狭くなる
- 狭い開先や精密な溶接に適する
- 厚板や狭い箇所の溶接に有効
実践的な周波数設定の目安
- 薄板(2mm以下):60〜80Hz
- 中板(2〜4mm):80〜120Hz
- 厚板(4mm以上):120〜160Hz
バランス(クリーニング比)の設定
インバーター交流TIG溶接機では、EN(電極マイナス)とEP(電極プラス)の時間比、いわゆる「バランス」を調整できます。
EP比率を上げる(クリーニング増加)
- 酸化皮膜の除去力が高まる
- 電極への負担が増え、電極が球状になりやすい
- 母材への熱入力は相対的に減る
EN比率を上げる(溶込み増加)
- 溶込みが深くなる
- 電極の消耗が少なくなる
- クリーニング効果はやや弱まる
実用的なバランス設定
多くの場合、EP:EN = 30〜40%:70〜60%の範囲を使います(メーカーによってEP側・EN側どちらの割合で表示するかが異なるため、取扱説明書での確認が必要です)。アルミ表面の汚れが多い場合はEP比率を上げ、溶込みを重視する場合はEN比率を上げるのが基本の考え方です。
タングステン電極の選択(アルミ用)
アルミのAC溶接では、電極先端が球状に整形されます。これは異常ではなく正常な状態です。
推奨電極
- 純タングステン(WP):アルミAC溶接で伝統的に使われてきた選択。先端が滑らかな球状になりやすい
- ランタナ入りタングステン(WL20):先端整形が容易で安定したアークが得られる、現代の主流
- ジルコニア入りタングステン(WZ8):アルミAC溶接向けに設計された電極
電極径と電流の組み合わせ
- 1.6mm径:40〜100A
- 2.4mm径:80〜180A
- 3.2mm径:150〜270A
電極とタングステンの選定・研磨のコツはTIG溶接アルミ配管の実務ガイドも参考にしてください。
シールドガスの選択
アルゴン(Ar)
アルミTIG溶接における標準のシールドガスです。電離電圧が低く、アーク開始が容易です。
アルゴン+ヘリウム混合(Ar/He)
ヘリウムを20〜50%混合すると熱入力が増え、厚板アルミの溶込みを改善できます。ただしコストは高くなります。
ガス流量の目安
ノズル径によって異なりますが、一般的には10〜20L/minが適正範囲です。
森工業株式会社へのご相談
森工業株式会社では、アルミニウム・ステンレス・炭素鋼のTIG溶接施工に対応しています。配管・構造物・精密部品の溶接工事について、お気軽にご相談ください。溶接士の資格・実績については、お問い合わせ時にご確認いただけます。配管TIG溶接の基礎から知りたい方はTIG溶接 配管|仕組み・裏波・全姿勢施工と選ばれる理由もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. アルミのTIG溶接はなぜ交流(AC)が基本なのですか?
A. 直流では母材表面の酸化皮膜(Al₂O₃、融点2,050℃)を除去できないためです。交流では電極がプラス(EP)になる半サイクルで酸化皮膜のクリーニング(除去)が行われ、溶接と同時に皮膜を取り除けるため、アルミのTIG溶接では交流電源が基本となります。
Q. アルミTIG溶接の板厚別の適正電流の目安は?
A. 交流・アルゴンガスでの目安は、板厚1.0mmで40〜70A、1.5mmで60〜90A、2.0mmで80〜120A、3.0mmで120〜160A、4.0mmで160〜200A、6.0mmで200〜260Aです。あくまで目安であり、使用ガス・電極径・溶接速度・継手形状によって調整が必要です。
Q. 交流TIG溶接機の周波数(Hz)設定は溶接にどう影響しますか?
A. 周波数が低い(60Hz)とアーク幅が広がって溶融プールが広く溶込みが浅くなり、高い(120〜200Hz)とアーク幅が狭まって溶込みが深く精密な溶接に向きます。実践的な目安は、薄板(2mm以下)で60〜80Hz、中板(2〜4mm)で80〜120Hz、厚板(4mm以上)で120〜160Hzです。
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