
高層建築における給水設計の特殊性
一般的な戸建て住宅や低層建築と異なり、高層マンション・ビルの給水設計は多くの技術的課題を抱えています。最も大きな問題は「高さ」による水圧の問題です。水は1m上昇するごとに約0.01MPa(0.1kgf/cm²)の圧力損失が生じます。10階建て(約30m)では約0.3MPa、20階建て(約60m)では約0.6MPaもの圧力損失が発生します。
この圧力損失を補いながら、各フロアに安定した水圧・水量を供給するための設計が高層建築の給水設計の核心です。同時に、低層階では過大な水圧が発生しないよう減圧する設計も求められます。マンションの水圧問題は低層階と高層階で原因が異なるため、設計段階から両方を見据えた計画が欠かせません。
主要な給水方式と特徴

直結増圧給水方式
直結増圧給水方式は、水道本管から直接配管を引き込み、加圧ポンプで高層部まで水を送る方式です。現在、新築の中高層マンションでは最も主流となっています。直結増圧給水と受水槽給水の違いを踏まえて、建物の規模や用途に合った方式を選定することが重要です。
メリット
デメリット
設計のポイント
直結増圧方式では、増圧ポンプの選定が最も重要です。建物の最高高さ・最大同時使用量・配管摩擦損失を計算し、適切な揚程と流量を持つポンプを選定します。増圧ポンプ設置の際は機種選定だけでなく設置スペースや騒音対策も含めて検討する必要があり、停電時のバックアップとして無停電電源装置(UPS)や自家発電設備との組み合わせも合わせて検討します。
受水槽方式(高置水槽方式)
受水槽方式は、地下または地上に設けた受水槽に水道本管からの水を貯留し、ポンプで屋上の高置水槽(高架水槽)に送水した後、重力で各フロアに給水する方式です。
メリット
- 停電時でも高置水槽内の水を重力給水できる
- 断水時に受水槽内の水を一定時間使用できる
- ポンプ負荷が比較的安定
デメリット
なお、老朽化した受水槽方式から直結給水への切り替えを検討する建物も増えており、高架水槽の廃止と直結給水への切替は改修計画の選択肢の一つとして押さえておきたいポイントです。
ゾーン給水方式
超高層建築(30階以上など)では、建物を複数のゾーンに分割し、各ゾーンに個別の増圧ポンプや中継ポンプを設置する「ゾーン給水方式」が採用されます。
一般的には以下のようなゾーン分けが行われます:
- 低層ゾーン(1〜10階):直圧または減圧弁で調整
- 中層ゾーン(11〜20階):第1段階増圧
- 高層ゾーン(21階以上):第2段階増圧
各ゾーンで適正水圧(0.1〜0.3MPa程度)を確保することが、安定した給水の基本です。また、各ゾーンの配管を集約するパイプスペース(PS)の寸法設計も、将来のメンテナンス性を左右する重要な要素です。
高層建築の配管材料選定
主要な配管材料の特徴
高層建築の給水配管では、建物用途・フロア・水質に応じて適切な材料を選定します。
ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)
耐腐食性・衛生性が高く、近年の高層マンション・病院・ホテルで広く採用されています。長寿命で赤水の心配が少ない反面、イニシャルコストは高めです。
硬質塩化ビニル管(HIVP)
軽量・耐腐食性・低コストが特徴の樹脂管です。一般給水管として広く使われますが、高温に弱いため給湯配管には不向きです。
架橋ポリエチレン管(PEX)・ポリブデン管(PB)
柔軟性があり施工性が良いため、戸内の分岐配管によく使われます。連続使用温度の上限があるため、高温蒸気には使用できません。
亜鉛メッキ鋼管(白管)
かつては標準的な給水管でしたが、現在は新規の給水配管への使用は推奨されていません。既存建物では腐食・赤水の問題が発生していることが多く、更新時にはステンレスや塩ビへの切り替えを検討します。
配管の防震・防振対策
高層建築では地震時の配管破損リスクを最小化するため、耐震配管の設計が必要です。
- 可とう管継手(フレキシブルジョイント)の設置
- 配管サポートの適切な設置間隔
- エキスパンションループ・オフセットによる熱膨張吸収
- 耐震アンカーによる固定
水圧管理と減圧弁の設置
高層建築の大きな課題の一つが低層階の過大水圧です。水道の適正水圧は0.1〜0.3MPaとされており、これを超えると蛇口・シャワーヘッドから「水が飛び散る」「水音がうるさい」といった不快感が生じるほか、水道器具の寿命を縮める原因にもなります。
減圧弁の設置基準
一般的に、給水圧が0.3MPaを超えるフロアには減圧弁の設置が必要です。高層建築では建物全体の減圧制御を行うほか、各フロアや各戸の入り口部分にも減圧弁を設けることがあります。
| フロア | 水圧の傾向 | 対応 |
|---|---|---|
| 低層(1〜3階) | 過大(0.4MPa以上も) | 減圧弁で0.3MPa以下に調整 |
| 中層(4〜10階) | 適正水圧帯 | 通常不要 |
| 高層(11階以上) | 不足しがち | 増圧ポンプで補う |
維持管理と改修計画の考え方
高層建築の給水設備は長期使用を前提とした設計ですが、定期的なメンテナンスと適切なタイミングでの更新が不可欠です。
定期点検の内容
- 増圧ポンプ・制御盤の点検(年1〜2回)
- 受水槽・高置水槽の清掃・水質検査(年1回以上・法定義務)
- 配管の肉厚測定・腐食チェック(5〜10年ごと)
- 減圧弁・逆流防止弁の動作確認
設備更新の目安年数
| 設備 | 目安年数 |
|---|---|
| 増圧ポンプ本体 | 15〜20年 |
| 制御盤・センサー | 10〜15年 |
| 配管(ステンレス) | 30〜50年 |
| 配管(塩ビ・樹脂) | 20〜30年 |
| 減圧弁 | 10〜15年 |
増圧ポンプや受水槽・加圧ポンプの点検と交換時期を長期修繕計画に組み込んでおくことで、突発的な故障による断水リスクを大きく減らせます。
森工業の高層建築・大規模施設への対応
森工業株式会社は、オフィスビル・商業施設・工場など大規模建築の給排水設備工事に豊富な実績を持ちます。給水設計の段階からご相談いただけるほか、既存の高層建築の配管更新・増圧ポンプ交換・受水槽廃止(直結切替)工事にも対応しています。
「施設の給水設備は今のまま大丈夫か」「水圧が不均一で困っている」といった事業者様のお悩みにも、現地調査の上で最適な改善策をご提案します。宮城県内全域対応ですので、お気軽にご連絡ください。
この記事をシェア