
開業前の給排水工事が店舗の命運を左右する
店舗開業において、内装デザインや設備機器の選定に注力するオーナーは多いですが、給排水工事の計画を後回しにして開業直前にトラブルが発覚するケースは少なくありません。特に飲食店では、給排水の容量不足・グリストラップ未設置・排水勾配の不適切が原因で保健所の営業許可が下りないという深刻な問題が起きています。
給排水工事は建物の躯体や床下に手を入れる基幹工事であり、内装工事の後から変更しようとすると費用が倍以上になることもあります。開業スケジュールが確定したら、内装工事の着工前に給排水の設計・施工計画を確定させることが鉄則です。
物件選びの段階から既存の給排水設備の状態と増設余地を確認しておくことが、開業後のトラブルを防ぐ最善策です。テナント物件の内覧時には必ず排水ルートと給水管径を確認し、業種の要件を満たせるかを専門業者と一緒にチェックすることをおすすめします。
業種別の給排水要件早見表
業種によって給排水設備に求められる仕様は大きく異なります。
飲食店の給排水工事:グリストラップの設置基準
飲食店で最も重要な排水設備がグリストラップ(油脂分離阻集器)です。厨房から排出される排水には大量の油脂・残菜が含まれており、これをそのまま排水管に流すと詰まりや悪臭の原因となるだけでなく、公共下水道への油脂流出は下水道法違反となります。
グリストラップの選定基準
グリストラップの容量は、厨房の広さ・1日あたりの最大使用者数・業態によって決まります。容量が不足していると清掃頻度が増加し、管理コストが膨らみます。
- 小規模(客席20席以下):25L〜50L容量
- 中規模(客席21〜50席):50L〜100L容量
- 大規模(客席51席以上):100L以上または複数台設置
設置場所は厨房内のシンク・調理台の排水が集まる位置が基本ですが、スペースの関係で床下埋設型にするケースも多くあります。清掃のしやすさを考慮した位置取りが重要で、点検蓋の上に物を置けない設計にする必要があります。
清掃・維持管理の義務
グリストラップの清掃は飲食店の衛生管理として義務付けられており、一般的に週1〜2回のバスケット清掃と月1〜2回の本体清掃が必要です。清掃を怠ると油脂が固化して詰まりを起こし、厨房が使えなくなるという最悪の事態を招きます。
排水勾配と配管サイズの基本
排水管の設計で特に注意が必要なのが排水勾配です。排水管は重力によって汚水を流すため、適切な勾配がなければ流れが滞り、詰まりや逆流が発生します。
適切な排水勾配の目安
| 管径 | 推奨勾配 |
|---|---|
| 50mm(洗面台・浴室) | 1/50(約2%) |
| 75mm(トイレ・小便器) | 1/100(約1%) |
| 100mm(厨房・大便器) | 1/100(約1%) |
| 150mm以上(屋外排水) | 1/200(約0.5%) |
テナント物件では既存のスラブ(床板)に排水管を通す穴の位置が限られており、希望する厨房レイアウトに排水が対応できないケースがあります。物件内覧の段階で排水ルートと床スラブの厚みを確認し、必要な勾配が確保できるかを専門業者と一緒に確認することを強くおすすめします。
保健所検査をクリアするための事前準備
飲食店の営業許可申請にあたって保健所は給排水設備の状態を確認します。以下の項目を事前に整備してください。
保健所が確認する主なポイント
- 給水設備:水道直結または適切な貯水槽設備、給水栓の数と配置
- 洗浄設備:手洗い専用の洗面台(調理・洗い場兼用は不可)、温水供給
- グリストラップ:設置の有無・容量の適正・維持管理の計画
- 排水設備:排水口の防虫・防臭措置、清掃のしやすさ
- 給湯設備:食器の洗浄・消毒に必要な温度の温湯・熱湯が供給できるか(必要な温度は所管の保健所基準でご確認ください)
保健所への事前相談(予備検査)を開業1〜2ヶ月前に行うことで、本検査での指摘事項を最小化できます。給排水工事の完了後に検査を受けるスケジュールを逆算して、工事着工のタイミングを設定してください。
美容室・理容室の給排水工事ポイント
美容室はシャンプー台の数に応じた給湯量と排水容量の確保が核心です。
シャンプー台1台あたりの目安
- 給湯量:15〜20L/分(必要な給湯器の号数は使用温度と水温で変わるため、設備業者にご確認ください)
- 排水量:同上(急勾配排水推奨)
- 給水管径:13mm(1台)〜20mm(3台以上)
複数のシャンプー台を同時使用したときに湯温が下がらない給湯器の選定と配管サイズの確保が重要です。後付けでシャンプー台を増設する場合は、既存の給水管径が対応可能かを必ず確認してください。
また、カラー剤・パーマ液を含む廃液は排水処理に一定の注意が必要です。希釈して流すことを前提とした排水計画を立て、排水口のヘアキャッチャーを適切に設置・清掃することで排水管詰まりを防ぎます。
看板設置と外壁配管の干渉確認
店舗の外観を彩る看板の設置工事は、外壁を貫通するアンカーや配線ルートが既存の外壁配管と干渉することがあります。看板業者と開業前に情報共有し、給水管・ガス管・電気配管の位置を明示した施工図面を渡しておくことで、穿孔時の誤切断事故を防ぐことができます。
特にビルの外壁に埋設・露出している配管は、竣工図面に記載されていない位置に実際は配管されているケースもあります。看板の設置前に専門業者による配管探知を行うことを強くおすすめします。
2026年の開業トレンドと給排水工事の注意点
2026年現在、仙台市内では飲食店・美容室の新規開業が依然として多く、物件取得から開業までのスピードが求められるケースが増えています。一方で、施工業者の繁忙期には工事の手配に時間がかかるケースもあり、余裕を持った工程計画がこれまで以上に重要です。
また、省エネ・節水に対応した給排水設備への需要も高まっており、開業時から節水型機器・ガス節約型給湯器を導入することで長期的なランニングコストを抑える事例も増えています。
工事発注前に確認すべき5つのポイント
店舗開業に向けて給排水工事を発注する際、業者選びと発注内容の確認で押さえるべきポイントをまとめます。
- 見積もりは複数社から取得する:給排水工事は業者によって見積もり金額に大きな差があります。最低3社から相見積もりを取り、内訳の根拠を確認してください。
- 施工後の図面作成を契約に含める:工事完了後に配管の位置・サイズ・材質が記載された施工図面を受け取ることを明記してください。将来の改修・修繕時に必ず役立ちます。
- 保証期間と対応範囲を確認する:施工後の水漏れ・不具合についての保証期間(最低1〜2年)と、緊急時の連絡体制を事前に確認してください。
- 着工前に保健所・ビルオーナーへの確認手続きを済ませる:テナント物件では大規模な給排水工事にビルオーナーの承諾が必要な場合があります。また、保健所の事前相談での指摘事項も工事計画に反映させてください。
- 工期と開業スケジュールの余裕を持たせる:給排水工事は床下・壁内工事が伴うため、想定外の問題が発覚して工期が延びることがあります。開業日から逆算して1〜2週間の余裕を持った工事期間を設定してください。
まとめ
店舗開業時の給排水工事は、業種・物件・保健所要件によって求められる仕様が大きく異なります。「とりあえず内装業者に任せておけばいい」という認識は危険で、専門の給排水工事業者が早期から計画に加わることが成功の鍵です。
森工業では飲食店・美容室・医院など多様な業種の店舗開業工事の実績があります。開業前の現地調査から保健所対応、グリストラップ設置・配管工事まで一貫してサポートいたします。物件を決める前の段階からご相談いただくことで、最適な給排水計画をご提案できます。
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