
データセンターの冷却設備はなぜ重要か
データセンター(DC)に設置されるサーバーやネットワーク機器は大量の電力を消費し、その大部分が熱として放出されます。この熱を適切に除去しなければ機器の過熱→誤動作→データ損失というリスクが生じるため、データセンターの冷却設備は「電源供給」と並ぶ最重要インフラとして位置づけられています。
冷却方式にはさまざまな種類がありますが、大規模データセンターで広く採用されているのが「水冷方式」です。水は空気に比べて比熱(熱を蓄える能力)が約3,300倍高く、大量の熱を効率よく運搬できるため、高密度実装が進む現代のサーバー室に適した方式です。
水冷システムの主要構成要素は「冷却塔(クーリングタワー)」「チラー(冷凍機)」「空調機器(CRAC/CRAH)」「ポンプ」で、これらを結ぶ冷却水配管がシステム全体の基盤となります。
冷却水配管の系統と構成

データセンターの冷却水系統は大きく「1次側(冷却塔〜チラー)」と「2次側(チラー〜空調機器)」に分かれます。
1次側冷却水系統(コンデンサー側) チラーで高温になった冷媒の熱を外気に放出する側の水回路です。冷却塔との間で温水・冷水を循環させます。水温は一般に冷却塔出口で25〜32℃、チラー入口で30〜37℃程度になります。屋外露出部分の配管には凍結防止と保温処理が必要です。
2次側冷却水系統(エバポレーター側) チラーで冷やされた冷水を空調機器に供給し、サーバー室の熱を回収して戻す側の水回路です。水温は一般に供給側で7〜14℃、戻り側で12〜18℃程度になります。配管表面が外気温より低い場合は結露が発生するため、全区間に適切な断熱材を施工する必要があります。
Nプラス1(N+1)構成 データセンターは24時間365日の高可用性が求められるため、冷却水系統も通常「N+1冗長構成」が採用されます。配管に計画的なバルブ配置とバイパスラインを設けることで、一部系統のメンテナンス中も他系統で冷却を継続できる設計が標準となっています。
配管材料と施工上の注意点
データセンターの冷却水配管には、長期信頼性と水質適合性の観点から適切な材料を選定することが重要です。
配管材料の選定 一般的に使用される配管材料は、スチール配管(SGP・STPG)またはステンレス配管(SUS304/SUS316)です。スチール配管は経済性に優れますが内面の腐食に注意が必要で、薬品による水質管理(防食剤添加)が欠かせません。ステンレス配管は耐食性に優れますが初期コストが高いため、腐食リスクの高い系統や重要箇所に選択的に採用されることが多いです。
小口径(50A以下)ではシール材による水漏れリスクを減らすため、管端加工精度が高いプレス式継手やフランジ接続が好まれます。
溶接施工の品質管理 大口径冷却水配管の接続にはTIG溶接が多く採用され、裏波溶接による漏れのない接合が求められます。溶接部は外観検査に加え、水圧試験(最高使用圧力の1.5倍以上で保持)によって漏れがないことを確認します。
支持架台・防振対策 循環ポンプや配管の振動が建物構造体を通じてサーバー室に伝わると、精密機器に悪影響を与えることがあります。配管の支持架台には防振材(防振ゴム・バネ式アイソレーター)を介設し、振動伝達を低減する施工が必要です。
水質管理と腐食・スケール対策
冷却水はポンプ・熱交換器・チラーチューブなどの精密部品に直接触れるため、水質管理が設備寿命に直結します。
腐食と水垢の問題 冷却塔の開放系では外気にさらされながら循環するため、水中の不純物が濃縮されやすい特性があります。カルシウムやマグネシウムが析出すると熱交換器チューブ内に「スケール」が堆積し、熱交換効率が著しく低下します。一方、pHが低い(酸性)状態では配管・機器の腐食が加速します。
水処理プログラムの実施 冷却水の水質を適切な範囲に保つため、専門の水処理業者による定期的な薬品注入(防食剤・スケール防止剤・殺菌剤)と水質検査が必要です。データセンターでは水処理業者と配管工事業者が連携して設備の健全性を維持する体制が求められます。
フラッシング(初期洗浄)の重要性 配管新設・更新後には必ずフラッシング(管内洗浄)を実施します。溶接スパッタや錆・切粉などの異物が残留したまま運転を開始すると、ポンプのインペラーや機器の細部を損傷させることがあります。
定期点検と更新サイクル
データセンターの冷却水設備は、計画停止を最小化した「ライブメンテナンス」が求められる点で他の施設とは異なります。
定期点検の内容 冷却水配管の定期点検では、目視による腐食・変色・漏水の確認、水圧試験(系統隔離しての圧力保持確認)、バルブ・フランジ部のパッキン状態確認などを実施します。管内カメラによる内部確認も有効です。
更新のタイミング スチール配管の実用寿命は使用環境・水質管理状態によって異なりますが、一般的に15〜25年程度です。水処理を適切に行えばより長持ちしますが、老朽化の兆候(腐食穿孔・フランジ部の漏れ頻発)が見られた場合は早期に更新計画を立てることが重要です。
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